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戦国異伝

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第二百十八話 太宰府入りその八

「しかしじゃ」
「はい、我等ならば」
「間に合う、速きこと風の如しじゃ」
 信玄は風林火山の旗の言葉も出した、見れば旗本達の中にはその風林火山の旗を立てている者もいる。
「それでじゃ」
「わたくしもです」
 謙信もここで言う。
「毘沙門天はです」
「戦の場に向かう時はじゃな」
「風となります」
「ははは、二つの風じゃな」
「今の我等は」
「ではな」
「風となり岩屋城に参りましょう」
 こう言って馬を飛ばす、そしてすぐにだった。
 それぞれの軍勢と合流した、ここで二人はまた言った。
「このまま進むぞ」
「足は緩めません」
「岩屋城に向かいそうしじゃ」
「高橋殿達をお救いするのです」
「遅れてはならぬ」
「遅れた者は置いていきます」
 このことも告げてだった、二人はそれぞれの軍勢を進ませた。そして彼等の兵達もその言葉に応えてだった。
 恐ろしいまでの速さで進んだ、その速さはまさに風であった。織田家の先陣は一直線に岩屋城に進んでいた。
 その頃岩屋城は落城の危機にあった、城は島津の大軍は十重二十重に囲んでいた。 
 城の兵達も後詰も勇敢に戦う、だがだった。 
 後詰を率いる輿に乗った老将、立花道雪は采配を手にして周りの兵達その輿を担ぐ者達に苦々しい顔で言った。
「明日、いや今日にもな」
「はい、岩屋城は」
「このままでは」
 旗本達が苦い顔で答えた。
「陥ちます」
「そうなります」
「そして城の者達は」
「皆」
「千寿のことじゃ」
 立花は高橋紹運のことにも言及した。
「降る筈がない」
「島津方は今も降る様に言っていますが」
「それでもです」
「千寿殿は降られませぬ」
「本丸だけになっても戦っておられます」
「だからですな」
「最後は討ち死にか腹を切るわ」
 高橋はだ、そうするというのだ。
「間違いなくな」
「ですな、その今日か明日にでも」
「既に城の兵達は僅かです」
「僅かしか生きておりませぬ」
「その殆どが討ち死にか戦えなくなり腹を切っています」
「だからですな」
「そうじゃ、さすれbば後詰として戦っている我等もじゃ」
 岩屋城を助けて戦っている彼等もというのだ。
「退くしかないわ」
「無念ですが」
「そうなれば、ですな」
「退くしかありませぬな」
「このまま」
「そうじゃ、しかしそれまではな」
 岩屋城が陥ちるその時まではというのだ。
「千寿達を助けて戦うぞ、よいな」
「わかっております、では」
「最後まで戦いましょう」
「何とか」
「そうしましょう」
「そうじゃな、織田家が兵を出しておるが」
 このことは立花の耳にも入っている、だがそれでもだ。 
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