ドリトル先生と森の狼達
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第五幕その九
「本当にね」
「そうなんだね。あとこの近くにも山犬君達がいるね」
「ああ、この辺りの山犬さん達はあそこまで素早しっこくないよ」
奥の方のその山犬達よりもというのです。
「何か体格も違うね」
「そうなんだね」
「まあ山犬さん達に会いたいのならすぐそこだよ」
そこに彼等の縄張りがあるというのです。
「僕はそこに入るつもりはないからじゃあね」
「これでだね」
「うん、またね」
こうしてでした、穴熊君は先生達とお別れしてでした。
自分の巣の方に帰っていきました、そして先生はその山犬の縄張りに入りました。するとすぐに、でした。
その山犬君達が出てきました、全部で十匹程いて中には子犬もいます。
その山犬君の中からです、黒い山犬が出て来て先生に犬の言葉で尋ねてきました。
「ドリトル先生だね」
「うん、そうだよ」
「わしはこの群れの長老じゃよ」
「僕のことは聞いているんだね」
「もうね、それでわし等に聞きたいことは」
「森の他の生きものの皆と一緒だよ」
その生活のことです。
「どうかな」
「見ての通りだよ、皆食べるものには困らずにね」
「暮らしているんだね」
「この辺りは村の人も旅人も滅多に来ないしね」
「僕達みたいなのは珍しいだね」
「調査で入る人はいるけれどね。あと木樵さんがね」
こうした人がというのです。
「たまに来るね」
「それ位だね、山に住んでいる人は」
「わし等は見ないな」
山犬の長老さんは首を傾げさせて答えました。
「そうした人は」
「そうなんだね」
「先生は山窩の人達のことを言ってるんだね」
「山窩の人を知っているね」
「聞いたことはあるよ、ただね」
「この辺りにはおられないんだね」
「見ないね」
これが長老さんのお返事でした。
「ここには」
「そうなんだね」
「うん、まあわし等はってことで」
「まだわからないね」
「ここは鬱蒼としていて色々な生きものもいるからね」
「だからだね」
「わし等の縄張りの外はわからないよ」
山犬の長老さんもというのです。
「それはね」
「そうなんだね」
「わし等のことはもう言ったがね」
「困っていることはないね」
「特にね、いい場所だよ」
長老さんも落ち着いた感じで答えます、満足がそこに出ています。
「夏も冬も過ごしやすいしね」
「君達にとってはそうだね」
「そうだよ、凄くね」
山犬さん達にとってはというのです。
「いい感じだよ」
「それは何より。それとね」
「それと?」
「奥の方に何か変わった君達のお仲間がいるらしいけれど」
「聞いてるよ、その連中の糞はね」
「うんこは?」
「それがどうもね」
首を傾げさせつつです、長老さんが先生にお話することはといいますと。
「毛が混じってるらしいんだよ」
「えっ、それは」
そのお話を聞いてでした、先生は。
驚いたお顔になってです、長老さんに問い返しました。
「本当のことかな」
「そう聞いてるよ」
「それはちょっとないね」
「ないっていうと」
「うん、毛が混じっているうんこは」
それはといいますと。
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