リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~
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Another15 自分らしく
前書き
大輔がタケルにお説教
始まりの町に選ばれし子供達が全員が集まり、エレキモンの家で始まりの町での出来事を聞いた。
光に飲まれてからの記憶はぼんやりとしているものの、エンジェモンの時の記憶は殆ど感覚的に覚えており、ぼろぼろの身でありながらタケルにだっこされつつ、その報を聞いて涙した。
自分の仕出かしたことにすっかり恐怖を抱き、オレンジの耳で身体を覆い縮こまって小さく泣いているパートナーの声をタケルは聞いていた。
大輔「デビモンはムゲンマウンテンで待つって言っていた。」
アインス「恐らく奴は私達との決着をつけるつもりなのだろう。」
大輔「パタモンの怪我が治り次第ムゲンマウンテンに向かう」
タケルは大輔の表情を少し窺った後、口を開いた。
タケル「ごめん…」
大輔「は?」
タケルの謝罪に大輔は目を見開くが、次の瞬間大きく溜め息を吐いた。
大輔「お前って奴は…たくっ…」
呆れ果てたように呟く大輔にタケルは更に俯いた。
これならまだ向こうの陰湿なタケルの方がマシだったかもしれない。
少なくても向こうは負とはいえ感情をぶつけてきたから。
大輔「お前さ、俺だからまだいいけど、人によっちゃあかなり苛つくぜ、それ」
タケル「え?」
大輔「お前さ、人の顔色窺ってばかりじゃん。」
深い溜め息を吐きながら言う大輔にタケルは何故か父親の姿が重なった。
大輔「他人ってのはな、自分が思っているよりも遥かによく見ている。例えば、こいつは本当に楽しそうとか、こいつは俺のこと嫌いだなとか。そして、ああ、こいつは俺を信じてくれるんだなとか、自分らしく接してくれているんだなって事も伝わるんだぜ。だからな、タケル。馴れ馴れしすぎるのも考えもんだけど人の顔色を窺ったりばっかなのも良くない。喧嘩とかが起きてもいいから真っ直ぐに自分らしく、言いたいことを言って生きた方がもっと人生楽しく送れると俺は思う」
タケル「でも、僕…喧嘩や戦うのは嫌だ。子供の喧嘩はすぐ仲直り出来るけど」
ヤマト「タケル…」
泣きながら言うタケルにヤマトは両親の離婚を思い出したのか、悲しげだ。
大輔「うん、お前の気持ちは分かるよ。けどなタケル。人やデジモンが間違い無しに他人と触れ合えるって本気で思っているのか?」
タケル「え?」
大輔「実際お前とパタモンは間違えた。お前はパタモンの気持ちに気付かないでパタモンを傷つけて、パタモンはタケルの気持ちを結果的に無視することになって傷つけちまった…」
それを言われたタケルとパタモンは悲しそうに俯いた。
大輔「…でもな、俺は少し良かったと思う。あのままじゃあいずれ取り返しのつかないことになっていただろうからな…。喧嘩したり、間違えたり、傷付けたっていいじゃないか。後でごめんって謝って、場合によっちゃあ相手に罵られたり、殴られても仲直り出来ればさ。俺達人間も、ブイモン達デジモンもそうやって、より人間は人間らしく、デジモンはデジモンらしく変わったりして成長するんじゃねえかな?」
タケル「成長…」
パタモン[変わる…]
タケルとパタモンの目に光が宿り始めた。
大輔「どんなに間違えても生きてさえいれば、いつかまたやり直せるはずだ。生きている限り、お終いなんてねえんだよ。その間違いの経験を生かして、もう二度と同じ失敗を繰り返さないようにすることだって出来る]
タケル「………」
やり直せるだろうか。
また最初からなんて事は不可能だけど、その代わりに失敗を糧にして、今よりもっともっと成長出来るかもしれない。
アインス「それとな、高石。お前はエンジェモンから問われた時、答えられなかったようだがな、天使も最初は勉強しなければならない。」
タケル「え?」
アインス「ああ。初めてのことを、誰からの説明も助けも受けずに、成功させることなんて出来ないだろう?天使も同じだ。失敗を繰り返しながら、その失敗を糧として、一人前に成長していく。例えるなら今のエンジェモンは学校に入学したての小学1年生…もしくは0歳児のようなものか、高石、パタモン。責任重大だぞお前達はエンジェモンより先に生まれた者として、人生の先輩として色々教えてやらなければな」
タケル「先輩?僕達が?」
アインス「そうだ。お前達は先輩として、エンジェモンに沢山教えてやるんだ。何をすればいいのか、何が悪いことなのか良いことなのか…」
大輔「パタモンの怪我が治り次第、ムゲンマウンテンに向かう。今のパタモンは進化するのにレベルが足りていない。だから…」
タケル「え?わ!!?」
ポーンと投げ渡されたの、黄色い球体である。
パタモン[なあに?これ?]
黄色い球体をツンツンとつつくパタモンにブイモンは説明してやる。
ブイモン[こいつはデジメンタルって言ってな。それを使えばパタモンが進化出来るんだよ。簡単に]
光子郎「こんな球体で?」
ロップモン[実際、私は普通の進化出来ないし、ブイモンは普通の進化出来るけどアーマー進化の方が負担少なくて済むし]
タケル「本当に…進化出来るの?」
大輔「デジメンタルアップって言えばな。後はお前次第だ」
アインス「戦う勇気はあるか?どのような苦境にも屈せず戦い続ける勇気があるか?」
屈んで目線を合わせるアインスにタケルは少し迷いながら頷いた。
タケルに目に僅かだけ勇気が宿っていたのを見たアインスはこれなら大丈夫だろうと笑みを浮かべた。
レオモンやエレキモンの話ではパタモンの怪我は酷くないようなので1日で全快するはずだと言っていた。
デビモンとの決戦は明日だ。
おまけ
というわけで、選ばれし子供達はエレキモンの家で一泊することになったのだが。
大輔「久々の布団だな~」
男女別々に分かれて寝ている大輔達だったが、太一がニヤリと笑った。
太一「そうだよな~、男だけっていうのも久しぶりだしよ」
その笑みと発言にヤマトは何故か悪寒を覚えた。
太一「よし、お互い今夜は腹割って話そうぜ。なあ、大輔。お前アインスとどういう関係なんだ?」
大輔「え?」
ヤマト「ば、馬鹿野郎!!」
丈「え?な、何の話だい?」
光子郎「太一さん…」
タケル「???」
太一の問いに大輔は目を見開き、ヤマトは赤面、丈は話を飲み込めておらず、光子郎は呆れ顔、タケルは疑問符を浮かべている。
大輔は腕を組んでうーんと唸った。
何と言えばいいのだろうか?
夫婦?
恋人?
パートナー?
大輔は少し悩んだ後。
大輔「うーん、今は幼なじみってことにしてくれませんか?」
太一「つまんねえ回答だな、おい。じゃあヤマト、何かねえか?」
ヤマト「何で俺に振るんだよ!!?」
太一「だってこん中で一番女の子に人気あるじゃんか」
光子郎「確かに興味ありますね」
知識の鬼が興味を示した。
タケル「あ、僕知ってるよ。お兄ちゃん大きくなったらママと結婚…」
ヤマト「わああああ!!タケル黙れっ!!!!」
大輔「黙れってあんた…」
自分の恥ずかしい過去をよりにもよって弟によって暴露されそうになったヤマトは声を張り上げるが、太一達はニヤリと笑った。
太一「そうかそうか。ヤマト君はお母さんが好みのタイプだったのか~」
丈「いいこと聞いたね☆」
日頃6年生であるにもかかわらず、5年生のヤマトに呼び捨てにされている恨みからか、眼鏡をキュピーンと光らせながら言う丈。
その後寝静まるまでヤマトは太一達に弄られたという。
そして女子組。
ミミ「アインスさん!!」
アインス「な、何だ太刀川?」
ミミの凄まじい気迫にアインスは思わず圧倒されてしまう。
ミミ「アインスさんと大輔君はどういう関係なんですか?」
空「ミミちゃん…」
アインス「関係…か?」
呆れたような表情の空にアインスは少し考える。
夫婦。
恋人。
パートナー。
アインス「ふーむ、今は幼なじみで勘弁してもらえないだろうか?」
ミミ「え~?」
期待していた答えではなかったためにミミは不満顔。
こちらはあっさりと終わってしまった。
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