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詩集「棘」

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静謐なる夏



棚引いてゆく雲は
寄り添うものもなく
地に影を落としては
ただ…風に漂う

幽かな蝋燭の灯り
掲げ心の水底を照らせば
涙を流す君への想いが
会いたいと…呟いた…

愚かなる剥き出しの想い
心の裂け目から滴って…

静謐なる夏 消えし陰
零れた涙は砕け散る
張りつけた笑顔の下は
諦め切れない想いに疼き…


夕影に歪む時刻(トキ)
魔が差すような朱(アカ)
君の全てを奪い
どこかへと隠したい…

緩やかに消えゆく光
訪れし闇に想影だけが舞う
忘却より浮かび上がりしモノ
会いたいかと…囁いた…

泥沼の君への気持ち
アイデンティティーへ牙を剥く

静謐なる夏 籠の中
羽撃けぬ想い 泣き止まぬ
愛しさだけが貫きし
心はいつしか瘡に包まれ…

静謐なる夏 癒えぬ傷
残しり痕跡 抱きゆく
君の幻影追いかける
この淋しい日々 紡ぐようにして…



 
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