| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~

作者:setuna
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

Another11 デビモン

 
前書き
デビモンとの邂逅。 

 
調子に乗ったパタモンに程よく制裁を下し、子供達は休める場所を探して歩いていたのだが。

丈「あっ、あれ!!」

森の中にある古い洋館、それを見つけたのは丈だった。

丈「普通の建物だ。みんな、今夜はここで休もうよ!!」

あからさまに怪しいと思っていても、この疲労には勝てそうにない。

アインス「大輔、これが例の…?」

大輔「ああ、あまり気を抜くな?いつどこで襲ってくるか分からないからな」

アインス「承知した…」

警戒を怠らないようにする大輔とアインス。

































タケル「わぁ、綺麗な絵!!」

タケルが、壁の突き当たりに飾ってある絵画に駆け寄る。
それは純白の羽根を持つ天使の絵。

丈「こんな綺麗な天使の絵が飾ってあるところに悪いデジモンがいる訳ないよ」

空「……まぁ、今更野宿ってのもね」

ヤマト「仕方ないか」

そうしてみんなはぞろぞろと洋館に入っていった。
そんな中パタモンは、天使の絵に深く惹きつけられていた。
何故かは分からないけれど、目を離せない。

ブイモン[………]

恐らくパタモンが自分の進化先を無意識に感じ取っているのか、それとも宿敵の気配を無意識に感じていたのか…これは多分自分には分からないだろうしパタモンにも分からないだろう。
ブイモンも大輔とアインスの後を追う。



































大輔達は現在食事を摂っていた。
厳密には食事ではない。
どちらかというと食べることの真似事みたいなものだ。
これが幻であることをみんなは知らない。
だからいくら食べてもエネルギーには変換されないのである。
しかし味は感じるために味を楽しむ物と考えれば抵抗も感じない。
それにしても…。

アインス「昨日は外にないはずの冷蔵庫から卵を取ることをあれだけ嫌がっていたというのに、今日は何故か率先してテーブルに並べられた豪華なご馳走を食べているな、城戸は」

大輔「んー?吹っ切れたんじゃねえの?」

どうでもよさそうに料理を口に運ぶ大輔。
隣のブイモンは滅茶苦茶不機嫌である。
何故なら味はしても腹は膨れないから。

ロップモン[抑えて抑えて…]

その怒りはデビモンにぶつけて欲しいと切に願う。

アインス「私達は疲れたから先に寝室に向かう」

ミミ「え~?お風呂入らないの?」

アインス「明日の朝に入るよ」

大輔「俺も疲れたからもう寝る。お休み」

空「そう?お休み大輔君、アインスさん」

流石に裸になる勇気はないために寝室に避難する大輔とアインス達であった。






























アインス「すまない大輔。」

大輔「あーうん。お前の気持ちは分かるから気にすんな」

流石に事情を知っている身からしたら裸になるのにはとてつもなく恥ずかしい。
出来れば太一達にも伝えてやりたいが、言ったところで信じては貰えないだろう。
ならば仕方ない、犠牲になってもらおう。
ブイモンに乾パンを渡して食べさせる。

ブイモン[これじゃあ足りねえよ~]

大輔「あのなあ、非常食だって多くないんだぞ?我慢しろ」

ブイモン[はいはい。お休み]

乾パンを平らげたブイモンはごろりと寝そべった。

大輔「それじゃあ」

アインス「一緒に寝よう」

大輔「え?」

ギュウッと大輔を抱き締めながらベッドに横になるアインス。

大輔「アインス…何も抱き締めなくても…」

アインス「だって…今まで2人っきりなんて滅多になかったし…そろそろ大輔不足が深刻なんだ」

大輔「いや、訳分かんねえよ!!ちょ、止め…うわあああああああああああ!!!!?」

しばらくして太一達が戻ってきた時、疲労困憊状態の大輔とお肌艶々状態のアインスがいたという。



































デビモン[やはり子供だな…他愛もない]

広間に低く低く、静かに染みていく声。
あの天使の絵を裂いてデビモンがその姿を見せた。
その両隣には、レオモンとオーガモン。
そう、これは罠だったのだ。

デビモン[さぁ、やれ。今なら仕留められる]

オーガモン[一思いに叩き潰してくれるぜ]

レオモン[子供達…倒す]

レオモンとオーガモンが寝室に向かう。































レオモンとオーガモンが寝室に近付いた瞬間。

ライドラモン[ブルーサンダー!!!!]

オーガモン[うおわああああ!!!!?]

レオモン[ぐおおおお!!!!?]

完全に不意を突かれたオーガモンとレオモンは壁に叩きつけられた。

太一「な、何だ!!?」

アグモンがトイレに行きたいと言われ、起きたのだが同時に起きていた大輔とアインスに止められ、少し時間を置いた後、大輔がブイモンをライドラモンにアーマー進化させ、扉に雷撃を放ち、今に至る。

大輔「まさかここまでアッサリ引っかかってくれるとは思わなかったぜ…殺気が丸分かりなんだよ」

デビモン[大人しく眠っていればいいものを…]

アインス「デビモン…」

次に現れたのは、デビモンだった。

デビモン[夢はもう失われた…]

周りを見遣るとそこは既に寝室とは言えそうもなかった。
立派な建物は朽ち果てた廃墟となり、壁は崩れ天井もない。
辛うじて支えられた2階部分に、真新しいベッドと子供達だけが残されていた。
太一達を見遣るとアグモンが進化出来ないことに困惑している。

ライドラモン[あの料理と風呂も幻、腹も膨らまないから当然だ]

デビモン[気づいていたか。そう、全て幻だったのだ]

太一「何だって?何故俺達をこんな目に遭わせる!?」

太一は大声でデビモンに問いかける。

デビモン[それはお前達が“選ばれし子供達”だからだ]

太一「選ばれし…子供達?」

デビモン[私にとってお前達は邪魔な存在なのだ。黒い歯車でこの世界を覆い尽くそうとしている私にとってはな…!!]

デビモンが両腕を掲げると、ベッドが浮き、島全体が揺れ始めた。
地面が割れ、その亀裂からファイル島が分断されていく。

デビモン[ファイル島はすでに黒い歯車で覆い尽くした…]

分断された小島は、ムゲンマウンテンを中心に八方へと散り散りに流され始めた。

デビモン[次は海の向こうの世界全てだ…]

太一「海の向こう?この島のほかに、まだこの世界があるのか!!」

デビモン[お前達が見ることはない。ここがお前達の墓場となるのだからな。]

ライドラモン[そいつはどうかな?確かにお前はファイル島の中でもトップクラスに強いけどな…お前程度の力じゃ俺には勝てねえ…]

それだけ言うとフレイドラモンにアーマーチェンジ。
太一とアグモンを近くの島に放り投げた。

太一「おい!!?」

フレイドラモン[ここは俺達に任せとけ。後で合流しような]

島が流れ、仲間達のベッドが飛んでいく。

ロップモン[みんな行っちゃったね]

アインス「ああ」

デビモン[愚かな、貴様らだけで何が出来ると言うのだ?]

大輔「そうだな、お前をコケにしつつ痛めつけることくらいは出来るんじゃねえのか?」

余裕の笑みを浮かべながら挑発する大輔にデビモンは屈辱に顔を歪めた。

フレイドラモン[ロップモン!!レオモンとオーガモンを任せたぜ!!]

ロップモン[OK!!]

アインス「デジメンタルアップ!!」

ロップモン[ロップモンアーマー進化!ビットモン!!]

フレイドラモンは飛行魔法でデビモンの元まで飛翔すると、殴りかかる。

デビモン[愚かな!!レザーウィング!!]

フレイドラモンのパンチをかわし、背中に光線を叩き込む。

フレイドラモン[っ…]

しかしフレイドラモンは即座に体勢を立て直して、デビモンに突撃。
デビモンはフレイドラモンの顔面に蹴りを入れた…が。

フレイドラモン[ふっ…]

ニヤリと笑うフレイドラモンにデビモンが訝しげにするが、虚勢だと思ったのか、デビモンはフレイドラモンを殴る。
何度も何度も何度も。

フレイドラモン[く…ははは…]

フレイドラモンの笑いが少しずつ大きくなる。

デビモン[何がおかしい!!?]

デビモンはとうとう耐えられなくなったのかフレイドラモンを殴り飛ばす。

フレイドラモン[ふ…ふふ…いやいや、機嫌を損ねたなら謝るよ。可笑しくて仕方ないんだ。俺とお前の…圧倒的な力の差によ…]

ニヤリと笑いながら言い放つフレイドラモンにデビモンは動揺する。

デビモン[な、何だと…!!?]

フレイドラモン[お前のパンチやキックも技も…俺からすれば全部くすぐったくて仕方ねえんだよ…]

デビモン[な、舐めるな!!]

レザーウィングを再び放つ。
光線がフレイドラモンに何度も炸裂するが、フレイドラモンはくすぐったそうにしながら拳を構えて突撃した。

フレイドラモン[うらあ!!]

デビモン[ぐあっ!!?]

横っ面を殴られたデビモンは勢いよく地面に激突した。

フレイドラモン[あらあら申し訳ない。もっと相手をしてやろうと思ったらあっさり倒しちゃったよ]

デビモン[ぐっ…ぐくっ…]

よろめきながら立ち上がるデビモンにフレイドラモンは感心したような声を出した。

フレイドラモン[おお、立ち上がれて良かったな?偉い偉い]

デビモン[ぐっ…き、貴様…!!]

フレイドラモン[立ち上がれたご褒美に攻撃の仕方を教えよう。パンチってのは…こうやるんだよ!!!!]

フレイドラモンの重い一撃がデビモンの鳩尾を抉る。

デビモン[ガッ…!!]

フレイドラモン[そらそらそらそらそらそら!!]

鉄拳を何度もデビモンの腹部に叩き込み、最後に顔面に蹴りを浴びせ、地面に叩きつけた。

フレイドラモン[ん?もう終わりか?呆気ねえな…まあいいか。そろそろ乗れそうな島が無くなりそうだな。ビットモン、アインスを!!]

ビットモン[了解]

アインスを背中に乗せたビットモンと大輔を担いだフレイドラモンは勢いよく跳躍して近くの島に着地した。

大輔「そんじゃあオーガモン、まったな~」

オーガモン[てめえら逃げんのかあああああ!!?]

アインス「いや寧ろ見逃してやろうとしているのだが」

喚くオーガモンにアインスは寧ろ逆だとツッコんだ。

ビットモン[あ、デビモン]

プライドを傷つけられたデビモンは憤怒の表情でフレイドラモンに向かうが、フレイドラモンは余裕の表情を浮かべていた。

フレイドラモン[ナックルファイア]

デビモン[ぐあああああ!!?]

火炎弾がデビモンの片翼に炸裂し、デビモンは表情を苦痛で歪ませながら海に落下した。

ブイモン[あ~あ、お気の毒に。バイバーイ]

フレイドラモンからブイモンに退化した後、ブイモンは哀れみの表情を浮かべて手を降ったのだった。
こうして選ばれし子供達はバラバラになった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧