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戦国異伝

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第二百十七話 九州騒乱その十

「岩屋城もそう簡単には陥ちぬな」
「はい、それは」
「間違いないです」
 兼続も幸村も言った、ほぼ同時に。
「岩屋城は高橋紹運殿が守っておられます」
「それに立花道雪殿も後詰に来られています」
「大友家の名将のお二人がです」
「ですから」
 この二人がいるからこそというのだ。
「そう滅多にはです」
「陥ちませぬ」
「このままでは落城必至ですが」
「ある程度はもちます」
 岩屋城もというのだ。
「高橋殿が籠城され立花殿が後詰なので」
「だからじゃな」
「はい、しかし」
「それでもじゃな」
「数が違います」
「島津は五万」
「大友もかつては多かったですが」
 その兵の数がだ、大友もかつては九州で覇を唱えていたのだ。それで兵の数もかなり多くいたのである。
 しかしだ、その多くの兵がというのだ。
「耳川での惨敗から」
「兵を持っていた国人達が離反してじゃな」
「これは龍造寺も同じですが」
「その者達の兵が離れてな」
「その国人達を倒す為にも兵を向けていますので」
 つまり中で反乱が頻発しているのだ、今の大友は。まさに今の大友家は内憂外患の状況なのだ。
「ですから」
「島津に兵を向けることもな」
「出来ませぬ」
 したくともだ。
「ですから」
「岩屋城もな」
「このままでは陥ちます」
「そうなるな」
「はい」
 こう信長に話すのだった。
 そしてだ、幸村と兼続は信長に二人で言った。
「ですからここは」
「何としてもです」
「岩屋城に兵を送り」
「間に合わせましょう」
「高橋殿と立花殿をお救いしましょう」
「そうじゃな。さもなければな」
 信長もここで言う。
「岩屋城から島津は一気に勢力を拡げる」
「丁渡いい出陣だったかと」
「今の出陣は」
 幸村と兼続はまた言った。
「今の出陣なら島津の九州制圧も防げましたし」
「よい頃です」
「九州は全てやらぬ」
 島津にだ、信長もこう考えている。
「それでは過ぎる」
「はい、九州の全てとなると」
「島津家の力が大きくなり過ぎます」
「そこまで大きくなると無視出来ません」
「到底」
「島津は薩摩と大隅じゃ」
 島津が元から守護に任じられているこの二国だけだというのだ。
「それで充分じゃ」
「では肥後等も」
「そうした国も」
「やらぬ」
 やはりこう言った信長だった。
「返させる、しかし」
「しかし?」
「しかしとは」
「実を言えばじゃ」
 ここでだ、信長は言葉を一旦置いて言うのだった。 
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