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ドリトル先生と森の狼達

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第四幕その一

                       第四幕  密猟はなかったけれど
 先生はこの日は起きてです、朝御飯を食べて森の中に泊まる為に携帯食やテント、寝袋の用意を整えてからでした。
 村の人達にです、森の中での密猟のことを尋ねたり調べたりしましたが。
 村のお爺さんのお一人がです、仰天して言いました。
「いや、そんな話があったらね」
「大変なことになりますか」
「確かに鹿は間引きしたよ」
 このことは確かにあったというのです。
「猟師の人が森に入ってね」
「そのことはあったんですね」
「そう、けれどね」
 それでもだというのです。
「密猟とかとんでもないよ」
「そこまでは、ですか」
「いつも動物愛護団体や環境保護団体がいるし」
「日本でも多いですよね」
「そう、中には物凄く厳しい団体やタチの悪い団体もいてね」
「悪質な、ですか」
「ほら、どんな人でも団体でもいい人、団体とそうでない場合があるじゃないか」
 お爺さんは先生にこうしたことも言いました。
「そうだね」
「はい、そのことは確かに」
「団体も中にはおかしな人が集まっていてね」
 そうした団体があって、というのです。
「何かっていうと言い掛かりめいたことを言ってきたりしるんだよ」
「いますね、密猟したと疑われる状況になれば」
「すぐに絡んでくるんだよ、まして鹿の話は全国に知られているんだ」
「だから余計にですね」
「変な団体も一杯注目しているから」
「余計に気を使ってですか」
「そう、鹿の数を減らしたんだよ」
 そうしたというのです。
「あとね」
「あと、とは」
「猟師もねえ」
 お爺さんは苦いお顔でこうも言いました。
「最近少ないんだよ」
「日本は銃の規制が厳しいですからね」
「そうだよ、それに猟師も皆歳を取って」
「若い人もならなくて」
「若い人で銃持ったことのある人なんか殆どいないだろ」
 日本では、です。
「そこから猟師になる人なんて」
「若い人ではですか」
「いないよ、皆都会に行くし」
 色々な理由がです、猟師さん自体にもあるとです。お爺さんはとても難しくて寂しさも含めたお顔で先生にお話するのでした。
「この十津川も若い人がいなくて、というかね」
「と、いうかといいますと」
「奈良県の南自体がそうなんだよ」
「過疎ですか」
「それが酷くてね、何十年も前から」
「だから猟師さんもですか」
「この村にもう何人いるか」
 腕を組んでとても難しいお顔になって言うのでした。
「他の場所からわざわざ来てもらった程だよ」
「そこまでしないと駄目だったんですか」
「そうだよ、田畑を守るだけで精一杯だよ」
「それがこの村の状況ですか」
「今いる村の猟師出来る人だとね」
 その人達の数ではというのです。
「それで手が一杯で」
「そして、ですか」
「そう、山の奥にまでだね」
「行くことは」
「あそこまではわし等行っても」
 それでもというのです。
「行かないね、あの辺りは入ったらいけない場所もあったりするからね」
「霊山ですか」
「霊山っていうか山の神様とか化けものとかね」
「そうした存在が出るという場所がですか」
「ここと和歌山の境にはあったりするんだよ」
「それは興味深いですね」 
 先生は民俗学者でもあります、日本に来てからこちらの学問も学んでいてかなりの存在になっています。それでなのです。 
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