FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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無限時計編
父の遺品
妖精の尻尾にて・・・
「ひどいわね、またよ」
ルーシィさんは新聞に目を通してそう言う。
「何か事件?」
「連続教会破壊事件ですよ」
「最近すごい多いらしいですね」
「ずいぶん物騒ね」
「なんでそんなことするのかな~?」
俺たちは料理を持ってきてくれたキナナさんにそう言う。セシリーの言う通り、教会を破壊して何か意味でもあるのか?
「あ!!この人、ニルヴァーナの時の」
「7年経っても変わってないね」
「若~い!!」
「ラハールさんでしたっけ?」
連続教会破壊事件の脇に第四強行検束部隊隊長のラハールさんの写真のコメントがあった。そういえば、メストさんは元気なのかな?あの人も7年前と変わってなかったりして。
「ぐがーっ」
「ナツ兄、どうしたの?」
ロメオはナツさんが眠っているのを見てそう質問する。
「畑仕事で疲れたから昼寝だって」
「ナツさんってギルドで寝てること多いですよね」
あきれたように言うルーシィさんと俺は寝ているナツさんの方を見ながら言う。ナツさんって食べてるか寝てるかの2択のような気がするなぁ。
「いつの間にかそんな事件が起きてたんだね」
「怖い世の中だよね~」
ハッピーとセシリーはさっきまでの教会破壊事件についての話をしている。
「私たち、7年もブランクあるわけだし」
「7年かぁ。長いな・・・」
知らぬ間に7年も時が経ってたなんてなぁ・・・やっぱりしっくり来ない。
「そのせいか、予知能力も調子悪いみたい。散漫なイメージしか浮かばないのよね」
「そうなの?」
「そうなのよ」
シャルルも7年のブランクのせいで予知がうまく使えないらしい。そういえば予知が使えるようになってからすぐに俺たち行方不明になったから、シャルルには元々経験が足りないのかもな。
「ん?何の匂いだ?」
「あ、起きた」
さっきまでイビキをかいて寝ていたナツさんが目を覚ます。匂い?
俺もナツさんの感じた匂いの正体を探ろうとしてみる。
「なんだ?この匂い・・・」
「シリルも何か匂うの?」
ウェンディが俺の顔を覗き込むように見る。なんか今までで嗅いだことのない匂いなんだよなぁ。何の匂いなんだ?
「ルーシィ姉、お客さんだよ」
俺たちが悩んでいると、ロメオがルーシィさんを呼ぶのでそちらに視線を向ける。
「あそこにいるのが、ルーシィ姉だよ」
「ありがとうございます」
ロメオくんの隣にいるのはピンクのワンピースに身を包んだお嬢様のような人だった。
「誰だ?」
「えーっと・・・」
ルーシィさんはその女の人のことを思い出そうとしている。そんなルーシィさんに女の人が近づいてくる。
「あなたが、ルーシィ・ハートフィリア?」
「うん、そうだけど・・・あの・・・誰ですか?」
ルーシィさんは心当たりがないらしく、その女の人に確認することにした。
「誰・・・て・・・」
ルーシィさんに誰かと訪ねられた女の人は突然目に涙を浮かばせる。
「ミッシェル・ロブスターですよー!!うぇぇぇぇぇん!!」
「はいーー!!?」
ミッシェルさんという方はルーシィさんに忘れられていたことに号泣してしまった。
「お知り合いでしたか」
「あーあ、泣いちゃった」
「いきなり泣かすなよ」
「ええ!?」
ウェンディと俺とナツさんがそう言うといまだに事態を飲み込めていないルーシィさんは驚くことしかできないでいる。
「ごめんなさい。ずいぶん久しぶりだから、わからないのも無理ないわね」
「あの、鼻が」
ミッシェルさんは落ち着いたようで鼻を垂らしながらそう言う。
「すげぇ美人だな。誰だよ?」
「いやぁ・・・だから・・・」
エルフマンさんに聞かれてもルーシィさんは苦い表情をしたままミッシェルさんの方を見ている。あれ?まさか覚えてないのかな?
「それでは改めて、私、ミッシェル・ロブスターです。お久しぶりです、ルーシィ姉さん」
ミッシェルさんは自己紹介をしたあと、笑顔でルーシィさんにそう言った。
「姉・・・」
「「「「「「「「「「姉さん!?」」」」」」」」」」
ミッシェルさんのルーシィさんの呼び方に俺たちは驚き叫んだ。
「驚きの真実!!」
「ルーシィパパさんに隠し子が~!!」
「じゃなくて、ロブスター家はハートフィリア家と遠縁にあたるの」
ハッピーとセシリーのボケにミッシェルさんは答える。なんだ、そう言うことか。
「つまり、ルーシィの親戚」
「そういうことね」
「ルーシィさんにも親戚なんていたんですね」
「でもなんでお姉さん?」
俺たちは親戚ということで納得していると、ウェンディが一つの疑問を述べる。
「雲泥の差ってのはこのことか」
「よくわかんねぇけど、お前ルーシィの娘ってことだな」
「なんでそうなるのよ!!」
ナツさんにルーシィさんが突っ込む。エルフマンさんも何気に失礼だけど、そこはあえてスルーなんですね。
「冗談だっつうの・・・」
ナツさんは青ざめながら突っ込みを入れたルーシィさんを見ていた。ナツさんじゃ本気が冗談かわかんないから突っ込んだと思うんですけど・・・
「ププーン」
「で、なんであたしがお姉さん?」
ルーシィさんはさっきウェンディも言っていた質問をミッシェルさんにする。
「だって、年上だから」
「でも、どう見てもあなたの方が年上でしょ?」
「それは・・・」
ミッシェルさんは少し困った顔をする。
「どういうことだろうね」
「俺たちは天狼島で7年も時間が止まってただろ?実際の年齢でいくと、ルーシィさんの方が年上だろうからミッシェルさんが姉さんって言うのは普通ってことだよ」
「そっか!!」
俺に説明されてウェンディは理解する。ナツさんはどうも思考が停止しているようだけど、大丈夫かな?
「やっと・・・やっと姉さんに会えた・・・グスッ」
ミッシェルさんはルーシィさんに会えたことで感涙していた。涙もろい人なのかな?
「まぁまぁ。てかあの・・・その荷物何?」
ルーシィさんはミッシェルさんが両手で持っているケースについて聞く。
「これは・・・私はこれを、姉さんに!!」
「あっ!!」
ミッシェルさんはルーシィさんに抱きつこうとし、手に持っているケースを手放してしまった。
「ぎゃっ!!」
そのケースはミッシェルさんの爪先を強襲した。 痛そう・・・
「あ・・・あたし、ルーシィ姉さんにどうしても渡したくてずっと探してたの!!」
ミッシェルさんは痛みに耐えながらそう言う。大丈夫ですか?
「泣かすなよ!!それでも漢かぁ!!」
「あたし女の子!!」
エルフマンさんとルーシィさんのやり取りはさておき、俺とウェンディ、キナナさん、そしてルーシィさんはミッシェルさんの持っていたケースを持ち上げたのだが、
「うわぁ・・・」
「重いですよこれ」
「一体何キロあるんですか!?」
そのケースがものすごく重い!!とんでもなく重い!!四人で持ってても重いのにミッシェルさんは一人でこれをずっと運んでたのか?どんな怪力ですか。
「なんだあいつ・・・」
「ルーシィの親戚ってのも信憑性があるね。あのドタバタ感が」
「ププーン」
ハッピーにプルーがうなずく。ミッシェルさんって見た目と中身が噛み合ってない気がするなぁ。さすがはルーシィさんの親戚です。
「で、これは何なの?」
俺たちはそのケースを何とか机の上に乗せたので今度は中身についての話になった。
「姉さんのお父様・・・ジュード・ハートフィリアの遺品」
「っ!!」
ルーシィさんのお父さんって、確か最近亡くなったんだよな・・・ミッシェルさんもかなり暗い声で言ってたし、相当辛かったんだろうな・・・
「私、ジュードおじさんの仕事を少しの間お手伝いしていて、それで、ご臨終の現場に立ち会うことができて・・・その時、あなたにこれを渡すよう頼まれたの」
「お父さんの・・・最期の時に・・・」
ルーシィさんもできることならその場に立ち会いたかったであろう、大切な家族が亡くなったのだから・・・暗い雰囲気の中、ミッシェルさんが言葉を紡ぐ。
「行方不明だったあなたをずっと心配してたけど、きっとどこかで生きているから、きっと帰ってくるから、見つけ出して渡してほしいって。眠るような穏やかな最期だった。その日から今日まで、ずっとあなたを探していたの」
俺たちはそれを静かに聞き、中には涙を流している人もいる。エルフマンさんはうるさすぎだけど。
「やっと会えた・・・これでジュードおじさんとの約束を果たせる」
ミッシェルさんも目に溜まっていた涙を拭う。ルーシィさんは机の上に乗せられたケースに視線を落とす。
「何が入ってるの?」
「わからないわ。私はただ、このケースを渡すように言われただけだったから」
どうやらミッシェルさんも中身は知らないようです。
「お父さん・・・」
「開けてみろよ」
「え?」
ケースを見つめるルーシィさんにナツさんが近寄る。
「こいつ、お前のことすっげぇ探してたんだろ?どんな大切なもん預かってたか、見せてやってもいいんじゃねぇか?」
ナツさんはルーシィさんにケースの中身を確認するように促す。
「うん」
ルーシィさんはうなずくとケースの鍵を開け、蓋を開ける。そこに入っていた物を見て、俺たちの目が点になる。
「えーと・・・」
「なんだこりゃ?」
ルーシィさんはケースの中身を手に取る。それは白っぽい布に包まれた細長い何かだった。
「この布・・・」
「なんか魔法がかかってんな」
「さっき俺とナツさんが感じた匂いはこれみたいですね」
俺たちはその物を見てそう言う。なんなんだこれ?
「っ!?」
すると、シャルルの表情が突然何かに怯えたような表情になる。
「シャルル?」
「どうかしたの?」
「顔色悪いよ~?」
ウェンディたちはシャルルを心配して声をかける。
「ううん・・・なんでもない・・・」
シャルルはそう答えるが、その表情は険しいままだった。どうしたんだろうな。
そんな中ルーシィさんは布を取ってみることにした。
「え?何よこれ・・・」
「ジュードおじさんが大切になさってた物なの?」
「さぁ?あたしも見覚えないと思う・・・」
「う~ん・・・」
布の中から現れたのは、何やら鍵のような物だった。なんですかね?これ。
「武器だろ!」
「違うと思う・・・」
「でもなくはないような気がしますよ?」
ナツさんはそれを武器だと思ったがルーシィさんは否定する。でも、あり得なくはないですよね?
「思い出した!!」
ミッシェルさんはそう言い、手を合わせる。さっそく問題解決ですかね?
「やっぱり武器だったのか?」
「いいえ」
ミッシェルさんはナツさんの考えに首を振る。やっぱり武器じゃなかったか。でもそれならこれは?
「それじゃあ一体・・・」
「私・・・3日前から何も食べてなくて・・・」
グゥ~
ミッシェルさんはお腹を鳴らしてそう言った。3日も何も食べてなかったなんて・・・そんなにルーシィさんのことを一生懸命探してたんですね。
その後、ミッシェルさんはギルドでお食事した後、ルーシィさんの住んでいるアパートへと帰っていきました。
「でも、結局あれはなんだったんだろうね」
「ルーシィさんたちもわからないなんて・・・」
「ルーシィパパさんの宝物とか?」
ミッシェルさんが持ってきたルーシィさんパパの遺品がなんだったのか、わからなかったことが残念で仕方なかった。でも、シャルルがあれを見た時の顔が怯えているようだったけど、どうしてだったのかは俺たちには知るよしもなかった
次の日からミッシェルさんはルーシィさんの薦めで妖精の尻尾でウェイトレスとして働くことになりました。掃除、洗濯、裁縫、料理となんでもこなせるミッシェルさん。さすがは元お嬢様って感じでしたね。だけど・・・
「きゃっ!!」
ガシャァッン
ミッシェルさんは結構ドジっ子なのか、よく転んで料理などを落とす時もありました。
心配して声をかけると、大体大泣きしてしまい、普段の印象と大分変わりました。
でも、ルーシィさんがその分いつもより頑張ってカバーしていて、本当に姉妹のような印象を受けました。
「なるほどのぉ・・・」
マカロフさんはルーシィさんの話を聞いてそう言う。
「魔導士が魔導士に頼むなんて聞いたことねぇなぁ」
「上に依頼出しとけよ。こっちに下ろしておくからさぁ」
なんでも、今回ミッシェルさんがルーシィさんのパパから預かってきたあの・・・何かよく分からないものについて調べてもらう依頼を妖精の尻尾に出そうということらしい。
確かにあれって何なのか、俺もすごく気になるなぁ。
「考えたわね、ルーシィ」
「うむ。誰が名乗りをあげるかのぉ」
ミラさんはカウンターでお皿を拭き、マカロフさんはお酒を飲みながらそう言う。
「ギルドに依頼出すんだって?」
ナツさんは机の上にケースを乗せているミッシェルさんに話しかける。
「許可降りたよー!!」
「遺品を包んでる布の魔法も気になるし、ジュードおじさんが何を伝えようとしてたのか、姉さんのためにもなんとかしたくて」
ミッシェルさんって本当にルーシィさん想いなんだなぁ。ルーシィさんもミッシェルさんのことをすごく大切に思ってるし、仲がよろしいですね。
「よーし!じゃあ俺が受けてやんよ」
「壊しちゃダメだよ?わかってる?」
「うっせぇよ!!わかってるって!!」
どうやらこの依頼はナツさんが引き受けるようだ。ナツさんで大丈夫かな?すごく心配・・・
「じゃあ、さっそく――――」
ミッシェルさんはケースの中から遺品を出し、それをナツさんに渡そうとしたら、
ツルッ
「!!」
ミッシェルさんはなぜか滑ってしまい、そのまま体が反転し、入り口の方へと遺品を転がしてしまう。
「きゃああっ!!」
「おいおい!!」
「大丈夫!?」
ナツさんとルーシィさんは倒れたミッシェルさんに心配して声をかける。すると、その遺品にある変化が生じる。
「ん?」
「なんだ?」
「これは一体・・・」
「え?」
俺たちはその遺品の動きに驚愕する。クルクルと遺品は回転し宙に浮かんだかと思うと、その先端を上に向け、立ったのである。
さらにそれだけでは収まらず、その遺品に何やら古代文字が浮き上がる。
「何か浮かんできた!?」
「文字・・・ですかね?」
「古代文字って言うやつか」
「だったらレビィちゃんが・・・」
ルーシィさんはその古代文字の解読をレビィさんに頼もうとするが、
「今はおらん。シャドウ・ギアは仕事で遠出しておる」
「だったらフリードくんは~?」
セシリーは同じく文字の魔法を使えるフリードさんを提案するが、フリードさんも同様に仕事で現在ギルドにいない。
「何かを伝えようとしてる?」
「お父さん・・・」
ミッシェルさんとルーシィさんはその遺品をじっと眺める。
「じっちゃんもあの文字読めねぇのか?」
「・・・・・」
どうやらマカロフさんもその文字を知らないらしい。
「シリル、何か見えない?」
「無理だな。俺は目がいいだけで文字の解読はなんとも・・・」
ウェンディは俺の目であれを解読できないかと考えたが、あいにくこの目の使い方もいまいちわかってないし、まず文字を知らないからとてもじゃないが無理だと俺は答える。
「ルーシィ。これには関わらん方がいい」
「どういうこと!?」
マカロフさんはあの文字を見て何かを察したようだが、おそらく確実にこれっていう物がないため、ルーシィさんに答えることができない。
ルーシィさんは遺品の方を向き直る。
(でも・・・お父さん・・・この謎、絶対に解いてみせるから)
ルーシィさんは決意を新たにし、父の伝えようとしていたことを調べることを決めた。そのルーシィさんを見つめるミッシェルさんは、心なしか少し不安な表情に見えた。
後書き
いかがだったでしょうか。
この無限時計編作ってみると意外と難しく、一話の更新に時間がかかりそうな気がします・・・
次回もよろしくお願いします。
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