戦国異伝
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第二百十六話 慶次と闇その十一
「いざという時に信貴山に入りな」
「そして、ですな」
「あの地において兵を挙げ」
「九州に兵を向け空になっている都や安土、大坂を襲う」
「そうしますな」
「出来れば岐阜に名古屋もじゃ」
そうした場所もというのだ。
「攻めようぞ」
「近畿と東海を抑えれば」
まさに織田家の地盤となっているそこをだ、
「織田家も困るであろう」
「そこから天下は大いに乱れ」
「我等が付け込めます」
「そして朝廷には高田様もおられます」
「あの方も動かれます」
「他の十二家の方々もです」
彼等もというのだ。
「立ち上がられます」
「そうなれば織田家の天下はひっくり返します」
「そしてです」
「そのうえで」
「天下は、じゃな」
松永は家臣達にあえて問うた。
「乱れてじゃな」
「我等の世にです」
「完全になります」
「間違いなく」
「そうじゃな、我等の世にな」
「この戦国の世はです」
「多くの血が流れました」
家臣達はこんなことも言った。
「源平、南北朝と戦乱の時に力を蓄え」
「その都度やられもしてきましたが」
「それでもです」
「我等はです」
「それでもです」
「今ここに」
「戦国の世に遂にです」
「我等の悲願を果たします」
いよいよというのだ。
「この天下を血で塗らし」
「闇で覆います」
「我等の闇に」
「それに」
まさにと話してだ、そしてだった。
家臣達はここでだ、松永にこんなことを言った。
「それで殿は茶もです」
「茶も親しまれていますね」
「お若い頃からでしたが」
「あれも」
「それがどうかしたのか」
松永は家臣達の咎める様な言葉にとぼけた様にして返した。
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