異世界系暗殺者
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“ぬ”の時間(2016/05/16 一部修正)
前書き
タイトルがギャグみたいですが、本編は割と真面目です。
そして、本話でスモッグさんが最弱認定されました。(笑)
【視点:樹】
轟の試作型疑似玉璽を持っていたおっさんを撃破した俺達は、轟の試作型疑似玉璽を含むおっさんの所持品を全て没収してから先―――一先ず5階展望回廊へと急いだ。
ちなみに移動過程で律が、轟のおっさんの戦LV等を教えてくれたんだが、それを聞いた出撃組全員が驚いていた。何故なら轟のおっさんは実はロヴロさん子飼いの暗殺者だった上、戦LVは試作型疑似玉璽の能力込みで50前後の小物だったんだ。
試作型疑似玉璽を除いたら、轟のおっさんの戦LVは20以下だったんじゃないか?戦LVだけで考えたら、この場にいる誰よりも弱いということになる。
ってか、よくそんな低LVで試作型疑似玉璽が使えたと思う。玉璽の名が付くパーツが組み込まれたA・Tは、ぶっちゃけ諸刃の剣だからな。
低LVの暴風族が使えば、玉璽に能力に振り回されて自滅するのがオチだ。だからこそ、E組でも地力が低LVの暴風族には正規実用型疑似玉璽を渡していない訳だし。
まぁ、このおっさんの場合、殺し屋としての経験と技術を駆使して試作型疑似玉璽の性能を上手く制御し、俺達とのLV差も埋めようとしたんだろうけど。現に自作の麻酔ガスを利用していたことだしな。
そう考えると、この先現れる他の試作型疑似玉璽持ちも暴風族としての戦LVだけでなく、殺し屋としての経験と技術でLV差を埋めて来るだろうから油断はできないな。
……と、そんなことを考えている内に5階展望回廊に次の敵が現れた様だな。先頭にいる烏間先生がハンドサインで俺達に止まれと指示を出してきた。
いや、現れたというより待ち伏せしていた様だな。回廊の影から相手の姿を覗いてみたが、どう見ても裏の人間だ。なによりA・T――烏間先生とデザインが同じである石の試作型疑似玉璽を履いている。
「……律」
「はい」
俺が小声で律に指示を出すと、律は俺がした様に回廊の影から相手の姿を覗き、念の為に戦LVを測定する。
「……イッキさん。相手の戦LVは88、王クラスです」
「それは暴風族としての戦LVか?」
「はい。恐らく、寝る間も惜しんでA・Tの訓練をしたんでだと思います。よく見ると目の下に隈が……。その上、相手は近接戦闘能力が極めて高い暗殺者でもあります。ブロフスキ氏から頂いていた暗殺者リストに該当する人物がありました。
どうやら前腕筋の筋繊維が常人の7倍にも及ぶ密度があり、握力のみで頭蓋を握り潰せる様です。暗殺者としての技量、経験を含めた実戦での戦LVは最低でも100を超えると思われます。」
「「「「「「「「「「!!?」」」」」」」」」」
律から語られる敵の予想を含めた能力値に、烏間先生を含む皆も驚きを隠せずにいた。そしてこの時、敵のいる場所から何かが罅割れる音が聞こえてきた。
改めて敵のいる場所を覗き見ると、敵が触れていたガラスが割れている。情報の握力は嘘という訳では無さそうだ。
「……つまらぬ。移動時に音を立てなければバレぬと思っていた様だがぬ、俺の持つ石の試作型疑似玉璽は地殻レーダーによる探査機能が付いてるぬ。
そのことを知っている筈の防衛相出身の引率教師と開発者がいるにも拘らず、何の対策もせず集団でやって来るとは、期待外れも甚だしいぬ」
ッ!マズった!!振動波による硬直、硬化現象にばかり気が回り過ぎて、石系玉璽の基本能力でもある地殻レーダーのことを忘れていた!!いや、そんなことより―――
「「“ぬ”を多用し過ぎじゃね?おっさん」」
((((((((((言った!!良かった、イッキとカルマがいて!!))))))))))
「まぁ、おっさんは外人だし、サムライっぽいって理由で使ってるんだろうけど」
「成程ね。外人ってサムライとかニンジャに憧れることが多いし。ってことは、このおっさんも語尾が“ぬ”じゃなくて、“ニンニン”とかになってた可能性がある訳だ」
「「「「「「「「「「ぶっ!!」」」」」」」」」」
俺も極端な説明だったが、カルマの更に極端な予想に烏間先生以外の全員が噴き出した。すると、ぬのおっさんは両手をゴキゴキ鳴らしながら口を開いた。
「間違っているなら間違っているで構わないぬ。この場にいる全員を殺してから“ぬ”を取れば恥にもならぬ。とはいえ、防衛相所属の引率教師も含め18人を殺るのは俺でも骨が折れるし、面倒だ。ボスと仲間を呼んで皆殺しぬ」
ぬのおっさんはそう言うや否や、ポケットから取り出した携帯を操作し始めた。ってか、こいつ馬鹿だろ。増援を呼ぶとか言われて、それを放置する敵がいる訳ないだろ。
俺はぬのおっさんの携帯目掛けてホイールを高速回転させた炎の試験型玉璽で蹴りを放ち、電話が繋がる前に液晶部分を切断した。
「ぬのおっさん。増援呼ぶって言われて待ってる敵がいると思ってんの?それに多勢に無勢とはいえ、中坊相手に増援呼ぶとか、プロって結構大したことないんだな。あと、ガラスや頭蓋骨なら俺でも割れる。いや、粉砕できるっての」
俺はぬのおっさんにそう告げると、ぬのおっさんが罅を入れたのとは別のガラスに向かって二重の極みを放ち、文字通り粉砕した。
「!!?」
「ほら、ぬのおっさん。プロの本気って奴を俺に見せてみろよ」
「………いいだろうぬ。相手になってやるぬ」
ぬのおっさんはそう言うと着ていた上着を脱ぎ捨て、構えを取った。さて、殺さないにしても手足の1~2本は砕かせて貰おうか。
後書き
本格的なイッキvsグリップは次話に持ち越しです。
あと、本編で詳しい説明がされていませんが、律の義体にはリード機能も搭載されていたりします。(笑)
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