魔法少女リリカルなのは!?「Gの帝王」
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五匹目《黒い怪物》
前書き
ども〜
ではよろしくお願いします。
「ゴキ兄? 花ちゃん見てない? 」
【花? いや、見てへんな? まぁ〜見かけたら教えてやんよ。今急いでるんだ、ほんならな隆文! 】
「え? う、うん……花ちゃんどこいちゃったんだろう? 」
フェイトの家で花とわかれてから早くも3日。花はまだ隆文の前に姿を現していない。普段ならこんな事はあり得ない事だ。何故なら花は隆文の事が大好き。例え1日ですら隆文に会わなかったことなどない。にも関わらず隆文はおろかゴキ兄も花の居所が分からない。流石の隆文も花の事が心配だった。そして花を探し回り、花が好きだった公園のベンチの所に行った時、それは起こった。
「ここにもいない……」
「隆文お兄ちゃん!! 」
「うわっあ!? ……え? き、君……誰? 」
「私だよ私! 分からないかな? 隆文お兄ちゃん? 」
「っ!? も、もしかして……花ちゃん!? 」
「うん! 」
いい笑顔で後ろから隆文に抱きついたのは隆文よりも背の低い女の子。それは花であった。肩まで伸びた黒い髪に右目の赤い瞳と左目の黒い瞳のオッドアイ。そしてその頭にはGを彷彿とさせる細い触角が2本。だがそれ以外は普通の人間と変わらない為彼女がゴキブリであるとは誰も分からない。さらには彼女、隆文が知っている中でもとびきり可愛い顔をしている為思わず隆文は赤くなった。
「隆文お兄ちゃん、私人間になれたんだよ? それでどうかな? その……可愛い? 」
「え?……う、うん、すごく……可愛い」
「本当!? へへ、嬉しい! 」
「どふっ!? 」
可愛いと言われた花は嬉しさのあまり隆文に飛びつく。しかしここで注意して欲しい。花はゴキブリだ。その為その力、それを人間の筋力に換算した時、約30倍だ。しかもゴキブリは硬い殻や色々な骨格によって守られておりそれを人間サイズにした場合の重さは想像しえないものがある。よって花に押し倒された隆文はその身体に見合わない重さに押しつぶされた。幸い花が子供のサイズなのが救いだろう。
「は、は……な゛ち゛ぁん゛……おも゛い゛……し、死ぬ゛ぅぅ…………」
「え!? 隆文お兄ちゃん大丈夫!? 」
「うぶっ!? おぶっ!? だ、だめ゛っ!? 死んじゃう゛!? 僕、死んじゃう゛ぅぅぅ……」
花は隆文が苦しんでいる理由が分からない。よって隆文の上でグイグイと隆文の肩を掴み揺らした。すると揺れている振動で隆文に重みがさらに加わる。結局の所、花は自分が重いと気付くまで隆文に同じ行動をし続けた。おかげで隆文は完全にグロッキーである。
「ごめんなさい……隆文お兄ちゃん…………」
「あはは……だ、大丈夫。気にしないで」
2人はベンチに座り取り敢えずひと段落する事にしたが、花は落ち込み、苦しんでいた隆文が逆に慰めると言う状況になる。そしてなんとか元気を取り戻した花だったが、隆文は疑問がぬぐえず直接花に尋ねた。だが花自身も自分が人間になった事は分からないと言う。しかし一つだけ、自分が人間になる直前に分かったのは、ひし形の青い宝石を見たのだという事だけだった。
「青い宝石? もしかしてフェイトちゃんが言ってた奴なんじゃ……」
「フェイトちゃん? 」
「うん、この間家に行った金髪の……っ!? は、花……ちゃん? 」
「あの女の話をするの…………」
花は突然立ち上がった。そして隆文光をなくした瞳で隆文の前に立つと、好きな人を見る眼差しとは程遠い、憎しみのこもった目で睨みつけた。隆文は意味がわからず少し驚く。
「隆文お兄ちゃん……なんなの? あの女が好きなの? 私が人間になってもあの女がいいの? 結局の私は隆文お兄ちゃんにとってはなんでもないただのゴキブリなんだね。どうして? 私が嫌い? Gだから? ゴキブリだから? 虫けらだから? どうして隆文お兄ちゃんは私がいるのにあの女しか見ないの? 私といる時ぐらいあの女の話はしなくてもいいじゃん……何? わざと? ぐっ……本当にあの女は邪魔だ。隆文お兄ちゃんの心を全部奪っていった。楽しかった隆文お兄ちゃんとの時間はあの女の所為で少なくなった。もはや消えたと言ってもいい。殺してやる……あの金髪を殺してやる。許せない。隆文お兄ちゃんはには私がいるのに……だから殺せばいいんだ。あの金髪殺せばいいんだ。殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる……」
「は、花ちゃん…………」
変貌。あまりにも目の前の花が自分の知っている花と食い違った為に、隆文はどうしたらいいか分からずベンチから立ち上がった。そして花を落ち着かせるように花の肩を掴むが、その瞬間、隆文は花に押し倒され、押し潰されない程度に体重をかけられ身動きが取れなくなった。隆文は突然の事に目を見開く。
「ちょ、ちょっと花ちゃん? どうし……っ!? 」
「隆文お兄ちゃん? 私を見て? 私だけを見て? 私は隆文お兄ちゃんがいれば誰もいらない。何もいらない。だから……隆文お兄ちゃ……んむっ……」
「んっ!? ん……あむっ……んっ…………」
花は隆文の顔を両手で固定し、自分の唇で隆文のそれを塞いだ。さらに大胆にも自分の舌を入れ、ネチっこく隆文に想いを伝える。だがこれは絶対にやってはいけない事だった。花は勿論、隆文もそれには気づいていない。しかしそれはすぐに分かる事になる。それは花が隆文から顔を離してすぐの事だった。隆文は突然顔を青くし痙攣し始めると、呼吸もまともにできないような状態になりだした。さらには白目を剥き、口から泡まで噴き出している。花は唖然としてしまい、そんな隆文を見ながら固まってしまった。何が起こったのか。人間になった自分は隆文にキスをしただけ。にも関わらず隆文は今、花の前で死にかけているのだ。自分は隆文に何をしてしまったのか。花は目から雫を流し、必死に頭を動かす。
「あっ!? あぶっ!? うっ!? ごほっ!? あ……うっ!? おえっ!? う……あ…………」
「隆文お兄ちゃん? ……お兄ちゃん!? 嫌!? 誰か!? 誰かぁぁぁああああああああ!! いやぁぁあああああああああああああ」
隆文はこの時点で心肺停止。花はパニックになる。しかし辺りには人をはいない。こんな時に限って昼間だというのに公園は子供1人いなかった。だが、花には何もできなかった。隆文がこんな事になってしまった原因も分からなければ隆文を救い出す知識も花にはない。何故なら花はつい昨日までただのゴキブリだったのだから。
「隆文お兄ちゃん!? 息して!? 死んじゃ嫌だぁ……」
「隆文!? 」
「え? ……お前……金髪…………」
その現場にたまたま駆けつけたのはフェイトだ。泣きじゃくる女の子の横に倒れているのが隆文だと分かった瞬間、フェイトは隆文に駆け寄りその状態を見る。しかし現段階で隆文にもう息はない。
「隆文? 嘘……どうして……ギリっ……貴方! 隆文に一体何があったの!? 」
「分かんなぃ……」
「ちゃんと答えて!! 」
「分かんないよ!? 分かんない分かんない! 分かんなぃ……もん…………」
フェイトは花に掴みかかり怒鳴り散らした。普段の彼女からではあまり見られない姿だろう。しかし隆文が死んでいるとなれば動揺し、感情をむき出しにするのは仕方のない事だ。そしてどうしたらいいか分からないフェイトは隆文の状態が普通の状態じゃないと判断すると、隆文を抱え、一緒にいた花も一緒にある場所へと転移した。
「フェイト、どうして戻って来たの? ちゃんと言われた物は見つけ出せたのかしら? 」
「お願いします! 隆文を助けて下さい! ジュエルシードならちゃんと探しますから……お願い母さん!! 」
「そんな子どうでもいいわ。だから早く探して来なさい! ……っ!? 」
「お゛願ぃ……します…………」
フェイトが隆文達を連れて転移したのは時の園庭。フェイトの母親のいる場所だ。フェイトは母親の指示で青い宝石、ジュエルシードを探している。そして母親であるプレシアにフェイトは頭を下げていた。最初は突っぱねられたフェイトだったが、どこかに行こうとするプレシアのスカートを掴み涙目でお願いし続けた。プレシアも何故こんな子にここまでするのかと疑問に思い、逆に少年に興味をそそられる。
「分かったわ。その子は私が見てあげる。だからさっさとジュエルシードを集めて来なさい! 」
「あ……はい! ありがとうございます、母さん! 」
プレシアにそう言われたフェイトは満面の笑みになり急いでジュエルシードを探しに出かけた。残されたのは花と息のない隆文。プレシアは花を睨みつけた。そのあまりの怖さに花は震え上がる。
「ほら、何をしているの? さっさとその子を連れて来なさい! 」
「え? あ、はい! 」
花は隆文を抱えプレシアの後についていく。そして手術台のような物がある部屋へと連れて行かれ、そこに隆文を寝かせるとプレシアは空中にモニターを開き作業を始めた。しかししばらくしてプレシアの顔が引きつり始め、花の方へと視線を向けた。
「貴方、これは何があってこうなったの? 」
「分かんない……です。隆文お兄ちゃんにキスをしたら……隆文お兄ちゃんが…………」
「口を開きなさい」
「え? 」
「口を開けろと言っているのよ? 」
「は、はい!? あ〜」
プレシアは花の口を開かせるとそこから粘液を採取し、それを調べ始める。だがそれを調べたプレシアは目を見開き、花を見ながら声を震わせた。
「貴方は人間なの? 」
「え? 」
「貴方の口から検出されたのは即死性の高い猛毒よ? そこの男の子の口から体内にかけても検出されたわ。しかもこの毒、沢山の菌の集合体みたいな物だから解毒とかそういう類の物じゃない。貴方は一体何者なのかしら? 」
「……その……元はゴキブリです。昨日どういう訳か人間になりました」
花は言葉を詰まらせながらも素直に答えた。プレシアはそれを聞き、驚いていたが突然モニターを閉じると。その場に座り込んだ花を立たせその目を見て話し始める。だがそれは今まで見ていたプレシアの姿ではなかった。まるで優しい母親のような温かな雰囲気である。
「ここにはどれだけいても構わないわ。気がすむまでその子の側にいてあげなさい」
「隆文……お兄ちゃんは? 」
「……ごめんなさい。この子はもう助からないの」
「え…………」
「貴方の持ってる毒……正直言ってかなり危険な物よ。だから無闇矢鱈に誰かとキスや間接的にでもやめた方がいいわ。もしも誰かの体内に貴方の毒が少しでも入り込んだら……その人、いえ。その生物は100%助からない。この子のように死ぬ。それだけは覚えておきなさい」
「あ……隆文……お兄ちゃん……私が……殺した」
花はプレシアがその部屋を出て行った後、1人フラフラと隆文の側へと座る。そして隆文の頬に手を添えながら呆然と冷たくなった隆文を見ている。その目からは涙が絶え間なく流れ、顔も悲しみに歪んだ。
「お兄ちゃん……隆文お兄ちゃん……ごめ゛ん゛なざい゛……嫌だぁぁ……死んじゃ嫌だよぉぉ……うっ、ひぐっ……うっ、うっ……うわぁぁぁぁ…………」
一方その頃、隆文の世界では何故か大変な事になっていた。隆文が時の園庭に来て一週間以上が経過し、その世界のG達は総出で隆文を探し始めていた。しかし隆文は見つからない。そうなれば当然探す数を増やす。よって海鳴市、そこではこの世の終わりが近いのではと言うような悍ましい光景が広がっている。昼夜と所構わずGが徘徊し、人の目に入っては駆除される光景が広がっているのだ。だがいくら駆除しようとされようとG達は一歩も引かない。命をかけて隆文を探している。
そしてとある海岸。そこでひょんな事から高町なのはとフェイト・テスタロッサは戦っていた。互いのジュエルシードをかけ、互いのデバイスをぶつけ合い。とうとう決着はなのはの勝利で終わる。しかし戦いに負けたフェイトを見限ったプレシアの手でフェイトの頭上には紫色の落雷が降り注いだのだ。フェイトは目を瞑る。
「え? ……え!? 」
「フフン……軽いもんやな? 誰かは知らんがこれが攻撃のつもりなんか? ははっ! とんだお笑いぐさやで! ドッ……セイヤァァァアアアアアア!!! 」
フェイトは落雷を受けなかった。何故ならその落雷は突然現れた得体の知れない怪物に防がれたからだ。その怪物とは全身が黒光りし、ツルッツルの体。そして髪もなく、頭からは細い触角が2本出ており、形、姿は人間。だがそのガタイは人間のそれとは呼べない。身長は3メートル近くあり、全身筋肉で武装しているかのようなゴリゴリのマッチョ。フェイトは助けてくれた事を尻目に怯えていた。するとその時だ、安全な場所へと抱えられ海岸に降ろされたフェイトは声をかけられる。
「貴方がフェイトさんね? 」
「え? はい、そうです。あの……貴方は? 」
「私? 私は隆文の母親よ? ちょっと聞くけど……うちの息子知らないかしら? 」
「ひっ!? あ……ああ…………」
黒い怪物の前に立ち、腕を組みながら殺気とも呼べるような視線をフェイトに向けたのは私服にエプロンをした、隆文の母親その人であった。
後書き
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