炎の天使
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
4部分:第四章
第四章
「貴殿等は勝てはしない。最早な」
「そうなるというのか」
「我等は」
「勝てないと」
「彼女はそれだけのものを残した」
そのフランスにだというのである。
「そして」
「そして?」
「そしてというと何だ」
「彼女は魔女ではない」
今度は教会への批判だった。
「それもまた。はっきりしていることだ」
「馬鹿な、それではだ」
「今あの娘は焼かれている」
今度はだ。教会の僧侶達が言うのであった。イングランド、教会、様々な思惑から動いている彼等はだ。彼女を何としても魔女にしなければならないのだ。
その彼等がだ。火刑台を指差して言うのであった。紅蓮の炎から漆黒の煙が沸き起こっているその燃え盛る火刑台をである。
「魔女は炎に焼かれる」
「それは当然のことだ」
「若し魔女でないのならだ」
彼等のうちの一人が言った。
「あの娘は今だ」
「そうだ、今だ」
「今ここでだ」
一人の言葉にだ。他の者も続く。
「あの炎から娘は助け出される」
「天使によってな」
「そうなる筈だ」
「ではそうなる」
若い僧侶は断言した。
「見るのだ、それを」
「何っ!?」
「見よというのか」
「それを」
「そうだ。見るのだ」
彼がまた言うとだった。その時だった。
火刑台にだ。何かが舞い降りたのだった。それは。
白い衣に白い翼を持ち黄金色の髪を持つ姿だった。男か女かはわからない。
その者がだ。火刑台のところに舞い降りたのであった。
「まさかあれは」
「その」
「そんな筈がない!」
「そうだ、有り得ない!」
そこにいた誰もが、若い僧侶以外の者が必死に否定する。
「何故だ、何故舞い降りる」
「あの娘は異端だ」
「魔女だ」
「それなのにどうしてだ」
「舞い降りるというのだ」
「当然のことだ」
ここでまた言う若い僧侶だった。強くはっきりとした顔で言うのだった。
「これはだ」
「当然だと」
「そう言うのか」
「そうだ、あの方は魔女ではない」
彼が今言うのはこのことだった。
ページ上へ戻る