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ソードアート・オンライン ーEverlasting oathー

作者:ゆぅ駄狼
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Fourteen episode 化け物

 
前書き
「あ、あれカエルだ」


「カエルだな」


「カエル……」


「カエル無理……」


「キリト……」


「分かってるさ……」


「「カエル狩りじゃああああぁあぁぁあああ!!」」 

 
おいおい……
これはある意味ヤバイ……

俺達は既に黒鉄宮地下迷宮区の中間部辺りまで来ていた。
中間部に来るまでもそうなのだが……女の子が嫌うモンスターしかリスポーンしないのだ。
そして俺とキリトは女の子が嫌うモンスターをどっちが多く倒せるか勝負していた。


「おっしゃああああああ!! これで246体目じゃボケガァァアア!!」


「クッソ! ユウヤ早すぎんだろ! 神聖槍だとカエルどもが一撃じゃないか!」


そう、カエル。
俺達はスカベンジトードと言うカエルモンスターをひたすら狩り尽くしていた、
このカエル達は対して強くも無いのに集団で、しかもすぐにリスポーンするので俺達は困り果てていた。
これが俗に言う数の暴力と言う奴なのだろう。


「カエルカエルカエルカエル!!! もう勘弁してください!」


「俺はやっと200体目に入ったぞ……」


俺達が困り果てている中、愛する子供達は目をキラキラと輝かせていた。
その眼差しはテレビアニメの主人公を見る様な眼差しだった。
ユリエールは口を開けて唖然とし、ユウキとアスナは苦笑いしながら俺とキリトを少し距離を取って見ていた。
ユリエールが唖然となるのも仕方が無い。
何故ならスカベンジトード達は弱そうに見えるとは言っても一応60層クラスのモンスターだからだ。
俺とキリトは簡単に倒しているが軍の連中、ユリエールが戦えばカエルの数もあって五分五分の戦いになるからだ。


「おとーさんかっこいいー!」


「パパすごーい!」


「……なんだかすみません。 任せっぱなしで……」


子供達が俺達に声援を飛ばす中、ユリエールはユウキとアスナの方を向いて謝罪していた。
何故謝ったかと言うと、人に任せて自分だけが得する様な行為は"寄生"と言われる行為だからだ。
他のオンラインゲームでもこの行為は嫌われているのだ。
だからこそユリエールは謝ったのだ。


「あはは……気にしなくていいよ。 ユウヤは困ってる人は見過ごせない人だからね」


「そうですよ! キリト君のアレも病気見たいな物ですから!」


ユウキとアスナはユリエールの方を向きそう言った。
ユリエールは申し訳なさそうに頷くとユウヤ達の方を見てから右手で空中をスライドし、フレンドリストを表示させた。
そしてユリエールはフレンドリストに登録しているシンカーの名前を指でタッチした。
フレンドリストに登録しているプレイヤーは同じダンジョンに潜っている場合はフレンドリストでプレイヤーの名前を選択するとマップが表示され、現在地を確認することが出来るのだ。


「大分奥に来たけど……そろそろシンカーさんに会えるんじゃないかな?」


「シンカーはこの位置からずっと動いていません……多分安全エリアにいるんだと思います」


ユリエールはユウキの問いかけにマップでシンカーの居場所を指差すとそう答えた。
シンカーがいるのは安全エリアと言う場所だ。
安全エリアは全ての迷宮区に必ず存在するエリアでは無い。
安全エリアはその場にいる限り絶対にモンスターが攻撃してくる事は無いエリアだ。
因みにこれと似たもので各迷宮区に必ず存在するのが準安全エリアと言うエリアが存在する。
準安全エリアはモンスターが必ず攻撃して来ないと言うエリアではなく、稀にしか攻撃して来ないエリアだ。
攻撃してくる度合いはそのプレイヤーの隠蔽率にも関わってくるが。


「この安全エリアまで行けばシンカーに転移結晶を渡すことが出来ればすぐに戻ることができます」


ユリエールはシンカーがもう少しで助けることが出来ると思い、少し笑みを浮かべて言った。
笑みを浮かべているユリエールを横目に二人の男が息を切らしながら戻ってきた。


ーーーーゼェ……ゼェ…ゼェ……



「キリトぉ……ゼェゼェ……俺は361体倒したけど……お前何体だ……」


「ゼェ……ゲホッゲホ……ゼェ……336体……」


「え……と……本当にすみません……任せっぱなしで……」


俺とキリトは息を切らしながら、いや既に虫の息になりながら自分達のカエル狩り数の報告をし合っていた。
虫の息になっている俺達を見てユリエールは本当に申し訳なさそうにしていた。
高校生位の男達が今にも死にそうな声で話しながら戻ってきたら謝りたくなるものだ。

俺とキリトは少し時間を置き、息を整えた。


「いや、いいよ。 好きでやってるしな」


「それにアイテムがでるしな」


「へー……アイテムなんか出るんだ……ねぇねぇユウヤ! 見せて見せて!」


「何か良い物でも出てるの?」


俺達はニヤリと笑い、俺はキリト、キリトは俺をお互いに見ると目を輝かせた。


「「ああ!」」


俺とキリトはアイテムストレージを開き、その中に眠っている生肉の様なアイテムを取り出した。
そのアイテムを取り出すと手に握った瞬間、ねちねちと生々しい音を立てた。




☆!!デデエエエエエエェェェェェエエエエエエン!!☆




スカベンジトードの肉です。
足の部分だぜ?
これで頬を叩いて見ろよ?
ペチペチって良い音なるぜ?



俺とキリトがユウキとアスナの前にスカベンジトードの肉を出した。
その肉を見るとユウキは体全体を落書きの様に真っ白にし、アスナは全力で気持ち悪がっていた。
女性の敵は爬虫類、両生類、虫、日差し、宛てにならない美容雑誌と言ったところだろうか。


「さっきのカエルの肉!?」


「ああ!ゲテモノ程美味しいって言うからな!」


「おーい、ユウキー……お前真っ白になってるぞー」


俺がユウキに喋りかけるとユウキはようやく気がついたのかハッとし、俺の方を見た。
その中、キリトはアスナにカエルを調理してくれと言った。
だが無論、了承などしてもらえずにカエルの肉を掴むと思いっ切り遠くに投げた。

うおおおお!アスナお前!女性の中の勇者だわ!!

俺はアスナが素手で女性の敵を握り、投げると驚いた。
驚いている俺とは別にキリトは本気で食べたかったのか大声をあげて泣きわめいていた。
カエルの肉は着地と同時に結晶体となって消滅した。


「うあああああ!! な、何するんだよ!?」


「ふん!」


泣きわめいているキリトを横目にアスナは呆れたと言う声を出した。
それでもキリトは諦めなかった。
己の欲望、カエルを食すと言う欲望を満たすためにアイテムストレージを開き大量のカエルの肉を取り出した。
だがやはり、アスナに全て投げられてしまった。

ふふふ……こんなゲテモノでもユウキならS級の料理にしちゃうんだよな……

俺はユウキの方を見た。
するとユウキは目を涙でうるうるさせながら俺を見ていた。


「ユウヤはボクの選んだ食材よりカエルのお肉が良いんだよね……?」


「…………」


チュイン……チュインチュイン……


俺は無言でアイテムストレージを開いた。
そしてスカベンジトードの肉を選択した。




オブジェクト化
詳細
トレード
捨てる




全く、何を言っているのか




オブジェクト化
詳細
トレード
捨てる←




分からないでござる。

俺は無言でスカベンジトードの肉を捨てた。
そして目をうるうるしているユウキに笑顔を向けた。


「俺の方はカエルの肉なんかドロップしなかったよ」


「ユウヤお前! 300体以上倒して一個もドロップしないはずないだろ!」


「しませんでした。」


俺は真顔でキリトに答えた。
するとキリトはそ、そうかい……という顔をしてアスナに捨てられ、結晶体となった肉を見てガッカリしていた。


「……ふふっ……」


俺達のやり取りがおかしかったらしく、ユリエールは声を出して笑った。
ユリエールが声を出して笑ったのを見てセイとユイは笑顔になってユリエールを見ていた。


「「おねーちゃんわらったぁ!」」


「え……?」


「おねーちゃんここにきてはじめてわらった!」


セイとユイがユリエールが笑ったと言うとユリエールは驚いた顔をした。
だが、すぐにセイとユイに優しく微笑んだ。
その光景を見て俺達も笑顔になった。
セイとユイがもたらした空間は凄く暖かい。
そんな感じがした。


「そんじゃまぁ、行きますか!」









黒鉄宮 ーーーー地下迷宮区 最深部ーーーー





「しっかしこの迷宮区、奥まで長すぎだな……」


「そうだね、セイなんて眠っちゃってるよ」


セイはユウキの背中で眠っていた。
ユイも同じ様にアスナの背中で眠っていた。
奥までに来るまで無邪気にはしゃいでいたから疲れたのだろう。
本当に可愛い息子だ。と思いながらセイの頬をツンっと突ついた。
セイの頬を突くとセイは口を可愛くもごもごしていた。
俺は口をもごもごしているセイを見て笑ってしまった。

セイの頬を突きながら奥に進んでいると奥の方に光が見えた。


「キリト、あれって……」


「間違いない。 安全エリアだ」


俺とキリトはお互いを見て頷くと索敵スキルを発動させた。
索敵スキルで確認すると一人のプレイヤーが光の中でずっと立っていた。

プレイヤーは一人……
他のプレイヤーはいない……
モンスターの出現もないな。


「奥にプレイヤーが一人いる」


「シンカー……!?」


「お、おい!」


ユリエールは奥にいるのがシンカーだと確信するとキリトの声に耳を貸さずに走り出した。
俺達は頷き、すぐにユリエールを追った。




ーーーーハァッ……ハァッ……




走り近づいて行くと光は段々と大きくなり、一人の男性プレイヤーが見えた。
恐らくは彼がシンカーなのだろう。
ユリエールは男性プレイヤーを見ると笑顔になった。
余程シンカーの事を心配していたのか、目には少し涙が浮かんでいた。
そして男性プレイヤーもユリエールに気付き、叫んだ。





ーーーーユリエール!!!



「シンカー!」






そして幸福な瞬間はーーーー





ーーーーー来ちゃ駄目だぁぁああああ!!!










ーーーーー絶望の時間へと変わったーーーーー








俺達はユリエールがシンカーに会えた事が祝福の気持ちで一杯だった。
だが、シンカーの一言を聞いた事で俺達は危険という事に気付かされた。
いや、ユリエールが危険と言う事に気付かされた。
何故ならーーー




The Fatal Scythe




俺達の目ではしっかりとユリエールの走っている方向の右上に表示された文字が確認できた。
The Fatal Scythe 命に関わる大鎌。
そう、モンスターからの奇襲だ。
間違いなく標的は先頭を走っているユリエールだ。
何より、命に関わる大鎌と言うことはプレイヤーのHPに関わる情報だ。
間違いなく一撃でユリエールは消える。

モンスター…!?さっきは索敵スキルに引っかからなかったんだぞ!?


「駄目! ユリエールさん! こっちに戻って!!」


アスナも気付いたらしく、ユリエールに向かって叫んだ。
叫び声が聞こえないのか、ユリエールはひたすらシンカーの元に向かおうと走っていた。
今いるメンバーの中で一番速さに優れているキリトは俺とほぼ同時に気付いたこともあってユリエールを止めようと走り出していた。




ガキィィィイイイイイイン!!!!!



「くっ……」


「え……?」


キリトとユリエールの目の前には死神が持っている様な大きな鎌が突き刺さっていた。
間一髪でキリトは全力でユリエールの元へ辿り着き、愛剣《エリュシデータ》を地面に突き刺して自分が走って作り出した勢いを殺していた。

突き刺さった大鎌はゆっくりと空中へと上がって行った。
空中に上がると同時に俺達がいる通路の壁が綺麗な碧色へと変わった。
その壁の中を大鎌を持っていたモンスターが壁から壁へと移動していた。


「キリト!!」


「分かってる!!」


俺とキリトはすぐに壁に入って行ったモンスターを追いかけた。
モンスターの入って行った壁の前に立つがモンスターは出てこなかった。
何処に行ったのかと探していると後ろの壁からモンスターが出てきた。
後ろからモンスターが出てくるとモンスターが大鎌を振り下ろして来た。


「クソっ……!」


「壁なら何処からでも出てこれるみたいだな……!」


俺とキリトはすぐに体制を立て直し、次の攻撃に備えた。
ユウキとアスナもすぐに加勢しようとしていた。


「ユリエールさん、セイを見てて!」


「ユイちゃんもお願いします。 この子達を連れて安全エリアに退避してください!」


「は、はい!」


「おかーさん……」


「ママ……」


セイとユイは心配そうな顔をしていた。
心配そうな顔を見てユウキは笑顔でセイ達に向かってピースをした。


「大丈夫だってば! おかーさんに任せなさいっ!」


セイはユウキの声を聞くと頷いてユリエールとユイと一緒に安全エリアに退避した。
ユウキとアスナはユリエール達が安全エリアに退避したのを確認すると自身の愛剣、《リュクスシュエル》と《ランベントライト》を引き抜きユウヤ達と合流した。


「死……死神……?」


モンスターは既に壁から出て俺達の前にいた。
"死神"にしか見えなかった。
ボロボロのマントに骸骨の様な頭や腕。
そして持っている特徴的な大鎌。
間違いなく死神だった。

こいつは間違いなく強い……
俺のレベルは93……それなのにこいつのステータスが確認できない……
この死神は90層クラス……しかも95層並みの敵だ……!
俺の神聖槍ならまだこいつに対抗出来る……!
俺一人じゃ危険だけどユウキ達も危ない……!


「ユウキ!皆と一緒にここから脱出しろ!」


「でも……ユウヤは……?」


「俺は神聖槍があるからまだこいつとまともにやり合う事が出来る! 少しの間なら時間を稼ぐことが出来るからその内に逃げるんだ! キリト、皆を頼むぜ」


「頼むぜってお前……! こいつは俺の識別スキルでもステータスが一切分からなかった……こいつは間違いなく90層クラスのモンスターだ! お前もレベルが80代だから分かるはずだ! お前一人じゃ神聖槍があってもステータスの問題ですぐにやられるぞ!!」


「大丈夫だっつーの……俺もすぐにお前らの後を追うからよ……行くんだ!」


俺の言葉を聞くとユウキ達は安全エリアにいるセイ達の方を見た。


「ユリエールさん、シンカーさん! セイ達と一緒に転移結晶で離脱してください! ボク達はここでユウヤと一緒に戦います!」


「ですが……」


「行くんだ!!!」


キリトがそう言うとユリエール達は黙って頷き、転移結晶を取り出した。
その中、セイとユイは安全エリアにある"四角い物体"を見ていた。

ユウキ達はすぐにユウヤの元へ向かった。


「ユウヤは何時も一人で頑張るんだからボクが見てないと!」


「そうそう、ユウヤ君は知らない所で何時も頑張ってるもんね」


「全く、俺とお前は親友だろ。 たまには背中預けろって」


俺は唖然としていた。
俺が今までユウキ達に何をしてきたと言うのだろうか。
何を根拠に世界から消えるかもしれないと言うリスクを抱えてまでついて来てくれると言うのだろう。
だけど俺は三人の言葉を聞いて笑ってしまった。


「馬鹿野郎が……」


俺がそう言うとユウキ達は俺を見て笑っていた。
これが絆と言う物だろう。
本当にーーー





ーーーーーありがとう







「行くぞぉぉぉおおおお!!」


俺は神聖槍《グングニール》を握りしめ、光の渦を纏いながら死神に突っ込んで行った。
ユウキ達も後を追う様に愛剣を握りしめて死神に向かって行った。

だが現実は甘くはなかった。
精神論ではどうにも出来なかったのだ。
突っ込んで来る俺達に死神が大鎌を振り下ろして来た。


「身を固めろ!!」


俺がそう言うと俺を中心にして全員で剣を重ねて守りを固めた。
剣を重ねることによってパーティの場合は薄いバリアの様な物を張ることができる。
薄いと言っても武器の攻撃力にも関わってくる為、俺達の守りは固くなっているはずだ。



ガキィィィイイイイイイン!!!!


ギギ……ギギギギギギィィィイイ!!!



死神が鎌を振り下ろすと凄まじい勢いでガードが削られて行った。
武器が強くてもステータスが90層のモンスターと戦う為には安全マージンも取っていないから全然余裕がないのだ。
むしろ俺達が今、この死神と戦うこと自体が自殺行為だ。


「があああぁああ?!!」


「うああああああ!」


「ぐっっっ!?」


「きゃああああああ!!」


ガードが削られると俺達は吹き飛んだ。
壁や地面に叩き付けられた衝撃もあり、俺とキリトはHPが黄色になる手前、ユウキとアスナが黄色になっていた。


「クソ……」


叩き付けられた衝撃でノックバックが発生して立ち上がることが出来なかった。
それは俺だけではなかった。
キリト達も今までにない激しいノックバックが発生して意識が飛びそうになり、気を保つのが精一杯だった。

だが、俺の目に映ったのは最悪の光景だった。


「ユウキ……?」


ユウキが死神の前で気を"失って"いたのだ。
モンスターと言うのはAIで出来ている。
だからモンスターは自身に近いプレイヤーを狙う。
今の標的は間違いなくユウキだ。
死神は大きな鎌を振り上げた。










ーーーーまたか……またユウキを傷つける気かよ……









死神はユウキに狙いを定め、振り下ろそうとした。

その瞬間、碧い悪魔と戦った時の記憶が蘇ってきた。
ユウキが碧い悪魔に掴まれ、握り潰されそうになった時の記憶。

自分の中から何かが込み上げて来た。
自分でも分かる。
自分自身の中から込み上げて来てる物は危険な気がする。
あの時とは違って少女を守りたいという気持ちだけじゃない。
冷たく、真っ黒で危険な物。
それが俺を支配しようとしている。

俺はユウキに振り下ろそうとしている死神を見た。
見ていると段々と頭痛の様な物が起き、死神を見ている目が重くなって行く気がした。














ーーーーーユウキを






ーーーーーユウキを傷付けたら殺す













冷たく、黒い物が俺を支配して行った。
支配されると同時に自分が誰なのか分からなくなる程の激しい頭痛の様な物にも襲われた。



ジジ……ジジジジジ……



セイ達の時の様に大きくは無いがノイズの様な物が走り出した。


「ユウヤ……?」


キリトは突然立ち上がったユウヤに声をかけた。
ユウヤが一瞬キリトの方を見たが明らかに様子が変だった。
ユウヤの目は虚ろになり、光の渦がノイズを走らせ、光が段々と黒へと変化して行ってる様にも見えた。
ユウヤがキリトを見た一瞬だけキリトはユウヤに恐怖を覚えていた。







ーーーーーユ……キ……






ーーーーーオれが守ンないと……






ーーーーー殺さなイと






ーーーーーこいツを殺さナイと







光の勇者と言われていた男の面影は何処にもなかった。
そこにいたのは強大な殺意を身に纏った"化け物"だった。










ーーーーー殺シてやルーーーーー









ガキィィィイイイイイイイイイイイン!!!!




ユウキに振り下ろされた大鎌はユウキに当たらなかった。
何故なら"化け物"がノイズのかかった神聖槍で大鎌を弾き返していたのだ。
"化け物"は大鎌を弾き返すと虚ろな目で死神を見ていた。
死神は大鎌を弾き返した"化け物"を標的に変え、すぐに大鎌を"化け物"に振り下ろした。
"化け物"はそれを避けようとはしなかった。
何故なら避けたりすれば気を失っているユウキに大鎌が当たる可能性があるからだ。
大鎌は"化け物"の左腕に刃が通り、左腕を吹き飛ばした。
"化け物"の左腕は結晶体となり消滅し、ステータスに状態異常として左腕欠損マークがついた。
既に"化け物"のHPは赤の危険ラインに入っていた。


「ユウヤ! お前何やってんだよ!! 早く逃げろ!!」


キリトがそう言うと"化け物"は横顔だけを見せる様に顔をキリトの方に向けた。


「は……早く逃げろ……って………」


キリトは"化け物"を見て再び恐怖を覚えていた。
"化け物"がキリトに向けていた眼はまるで"邪魔でもしたらお前も殺す"と告げている様だった。
その眼を見てキリトは息を飲んでいた。
だがここで止めなければ親友が死神に殺されてしまう。
それだけは絶対に阻止したかった。
せめて自分が前に出て、このノックバックから回復して時間を稼げばユウキと一緒に後ろに下がれるかもしれないと言う考えが思いつき、キリトは《エリュシデータ》を力を込めて握りしめた。


「ユウヤ……「大丈夫」」


キリトは後ろから声が聞こえた気がした。





ジジジ……ジジジジジジジ……ジジッ……










ーーーーーユウキは俺ガ守ル






ーーーーー大丈夫だよ






ーーーーー……何ガ……?






声が聞こえた。
その声は大丈夫だと言ってきた。
何が大丈夫だと言うのだろうか。
俺が守らないとユウキが殺されてしまう。






ーーーーー大丈夫だから安心して







ーーーーーその槍は危ないから……






ーーーーーおまエ……






この声は……

この声は聞いた事があった。
何回も聞いた事がある。
可愛いらしい子供の声。
そう、俺とユウキの子供、セイの声だ。
その声を聞くと、頭痛の様な物が徐々に無くなって行き、自分の中から支配していた物が出て行った様な気がした。











ーーーーー僕に任せてよ。 おとーさんーーーーー














 
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