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ソードアート・オンライン ーEverlasting oathー

作者:ゆぅ駄狼
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Twelve episode 祈り

第1層 ーーーー始まりの街 教会ーーーー







俺達は不可解な現象の後、子供達と一緒にいたサーシャと言う女性プレイヤーが始まりの街で一般の子供達を保護している人だと知った。
サーシャが取り敢えず子供達を保護している教会に行こうと言った。
セイとユイも安全な場所を移動させた方がいいと思い、俺達はセイとユイを抱き抱えたまま、サーシャと一緒に子供達を保護している教会に来ていた。
教会に来てみると大人数の子供達が教会の中にいた。


「すげーな…こんなに子供のプレイヤーがいるなんて…」


今は昼食の時間らしく、子供達は仲良くご飯を食べていたり、食べ物を交換したりなどして皆笑顔で食べていた。
子供達は昼食が一日の楽しみなのか、ワイワイ騒ぎながらサーシャの作ったパンやシチューなどにがっついていた。
デスゲームとは思えないほど仲良く、騒がしく食べている光景を俺達はずっと見ていた。


「デスゲームとは思えない程に微笑ましい光景だな」


「皆凄いな…」


「そうね…」


「子供は元気なのが一番だけどね!」


俺達が騒いでいる子供達を見て話しているとサーシャが机にティーカップを四つ置き、ミルクティーの様な物を注いでいた。
そしてティーカップに注ぎ終わると俺達に椅子に座る様にいった。


「いつもこんな感じなんですよ。こちらに腰をかけて休んでください」



俺達はサーシャに誘導されるままに椅子に座った。
セイとユイは座った時に目覚めたらしく、俺とキリトの腕の中でもぞもぞしていた。


「起きたか、セイ?」


「ユイ、大丈夫か?」


俺とキリトがセイとユイに具合はどうかと聞いた。
するとセイとユイは元気良く首を縦に振った。

取り敢えず大丈夫そうだな…
でも、いつまたセイとユイの状態が悪くなるか分からないからな…
一応、気を付けておこうか
でも此処に来て更におかしい事があるな…

俺はキリトにおかしい点があることを伝えようとした。


「なぁキリト、セイとユイを周りの子供達に比べて変わった所が無いか?」


「特に変わった様子はな………」


キリトは俺が言っている事に気付いたのか、会話が途中で切れた。
そう、セイとユイはバグったステータス以外に周りの子供達と比べて明らかにおかしい点があった。
このゲーム、ソードアート・オンラインをプレイしているプレイヤーなら必ずついている物だ。


「そうだ、子供達は頭の上にちゃんと本来ある"カーソル"が付いているが、セイとユイには付いて無いよな?」


「ああ…」


本来ある緑ののカーソルがセイとユイには付いていなかったのだ。
プレイヤー、モンスターなど動いている物には必ずカーソルが付いている。
カーソルはレッドプレイヤー、オレンジプレイヤー、グリーンプレイヤーを示す他に、モンスターの敵意があるか無いか示す重要な物だ。

カーソルすらセイとユイに付いていないなんて…まるで"破壊不能オブジェクト"じゃ無いか
こんなバグをゲームマスターの茅場が見落とすなんてな…

俺が考えているとサーシャは口を開き出した。


「セイ君とユイちゃんの具合は大丈夫ですか?」


サーシャがセイとユイの具合を俺達に聞いていたので俺達はセイとユイの方を見た。
セイとユイは仲良く教会内を走り回っていた。

そう言えばセイとユイって友達だったんだよな…?

俺はずっとセイとユイが気を失う前に言っていた言葉が気になっていた。




ーーーーずっとくらいところにふたりでいた…




あの言葉は一体どういう事なんだ?
暗い所って事は洞窟の中か?
レッドプレイヤーに襲われてずっと洞窟の中に監禁されていたのか…?

俺はそう思うと元気に走り回っているセイとユイを心配した目で見ていた。
俺が二人を見ているとキリトが二人を見て今の状態をサーシャに伝えた。


「目が覚めるとあんな感じなんですが…」


「今までにも突然状態がおかしくなったりとかがあったんですか?」


サーシャがそう言うとそれに対してユウキとアスナがサーシャの疑問に答えた。


「それが…分からないんだ…セイはボクとユウヤが一緒に住んでいる家の前の浜辺に倒れていて…」


「ユイちゃんも22層の森の中で迷子になっていて…私とキリト君が見つけると突然倒れて…それに記憶を失っているみたいで…」


ユウキとアスナがそう言うとサーシャはまぁ…と言い、悲しい顔をしてセイとユイを見ていた。
他人から聞いても気の毒な話だろう。
子供が一人で生き抜いてきて、それに迷子になって浜辺や森の中で倒れ、ましてや記憶が無いなんて話を聞かされたらグリーンプレイヤーなら誰でも同じ反応をするだろう。


「ステータスもバグってるらしくてゲームマスターが幼い子供達を戦闘に出さない様に元々こんなステータスになっているのかと思ったんですけど…」


「なるほど…そう言う事なら…ケイン!ちょっと来てくれる?」


サーシャが先程一緒にいた子供達の中のケインと言う男の子を呼ぶとケインと言う子は元気良く返事をしてこちらに来た。


「ケイン?ちょっとステータスを見せてくれるかしら?」


「?…分かったよ先生!」


ケインは右手で空中を上から下にスライドし、スライドしたことによって現れたウィンドウからステータスを選択し、サーシャにステータスを確認させた。


「ステータスの表示の仕方は私達とは変わらないですね…攻撃や防御などのステータスもちゃんとありますし、特にステータスに変わった所はありませんね…」


サーシャが俺達にステータスを一応確認する様に言って来たので俺達は表示されているステータスを確認したがサーシャの言った通り特に変わった様子は無く、俺達とステータスの表示が全く同じだった。


「変わった所は無いな…ステータスが変わった以外にもこの子達の知り合いがいるんじゃ無いかと此処に来たんですが…子供を探している大人とかに心当たりはあったりしますか?」


俺がサーシャに確認するとサーシャは少し考え、口を開いた。


「多分…この街にはいないと思います。此処にいる子供達はデスゲームに変わったと言われた時にこの始まりの街に残っていて…子供達は心に深い傷を負っていました…私は子供達を放って置けなく、子供達と一緒に家族や知り合いの人達がいないか探したんですが…親と一緒にゲームをプレイしていた子供達は数名しかいなく、一人でプレイしていた子供達はこうやって私が教会で保護しているんです。一応、毎日困っている子供がいないか街を見て回っているんですが…セイ君やユイちゃんの様な子は見たことがないありません…」


やっぱりセイとユイは一人でデスゲームを生き抜いて来たのか…
そう思うと本当にソードアート・オンラインにイラついてくるな
ゲームマスターは…茅場は俺達をなんだと思っていやがるんだ…!

俺はそう思いながらサーシャに礼を言った。


「有力…とは流石に言えませんが情報有り難うございます。サーシャさんの様な方がいるだけで沢山の子供達がこうやって笑顔でデスゲームを生きて行けるんですね…」


「いえ…私は結局、この子達を無事に親御さんの所へ返せていませんし…」


「もっと誇っても良い事だと思うよ。その優しさが皆を、子供達を笑顔に出来てるんだから。ボクも当たり前の優しさをユウヤに貰って毎日笑顔でいられるんだからね!だからサーシャさんはもっとその優しさを誇っていいと思うよ!」


毎回毎回ユウキはサラッと小っ恥ずかしい事を言うな…
全く、可愛い奴だな…

俺はそう思いながらユウキの頭に手を乗せた。
その後もセイとユイについて色々な情報が無いかサーシャに聞いたが何も分からないと言った。
だが何か分かったら俺達に連絡をすると約束してくれた。


「じゃあ俺達はこの位でもう帰りますね」


「はい、セイ君やユイちゃんについて何か分かったらすぐに連絡しますね」


「取り敢えずサーシャさんともフレンド登録しといた方がいいかもな」


「そうだね、そっちの方がすぐに連絡取れていいかもしれないね」


「ボクは大賛成だよー!」


フレンド登録しといた方がすぐに連絡が取れると言うことで俺達とサーシャはフレンド登録を行った。
そして俺達は教会を後にしようとした。



ドン…ドンドン!



突然誰かがやって来たらしく、教会の玄関が騒がしかった。
俺達とサーシャは玄関の方へ向かった。
玄関に行き、教会の扉を開けるとそこにいたのは身長が高い女性プレイヤーだった、
その女性プレイヤーは長いグレーの髪が目立ち、アインクラッド解放軍の制服を着ていた。
先程追い返した軍の連中が報告し、仇を取りにやって来たと言う感じだろう。


「アインクラッド解放軍、ユリエールと申します」


「軍のプレイヤーが此処に来たって事は俺達の事を聞いたんだよな?…さっきの連中の事で抗議しに来たってか?」


俺が軍のユリエールという女性プレイヤーにそう言うとユリエールは一瞬驚いた様な顔をし、慌てながら俺達の方を見た。
抗議しに来たと言うのに慌てる必要があるのだろうか…


「いえ、抗議だなんて…その逆です。良くやってくれたとお礼を言いたい位ですよ!」


「「「「?」」」」


先程の軍の事で抗議をしに来たと思ったらユリエールという女性プレイヤーはその逆でお礼を言いたいと言ってきた。

お礼?俺達は軍の行動にイラついて軍の奴らに攻撃したんだぞ?
なのになんでお礼なんか…


「お礼を言いに此処まで来たって言うのか?」


「はい、それもあるのですが…今日は貴方達に頼みがあって来たんです」






ーーーーー教会 命の間ーーーーー





俺達はユリエールの話を聞くことにし、教会の部屋を借りて皆で話していた。
この部屋はそんなに広く無いが今いる人数で話し合いをするには十分な広さだった。
命の間と言われるこの部屋は神に祈りを捧げる部屋という目的の為に作られたらしい。
だが、勿論ゲームなのでそんな事をするプレイヤーは多分一人もいないだろう。
今は使われて無い部屋なのでこうやって話し合いをする為の部屋にしているとサーシャは言った。

俺達は部屋にはテーブルと椅子があったので俺達はそれぞれの椅子に座った。
早速、俺は本題を切り出した。


「んで、頼みってのはなんだ?」


俺がユリエールに要件を聞くとユリエールは一旦目を閉じ、一息ついて目を開けるとこの場にいる皆に要件を伝えた。


「元々私達…いえ、アインクラッド解放軍リーダーのシンカーはこの様な独善的な組織を作ろうとしていた訳では無かったんです。ただ情報や食料をなるべく多くのプレイヤーで均等分かち合おうとしただけで…」


「だけど軍は大きくなり過ぎた…ってことか」


キリトが呟くとユリエールは無言で頷いた。
元々軍は解放軍と言われる程の大規模なギルドでは無かった。
軍のリーダー、シンカーという男は困っているプレイヤー達の為にボランティア団体の様なギルドを作っていて、シンカーという男がプレイヤー達を助けている姿に感動し、ギルド入隊希望者が増え、大人数になったことで最前線の攻略組に入って多くのプレイヤーを出来るだけ早く救い出したいという事で大規模ギルド、アインクラッド解放軍になったのだ。
その解放軍の中では最近になって内部で仲間同士が歪み合っているらしいが…


「はい、内部分裂が続く中、対等して来たのがキバオウという男です」


モヤっとボールテメェかあああアアアアア!!!
本当に面倒なことしてくれてんじゃねえぞゴルア!!
一旦坊主にした方がええんちゃうんか!?


ガタッ


俺は椅子から立ち上がった。


「ちょっとボール狩りしてくるわ」


「落ち着けって」


俺は椅子に座った。
ユリエールは俺が椅子に座るのを確認すると話を続けた。


「キバオウ一派は権力を強め、効率の良い狩場を独占したり…調子に乗って徴税と称した恐喝まがいの行為すら始めたのです。ですがゲーム攻略を蔑ろにするキバオウを批判する声が大きくなってキバオウは配下の中で最もハイレベルなプレイヤーを最前線に送り出したんです」


ハイレベルなプレイヤーを送りこんだって…
グリムアイズの時の…?


「「コーバッツか?」」


俺とキリトが聞くとユリエールは頷いた。


「はい。ですが貴方達が知っている様にコーバッツの部隊は貴方達が救ってくれたお陰で部隊の全員は死に至ことは無かったですがリーダーのコーバッツはボス戦で戦死してしまいました…その最悪な結果にキバオウは強く糾弾され、もう少しの所で彼をギルドから追放出来る所まで行ったのですが…追い詰められたキバオウはシンカーを罠に掛けるという強行策に出ました…」


ユリエールはそこまで言うと途中で話を区切ってしまった。
彼女の顔を見ると悲しげな表情をして唇を噛み締めていた。


「シンカーを……高レベルなダンジョン奥深くに置き去りしたんです……」


「「「「な!?」」」」


キバオウはシンカーをダンジョン奥深くに置き去りにしたと言った。
安全マージンを取っていれば今までのダンジョンなら簡単に抜け出せるだろうがシンカーを一人で置き去りにし、出れなくなる様なダンジョンという事はシンカーのレベルが低い、もしくは何か小細工をしたのだろう。

流石に武器とかは持っているよな…?


「転移結晶は!?」


アスナがそう言うとユリエールは俯いたまま黙ってしまった。

嫌な予感がするな…
転移結晶も無し、しかも安全マージンを取ってないとしていたら高いダンジョンに置き去りにされて転移結晶無しじゃとても無事でいるとは保証出来ないな


「まさか手ぶらで行ったって言うの!?」


ユウキがユリエールに聞くとユリエールは悲しい表情だった。
今にも涙が溢れ出しそうな位に悲しげな表情で唇を噛み締め、ユウキに答える為に口を開いた。


「彼は…良い人過ぎた…キバオウの丸腰で話し合おうという言葉を信じて…三日前の事です」


「三日前……それでシンカーという男は…?」


ユリエールは目に涙を浮かべながら問いに答えた。

なんでまた…悲しんでる人がいるんだよ
泣かないといけないMMORPGなんて聞いたことがないぞ…!

俺は拳に力を入れた。


「おとーさん…?」


俺がキレかけている事に気付いたセイが俺の顔を見てきた。
セイの顔を見ていると何故だか怒りの感情が収まっていく気がした。
心が休まる様な、暖まるような感じがした。
俺はセイを心配させない様にセイを抱っこすると自分の膝の上に座らせた。


「とーちゃんなら心配ないぞ?」


「うん!」



セイの笑顔を見て俺も笑顔を零しながらユリエールの話へと戻っていった。
ユリエールは声を震えさせながら話していた。


「シンカーは武器も持っていない為、身動きを取れないらしくて…全て…全ては副官である私の責任なんです…ですが…とても私のレベルでは突破出来ませんし……キバオウが睨みを利かせる中、軍の助力は宛になりません…」


ユリエールは声を震わせながら言うと顔を上げ俺達の方を見た。


「そんな所に恐ろしく強い四人組が街に現れたという話を聞きつけ、こうしてお願いしに来たんです!」


ユリエールは言い終わると突然立ち上がった。
そして俺達の方を見ると頭を下げ始めた。
軍の副官が頭を下げるなんて滅多に無いことだった。


「ユウヤさん、キリトさん、ユウキさん、アスナさん、どうか私と一緒にシンカーを救出してくれませんか…!」


俺とユウキは別にいいだろうけど…

俺はそう思いユウキの方を見た。
ユウキの方を見ると俺の視線に気付いたらしく、この話には賛成という意味をこめて可愛い笑顔でウインクして来た。

うん。可愛いね。
……じゃなくて!!俺とユウキが良くても裏がありそうな話に敏感なキリトとアスナはすぐには納得しないだろうな…
さっきの軍の奴らの敵討ちっていう考えも出来るしな。

俺がそう思いながらキリトとアスナの方を見ていた。
するとアスナが口を開き始めた。


「私達に出来ることなら協力して上げたい…と思います…でも此方で貴方の話の裏付けをしないと…」


アスナがユリエールにそう言うとユリエールはシンカーを救出出来ないかもしれないという気持ちが抑えられ無くなり、涙を流しながらアスナの方を見た。
俺にはその目が嘘をついている様には見えなかった。


「無理なお願いだって事は私にも分かってるんです…!……でも…彼が今、どうしているかと思うと……もう…おかしくなりそうで…」


この人はよっぽどシンカーっていう男の人が好きなんだな
少なくとも俺にはこの人が嘘ついている様には見えない
もし俺が大切な人が危険な目にあって自分一人じゃどうにもならない時だとしたら俺は土下座でもなんでもするだろう
この人はちゃんとそれなりの覚悟がある

俺はキリトとアスナを説得しようとした。


「なぁ…良いんじゃないか?助けてや「「大丈夫だよ」」」


俺がキリトとアスナを説得しようとすると突然セイとユイが大丈夫だと言い出した。
何が大丈夫だと言うのだろうか。
今の状況でキッパリと大丈夫と言える根拠は一切ない筈だった。
俺達はセイとユイが喋り出した事に驚き、セイとユイの方を見た。


「おとーさん、おかーさん」


「パパ、ママ」


「「そのひとうそついてないよ」」


セイとユイは少し微笑みながら俺達の方を見てそう言った。
何を根拠に嘘を言ってないと言えるのかが俺達には不思議だった。
まるで人の心を"見ている"かの様な口振りだ。
俺達はセイとユイが言った言葉に驚く事しかできなかった。


「セイ、嘘をついてないって分かるの…?」


「ユイちゃん、そんな事が分かるの…?」


ユウキとアスナが聞くとセイとユイは困った顔をしてユウキとアスナの問いに答えた。


「うん…なんとなくだけど……わかる…」


「うまくいえないけど…そんなきがする…」


セイとユイの目は悪戯で言っているような目では無かった。
至って真剣で、尚且つ皆を信じさせる様な眼差しでユウキとアスナを見た。
もし、聞いてるのが俺達ではなく一般の、赤の他人のプレイヤーだったらセイとユイが言っても信じてもらえないだろう。
冗談と思われこの場が終わってしまっていただろう。
だが、此処にいる皆はセイとユイの言葉と目を見て疑うという選択肢が無くなり、自然と信じるという事しか考えれなくなった。

その言葉を聞いていたキリトは最初は驚いていたが笑みを零してユイの頭に手をポンっと乗せた。


「ははは、疑って後悔するよりは信じて後悔しようぜ」


俺もキリトに釣られて笑みを零し、セイを抱きかかえた。


「キリトの言う通りだよ。信じて後悔した方が後味が悪くないだろ?」


「ボクはユウヤに大賛成だよ!」


俺とユウキがそう言うとアスナは困った様な顔をしたが、キリトが笑顔でアスナを見ると決意したのか俺達の方を見て言った。


「本当に…貴方達はお人好しなんだから…微力ながらお手伝いしますよユリエールさん」


俺達はただ単に馬鹿なお人好しなのかもしれない。
だけど、困ってる人を助けない糞みたいな野郎よりは馬鹿でお人好しの方が全然良かった。


「大事な人を助けたいって気持ちは俺にも全然分かるしな」


そう言って俺はセイを膝に乗せたままユウキを抱き寄せた。
するとユウキは顔を真っ赤にして何か言っていた。


「むぅ…恥ずかしいよ…」


「おかーさんかおがまっかっかー!」


俺とユウキ、セイのやり取りを見てキリト達は呆れていたが俺は気にしなかった。
その中、ユリエールは俺達に涙を流しながら礼を言っていた。


「本当に……ありがとうございます…」


「ちょっとセイは留守番しててな」


「ユイも大人しく待っててくれな?」


俺とキリトが留守番をしていてくれとセイとユイに言った。
セイとユイは留守番するのが嫌らしく、嫌という顔で俺とキリトに抱きついて来た。


「やだ!ぼくもおとーさんたちについてく!」


「ユイもついてく!」


はぅぅ…!これが愛する我が子のわがままというものか!?
ユウキの猫耳に負けず劣らず可愛いじゃねえかこんちきしょう!!
お持ち帰りじゃ!お持ち帰りじゃあああ!!

俺が悶絶しているとキリトがセイとユイを見て思った事を言っていた。


「これが反抗期か…」


「馬鹿な事言わないの!ユイちゃん、パパとママ達が行く所は危ないから…」


「セイも大人しく待っててね?」


「いや、俺はセイがどうしてもと言うならとーちゃんの勇姿を見せないまでもないg…「ユ・ウ・ヤぁ?」」


俺の最愛のユウキが可愛い笑顔かつ、人を殺しそうな殺気で俺を見てきた。

あ…まただ…目が笑ってない…


「セイ、大人しく待ってなさい」


ごめんよおおおおお!!
とーちゃんはおかーさんに勝てないわああ!!

俺がまた悶絶するとセイが体に抱き付いて来た。


「ぜったいやーだ!」


ああ…もうこれ絶対に言うこと聞かないな…ぜったいやーだ!だな…

キリト達も同じ感じで手こずってるらしかった。
全国のお父さん、お母さん苦労してるなと本気で思った俺がいた。


「俺達が付いてるし、万が一の事があっても転移結晶があるから大丈夫だろ」


「そうだな…いざと言う時はユウヤが盾になってくれる」


「ああ!!…ってふざけんなてめぇ!!」


「もう…しょうがないわね…ユイちゃん、絶対にママ達の前に出て来たら駄目だよ?」


「全く…セイはユウヤに似ちゃったのかなぁ…連れて行ってあげるけど絶対におかーさん達の前に出たら、メ!っだよ?」


「「うん!」」


セイとユイは元気良く返事をした。
俺達はその光景を見て何気にホッコリとしていた。

ああ…これが親バカかぁ…
案外悪くない…


「今日はもう遅いから今日はゆっくり休んで明日救出に行こう。シンカーさんには悪いけどちゃんと体は休めた方がいいし、疲れていたら危険な状態になった時に上手く対応出来なくなるかもしれない。いいだろ、ユリエールさん?」


キリトがユリエールに聞くと無言で頷いた。
外は暗くなり始めていて、俺達のいる部屋も暗くなっていた。
シンカー救出には明日の朝、早い時間に行くことになったので俺達は解散し、教会のそれぞれの部屋に入っていった。
何故教会で休むかというと、サーシャが俺達に休むなら空いてる部屋が幾つかあるからその部屋を使ってくれと言ったからだ。







ーーーーー教会 ユウヤ、ユウキ、セイの部屋ーーーーーー







時刻は既に夜中になって皆は寝静まっていた。



ガサガサ…ガサガサ……



ん…?
ユウキ…こんな夜中に何処いくんだ…?


俺はかけてあった毛布が動くと目が覚めた。
ユウキはベッドから出ると部屋の扉を開け、外に行ってしまった。


一応…ユウキになんかあったら嫌だしな…眠いけど追いかけて見るか…


俺はセイを起こさない様にそっとベッドから出てユウキを追いかけた。


ユウキを追いかけていると暗過ぎてユウキを見失ってしまった。


あれ…ユウキ何処行った…?


俺がユウキを見失って探し回っていると一つだけ扉が開いている場所があった。
聖堂に出る扉だった。


此処にいるのか…?


中に入ると一人の女の子が窓から差す月の光に照らされながら祈りを捧げていた。
手を組みながら何かを言っていた。
その姿はとても美しく、何処か悲しい顔をしている様な気がした。






ーーーーー神様、どうかボクを……まだユウヤとセイと一緒に居させてください




ーーーーー神様、ボクをまだーーーないでください…







ユウキか…?

祈りを捧げているのはユウキだった。
こんな夜中に何を祈っていたのだろうか。
俺はユウキに近づき、声をかけた。


「ユウキ、何やってんだお前」


「ふぇ!?」


ユウキは俺の声を聞き、驚くと可愛い声を出した。

睡眠時間を削ってでも祈りたかったのか?

俺はそう思っているとユウキは落ち着き、俺に話しかけて来た。


「どうしたのユウヤ?」


「ん、ああ、いや…俺はユウキが夜中に部屋から出ていくのを見て追いかけて来ただけだよ」


「そうなんだ…」


「何を祈ってたんだ?」


「ボク達家族がずっと一緒にいられる様に神様にお願いしたんだよ…」


「……なぁ…もしセイが俺達から離れなきゃ行けない状況になったらどうする…?」


俺はずっと思っていた。
セイの事を知ろうとするだけでセイが遠くにいく様な気がして…
俺達が三人一緒にずっとは居られないのではないかと。


「…ボクはそんな事は考えないよ。きっとボク達はずっと一緒にいられる。もしセイが離れるような事になっても、セイとボクの命が危険に晒されてもユウヤがそれを阻止してセイとボクを守ってくれるもん…だからボクはそんな事は考えないし、考えれない。それに神様はそんな酷い事はしてこないって信じてる」






そしてユウキは俺の方を向いて手を組み、目を閉じ、口を開いた。
月明かりに照らされているユウキは何処か悲しそうにしている。
ユウキは一人で誰にも言えない苦しみを背負っているんじゃないだろうか。






一人の少女は月に照らされながらも何処か悲し気にそっと呟いた。









ーーーーーー神様は私達に、耐えることの出来ない苦しみはお与えにならないーーーーーー









 
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