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魔界転生(幕末編)

作者:焼肉定食
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第9話 京へ

武市は容堂の抜いた刃先を臆することなく見つめていた・
「拙者は容堂公へお願いに参った次第で、切りあうつもりはございませぬが」
「貴様、迷って出たか。今一度、地獄に叩き落としてくれる」
刀を振りかざし武市に襲いかかった。が、武市の袖から黒い鞭のようなものが現れた。
と同時にその鞭のようなものが容堂の首を手足をまるで意志があるかのように巻きつき縛りあげて言った。
「殿!!」
象二郎が立ち上がるのが速いか武市は容堂の元へ走り出すと刀を容堂の首へあてた。
「動くな、象二郎」
武市は象二郎へ怒鳴った。
「やれやれ、容堂公。拙者の望みは簡単なことですのに」
再び武市は微笑んだ。
「余を殺してみろ。土佐藩全員を敵に回すことになるぞ」
容堂は武市をにらみつけた。
「ハハハハハ、お戯れを。ですが、我らにしてみたら土佐藩などいっぺんに壊滅させてみせますぞ。手始めにこの城を落としてみせましょうか?」
武市はクククと小さく笑った。
「と、殿、ここは引いてくだされ。こやつらは我らが思っている程容易ではない化け物です」
象二郎もまた歯ぎしりをしたくなるほどの怒りを覚えた。
「おいおい、象二郎。化け物とは聞きづてならぬな」
武市は大口を開けて狂笑した。
「さて、容堂公。我らの望みというのは、我らも象二郎と同じように特使として全国に派遣するというお達し書を戴きたいのです」
「ば、馬鹿な。そんなことができると思っているのか」
容堂は武市の願いを一笑にふせた。
「ほぉ、できませぬか?」
「出来ぬ」
「ですが、容堂公。ものは考えようでございますぞ」
武市は刀をおさめた。
「我らはもはや死人。死人ゆえわれらになにか起ころうとも土佐藩には預かりしらぬことになりましょう。ですが、諸藩の動向を簡単にしりえましょう」
武市はにやにやしながら容堂を見下ろしながらいった。
「と、殿、今は武市の言うとおりにいたしましょう」
象二郎は深々と土下座をし容堂に訴えた。
「ぐ、ぐぬぬぬぬ。相わかった。お前の言うとおりにしよう」
「賢明なご判断ですな」
武市は鞭のようなものを手も使わずほどき、再び袖に仕舞い込んだ。
容堂は武市へお達し書を2通書いて渡した。
「ありがたき幸せでございます」
武市は深々と土下座をし象二郎と容堂を後に部屋を出て行こうとした。
「あっ、言い忘れましたが我らを亡き者にしようとしても無駄ですぞ。その分、屍が増えるだけと覚悟いたしませ」
武市は笑いながら出て行った。

武市は意気揚々と城をでて再び以蔵が待つ後藤邸へと戻ってきた。
「以蔵、行くぞ」
武市は以蔵と共に後藤邸を後にした。
「武市先生、どこに行くのですか?」
以蔵は武市の後を歩いて問いかけた。
「以蔵、お前は再び京に行け」
武市は後ろを振り返ることなく答えた。
「京へ?ですが、簡単にはいけないぜよ。しかも、何故再びあの京に?」
「フフフフ。以蔵、再び京を血に染めてこい」
武市の笑い声はまさに悪意あるものだった。
「また京を血に染めていいかよ?」
以蔵もまたニヤリと笑った。
「暴れまわれ、以蔵。我らに足かせはない。再び、京を恐怖のどん底に沈めて来い」
武市は狂笑した。そして、容堂から受けた文書を渡した。
「これは?」
「容堂から受けた命令書よ」
「ってことは?」
以蔵もまた狂笑したい気分だった。
「我らの行動を容認したことに決まっているだろうが」
武市はにやりと笑った。
「はははははは、あはははははははは」
ついに以蔵も狂ったように笑い始めた。
「行け!!以蔵、行って血みどろの歴史を築いてこい」
以蔵は武市の言葉に大きく頷いた。
「おぉ、忘れるとこだった。これをお前に渡そう」
武市は以蔵に一つの紙包みをわたした。
「これは?」
以蔵はその包みを見て問いかけた。
「これを誰に渡すかはお前に任せる。だが、見間違えるなよ」
「わかりました。で、先生も京に向かうんですか?」
「いや、私は長州へいく」
武市は以蔵を置いていくように闇に消えていった。

武市が去った後容堂と象二郎の間には長い沈黙が支配した。が、その沈黙を破ったのは容堂だった。
「象二郎」
容堂は唇を怒りでわなわなとふるわせながら言った。
「はっ」
象二郎は顔を上げ容堂をみた。
「早急に旅立つがよい。そして、見聞をひろげよ。土佐のいや日の本があの化け物共の手に落ちる前に」
「は、ははぁー」
象二郎は再び容堂に土下座で答えた。
が、しかし、その旅は武市たちよりも遅い旅立ちとなってしまった。

 
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