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とある3人のデート・ア・ライブ

作者:火雪
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第八章 反転
  第1話 佐天の能力

 
前書き
どうも、ラーフィです。

久々の投稿ですね!確かとあるの新刊がもうすぐ発売だったような……(あれ?もう発売されてたかも)

それはおいといて、美九編の後半がスタートします!この章は今後の展開にとても大事になるので、楽しみにしててください!

ではでは〜 

 

偽物

幻影

クローン

どの言葉を使っても意味が通じるほどに、目の前の『佐天』は『佐天』ではなかった。

第三者が彼女を操っているかのように、いつもの彼女の行動パターンとは異なっていた。

鎌を構えて襲いかかる目の前の少女。

御坂「くっ……」

額から電撃を迸らせ、それを真っ直ぐに放出する。

対して『佐天』は鎌を振りかざし、その電撃を跳ね除けてみせた。

御坂「……やるじゃない」

佐天「それほどでも」

御坂も武器には武器で対抗せんと言わんばかりに、砂鉄を集め、それをチェーンソーのように回転させた。

佐天「あぁ、そういえば御坂さんって武器も作れるんですね」

御坂「そうよ。ちゃんと覚えててくれて嬉しいけど……そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」

御坂が剣を引きながら突進し、それを『佐天』の胸の方につき刺そうとする。だが案の定それは佐天の鎌によって防がれた。

チェーンソーのように動く砂鉄は『佐天』の鎌を少しずつ削っていく。

佐天「……っ!」

それを無理やり払い、地面と水平に鎌を構えてそのまま勢いをつけて振り切ろうとした。

御坂「……!」

それをまたチェーンソーで防ぐ。

キン、キンという金属音にも似た音が響き渡っていたーー




ーーその時だった。




佐天「……ぐあっ!?」

突然、頭に衝撃が走った。あまりの痛さに頭を抱え、膝から崩れ落ちてしまう。

頭痛というレベルを超えている。鈍器で殴られたような痛みが脳内を駆け巡り、動作を停止しろと言わんばかりのアラームが鳴り響いているようだ。

御坂「やっと仕事してくれたわね」

そう。

それをやったのは、脳内に直接ダメージを与えることができる少女。

食蜂「悪いわねぇ。普通の人間レベルじゃ彼女、私が能力を使ったことさえも気づかないぐらい強いんだしぃ」

食蜂操折だ。

御坂「ふーん。でも、この子が精霊ってことが分かったんだし、一応当初の目的は達成したわよね?」

食蜂「そうねぇ。でもぉ、まだ聞いてないんじゃないの?」

御坂「……分かってるわよ」

あのことを聞くまではまだ帰れない。

御坂「佐天さん、ちょっと聞きたいことがあるんだけどーー」




その時だった。




『佐天』の身体が徐々に下に向かって行ったのだ。

彼女は浮いてるわけではない。

代わりに彼女の真下の地面には、先ほど『鎌』を出した時のような邪悪な黒い影ができていた。

その黒い影は彼女を喰らうように引きずり下ろしていく。

御坂「ちょっ……!?」

思わず手を差し伸べてしまうが遅かった。その時にはもう身体全てが影に呑まれていった。



だが、驚いたのはこれだけではなかった。





佐天「何してるんですか?」







御坂と食蜂の背後からまたしても、先ほどまで聞いていた声が聞こえた。

恐る恐る振り向くとそれは先ほどまでと全く変わらない彼女。強いて言えば『影』ができているぐらいだが……

食蜂「え……本物?」

何かに気づいた時のように呟く言うと、目の前の彼女は至って冷静に笑った。

佐天「そうですよ。御坂さんたちがさっきまで戦っていたのは私が作り出した『幻影』です。気づいていると思いますが、その証拠に『影』はなかったでしょう?」

なんと言うか、恐ろしかった。

まだこちらも本気を出していないのに謎の敗北感が生まれる。

なぜか勝てる気がしなかった。

御坂「……じゃあ一ついいかしら?」

佐天「なんですか?」

御坂「夏休みの時のあなたの能力……あれは何なの?」

そう、これが一番聞きたかったことだ。

あの日からずっと考えてきた。

治癒能力なんてのはかなり珍しい。っというか御坂自身そんな能力聞いたことなかったのだ。

仮にそんな能力があったとしても、彼女の性格からして能力が発現したとならば喜んで報告に来るはずだ。

それをしなかった、ということはそれ相応の理由があるということ。

つまり、隠さなければならない何かの『力』を手にした。

その『力』の正体を知りたかったから。

佐天「あぁ、そのことですか」

それは、簡単な問題を出された時のような軽い口調だった。





佐天「簡単なことですよ。″御坂さんの影″を私の脳に映し出してそれを元に″再構築″したんです」





御坂「私の影……?再構築……?」

食蜂「……なるほどねぇ」

御坂「アンタ、今の説明でよくわかったわね」

食蜂「何となくはわかったわぁ。原理はイマイチ分からなかったけどぉ、要するにあなたは″治癒した″んじゃなくて″元に戻した″のよねぇ?」

佐天「えぇ、そういうことです。影に嘘はつけませんから」

つまり、影に映る″御坂の本来の姿″を読み取り、それをその時の御坂と照らし合わせて違う部分を修正した。

そうすることで確実に治癒することが可能となる。

御坂「なるほどね……でも、まだもう一つ聞きたいことがあるのよ」

佐天「?」

そう、

本当に根本的な問題。




御坂「どうやってその力を手に入れたの?」





そうだ。

もともと何の力を持ってなかった彼女がなぜこんな強さを手に入れたのか。

彼女は特に驚く様子もなく、ただ簡潔に言っただけだった。

佐天「もらったんですよ。目的は知りませんけど……」

と。

今度はビルの壁から、またあの黒い影が現れた。

しかし、そこから出てきた人物は佐天ではなかった。



狂三「お久しぶりですわね、涙子さん」



時崎狂三だった。

その登場の仕方に御坂と食蜂は身を構えたが、佐天は特に何もすることもなく、悠々としていた。

佐天「お久しぶりですね。私に何か用ですか?」

狂三「大有りですわ。涙子さん。あなたの力を貸して欲しいと思いまして」

佐天「……説明してくれますよね?」

狂三「実はーー」

彼女は話し始めた。

精霊の美九に士道が女装していることがバレて、彼女に追われていること。

その士道は今身を隠していること。

一方通行や上条はとある敵と交戦して助けを求められないこと。

そしてーー十香がDEM社にさらわれたこと。

佐天「ーーー!」

狂三「『わたくしたち』は十香さんを助けにDEM社に乗り込みますわ。その前に美九さんに会わなければなりませんけど」

佐天「……あなたの言うことはイマイチ信じることができませんが……」

チラッと横を見ると、目の焦点があやふやになり、何かを必死に探している一般人を見つけた。

恐らく、美九に操られた観客。

佐天「……あんなモノを見せられたら信じるしかないじゃないですか」

狂三「では後で来弾高校に来てください。お待ちしておりますわ」

佐天「了解です」

言い終えると、狂三は再び影へと戻っていった。

佐天「……というわけなんです。友達がピンチなので助けに行ってきます」

御坂「……いや、別に私たちの許可なんて取らなくても佐天さんの好きにしたらいいけど……これだけは覚えててくれる?」

佐天「……何ですか?」

いつに無く真剣な御坂の表情に、佐天も顔から笑みを消してしまう。

そして、その言葉は佐天にとってとても胸にくるものだった。






御坂「初春さんを悲しませることだけはしないでよね」







対して、佐天はどこか悲しそうな表情で、力のない声で言った。

佐天「……わかってますよ」

そのまま佐天は空へと飛び立った。

御坂と食蜂はその姿を最後まで見届けた。




食蜂「……まさかねぇ」

御坂「何が?」

食蜂「彼女の名前のことよぉ」

御坂「……それなら私も気づいていたわよ」


『佐天』

『佐』を『人』と『左』と分解して、

逆から読めばこうなる。




《天の左の人》



天が天使のことだとしたら。




《天使の左に立つ人》




と、訳すことができる。





もしかすると彼女は、






天使に選ばれるべき人材だったのかもしれない。










 
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