ソードアートオンライン VIRUS
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前書き
今回は五十層攻略。
今回、五十層の攻略が行われようとしていた。しかし、ゲツガの姿は見当たらない。今回も参加しないのか、ため息を吐いて腰を降ろす。特にすることもないので装備の点検でもするかと考えウィンドウを開いた。しかし、特に異常や不具合もあるわけでもなくすぐに終了する。何をするかなと考えていると、後ろから声をかけられる。
「キリト君。ちょっといいかな」
声をかけてきたのは、血盟騎士団の副団長、《閃光》ことアスナだ。後ろには《姫騎士》ことユキもいた。
「何のようですか、閃光さんと姫騎士さん」
すると、アスナが少し嫌そうな顔をして言った。
「前みたいに普通に呼んでいいわよ。それと今回用があるのは、私じゃなくてユキのほう」
そう言うとアスナが下がり、ユキが俺のほうに寄ってくる。
「えっと、なんて呼べばいいかな?黒づくめ(ブラッキー)?それとも、ビーター?」
それを聞いた瞬間、苦笑して言った。
「普通にキリトって呼んでくれ。その言い方は聞いてていい気がしない」
「分かった、キリト君。えっと……ゲツガ君、今どうしてるか知らない?三十九層から全く見かけないんだけど……まさか死んでなんかないよね?」
ユキが少し恥ずかしがりならゲツガのことを聞いてくる。俺は、ユキの顔を見て、何となく悟った。こいつ、ゲツガの野朗に惚れていると。あいつは、リアルでも普通にかっこいいし武術も嗜んでたから、普通にモテていた。だから、あいつのことを女の子が喋るのは大体こんなことだ。
「生きてるよ。でも、会ったのはクリスマスの日だけでそれ以降は一度も。クラインが言うには、もうすぐ戻ってくるとは言ってたぞ」
「そうなの……」
ユキが残念そうな顔をしてありがとうと言ってアスナとともにギルドのパーティーの元に帰って行った。もうすぐ戻ってくるとは言ったものの、ゲツガは何してるかは知らないし、生きているかもわからない。しかし、蘇生アイテムの《還魂の聖晶石》を持ってたと言ってたから、一回は死んでも大丈夫だと思うが、あいつはもうそう簡単に死なないだろう。あんなチートスキル持ってんだし。そう思った後、今の状況に集中する。もうすぐで、五十層のボスと対面んだ。いないやつのことを考えても仕方がない。そして、ヒースクリフが俺らの前に出て説明をする。それが終わったら士気を高めるて、扉に手をかける。そして開けたと同時にヒースクリフが叫ぶ。
「戦闘開始!!」
その言葉に俺らはボス部屋へと足を踏み入れた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ボス部屋は日本の寺院やインドの寺院に似た造りになっていた。その奥の仏像が四体、一番奥の千手観音を真似たようなボス、《サウザンドハンド・ザ・Aシュヴァラ》がいた。他の取り巻きはトラの形をした仏像のモンスター、《シュヴァラ・ガーディアン》と言う名前だ。こいつらは、俺らが入ってきたことに気付くと叫びはしないが物凄い重圧をかけてきてることがわかった。だが、そんなことに怯むような攻略組ではない。素早く陣形を組み立て、攻撃を開始する。俺はフロアボスのAシュヴァラのアタッカーなので最初に攻撃を加える。そして、その攻撃で戦いの火蓋が切って落とされた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
戦闘を始めて半刻。特に死人や重傷者も無く、ボスの体力を四本あるうちの一本と半分を減らし取り巻きも全員倒した。このまま、何もなければ倒せる。そう思い攻撃をし続ける。そして、二本目を削りきった瞬間、ボスの様子が変わった。
「きょーーーーーーー!!!!」
いきなりの咆哮で全員が怯む。その叫びと同時にAシュヴァラの顔が変化していく。穏やかだった顔がどんどん怒りの表情に変わっていく。それと同時にAシュヴァラが壁に向かって手を伸ばし、武器を取り始める。バーサーク状態だ。クエストをして得た情報なので知っていたが、さすがに目の前で見ると迫力が半端ないし、やばく感じる。
「バーサーク状態になったぞ!!武器を持ったことによって、攻撃範囲、攻撃力が変わると思う!!一度後退して、パターンを把握する!!」
ヒースクリフの指示により、後退して盾を持ったプレイヤーが固まって壁を作る。そこに、Aシュヴァラの大きな斧が振り下ろされる。金属と金属がぶつかり合う音がフロア全体に響き、ぶつかり合った盾と斧は火花を散らす。しかし、そんなことよりも驚くのはその威力だ。盾を持ったプレイヤーをほとんど吹き飛ばした。
「何だよこれ!?こんなの聞いてないぞ!!」
吹っ飛んだ壁の一人が叫ぶ。そして、壁の無くなった陣営に大きな剣が横一線に薙ぎ払われる。死人や重傷者が出なかったものの、それを食らったプレイヤーが吹っ飛ぶ。どうやら、付加効果に《衝撃》が入っているようだ。衝撃は攻撃力などとは関係ないが、相手に攻撃を当てたときに吹き飛ばす効果を持っている。
「ただの付加効果だ!攻撃力は少し上がったぐらいで連続攻撃に気をつければ攻撃は通る!押し切るぞ!!」
ヒースクリフが指示をして再び陣形を組みなおす。攻撃しようとするが連撃で攻撃する暇が無く、ダメージを与えることができない。
さらに半刻が過ぎるが体力は、あまり削れず回復道具ばかりが減ってジリ貧だ。そして、次のパーティーが攻撃しようと突っ込む。しかし、連撃の前に歯が立たず帰ってくる。何度も繰り返してようやくゲージを最後の一本になる。するとAシュヴァラがさらに変化する。武器に灯篭みたいなものが出て、そこから広範囲攻撃の炎が噴出す。
「盾を持ったものが前に出て、守りを固めるんだ!!」
そう指示され、盾でガードする。だが、その攻撃を受けた盾はもの凄い勢いで減っていく。
腐食効果も入っているようだ。
「撤退だ!!今回の作戦は失敗!各自、転移結晶または部屋から脱出をしてくれ!!」
今回は武器や回復道具の消費などが激しかったため、今の戦況だと撤退が妥当だろうとヒースクリフは考えたのだろう。そういった瞬間、それぞれのポーチを探り結晶を取り出していく。俺はみんなが転移し終えた後にしようと思ったから手に結晶を持って転移が終わるのボスのタゲをとりながら見守った。そしてようやく、残りが俺とヒースクリフ、アスナ、ユキになったところで転移しようと思ったとき
「きゃーーーー!!!」
ユキの腕が斬り飛ばされた。盾の限界でそこに攻撃が加わり、負荷に耐えられず壊れ無防備状態の腕に食らい、腕が飛んだのだ。
「ユキ!!」
アスナがそう叫び、ユキを助けようとするが自分の所をパリィするのが精一杯で助けに行けない。俺やヒースクリフも同じで自分のことがせいいっぱいで助けに行くことが出来ない。そして片手で頑張ってパリィしていたが武器にも限界が来て、砕けちった。そして、武器の無いユキに容赦なく剣が振り下ろされる。
「いやーーーーー!!」
ユキは衝撃で吹き飛び、HPも赤ゲージになる。そこに容赦の無い一撃が放たれる。
「ユキ避けてー!!!」
アスナの悲痛の叫びも虚しくユキに一撃が食らいそうになったとき、白い弾丸がユキが食らいそうになった剣を弾いた。なにが起こったかはすぐには分からなかったが、その見慣れた白いフード付きコート姿を見て安堵し、叫んだ。
「お前は……来るのが遅すぎるんだよ!!」
「悪かったよ。でも、ナイスタイミングだろ?キリト?」
剣を弾いて登場したのは、ゲツガだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
今日の攻略は、行こうと思ったが過酷なレベル上げで疲労が溜まり過ぎていたようで寝過ごしてしまった。攻略には間に合わないが、とりあえず行ってみることにした。来た時にはどうやら撤退に入ってたらしく数人が扉の外にいて、奥のほうでちらほら青い光が点滅している。
今回は中止と思ったので帰ろうとしたとき悲鳴が耳に届く。
「きゃーーーー!!!」
振り返り、目を凝らすとボスの剣によって姫騎士の腕が斬り飛ばされていた。マズイ、そう思うと同時に体が動いた。筋力値を最大限に使い、ピンポン玉のように壁を跳ねながら進む。そして扉から出る直前、姫騎士のHPは赤まで達していて空中に浮かんでいる。そしてそこに、姫騎士を殺そうと追撃が迫っていた。間に合え!そう心の中で強く思い、足に力を込めて跳ねた。そしてどうにか間に合ったらしく背中にある両手剣を抜刀して剣を弾く。すると聴きなれた声が飛んでくる。
「お前は……来るのが遅すぎるんだよ!!」
そして、姫騎士を抱え言った。
「悪かったよ。でも、ナイスタイミングだろ?キリト?」
着地と同時に素早く、扉まで跳躍して姫騎士をフロア外に下ろし、回復結晶を使った。
「ヒール!」
すると、ユキの体力はすぐに満タンになり、斬り飛ばされた腕も復活していた。それを確認すると素早く足に力を加えようとすると、姫騎士が声をかけてきた。
「ゲツガ君……来てくれたんだ……」
声をかけられたので返事をしておく。
「ああ、遅れたけどな」
「それでも、私はうれしかったよ……また、君が死にそうなときに助けてくれて……」
「……そうか、思い出した。お前、不人気ダンジョンのモンスターハウスで助けた女の子だったんだな……」
「思い出してくれたんだ……」
ユキはそう言うとにこりと微笑んで気を失った。ユキが気を失ったことを見るとすぐにフロアの中に戻る。そして、アスナから救出を試みる。
「アスナ、大丈夫か!?」
「この状況が大丈夫に見える!?」
「あんまり!」
そう言ってアスナに攻撃をしようとするのを弾いていく。
「アスナ!とりあえず、お前はもう部屋の外に出ろ!此処は俺が何とかする!!」
そう言って両手剣で今までよりもギアを上げて武器を弾く。その隙にアスナは、戦線を離脱する。それを見送り、今度はキリトの救出に行く。
「キリト、大丈夫か!?」
「ちょっと、ヤバイかもな!」
「なら、変わってやるよ!」
両手剣を横一線に薙ぎ、武器を弾く。そしてキリトの前まで行くと器用に武器の起動を逸らしていく。その瞬間、キリトも戦線を離脱。後はヒースクリフだけだが、武器はあまり刃こぼれや目立った傷は無く、普通に弾いている。その感じに違和感を覚えるが今は気にしないで置く。
「ヒースクリフ!」
そう叫ぶと、ヒースクリフは声だけで返す。
「久しぶりだね!ゲツガ君!元気かい!」
「ふざけてないで、ちゃんとしろ!」
そう言って再び、目の前の武器を弾くことに集中する。すると、ヒースクリフから声をかけてきた。
「ゲツガ君!提案があるんだが!」
「手短に!」
「私は撤退と言ったが、正直こんなところでつまずくのはどうかと思う!」
「それで!」
「だから此処でボスを倒しておくべきだと私は思うんだが!」
そう言われた瞬間、ヒースクリフが何を言いたいのかが分かった。つまり、二人で倒そうと言ったのだ。それを聞いて
「他のメンバーを置いて勝手にクリアーするのは、いけないと思うが!……やるか!俺の前線復帰戦だ!!斬って斬って斬りまくる!!」
そう叫んで、両手剣に力を込める。するとライトグリーンの光を纏う。このスキルは両手剣唯一の逆手スキル、《イラトゥス・エスト・ドラコ》。横一線の一撃だが、衝撃のおまけが付いている。
「吹っ飛べ!!」
そして横一線に振るわれた両手剣は、武器を吹き飛ばしながら振りきる。そして浮き上がった瞬間、足に力を入れてAシュヴァラに向けて跳躍する。そして、Aシュヴァラの体に掴まり両手剣で滅多斬りにする。
「きょーーーーー!!」
それを払いのけるかのように体を振られるが、伊達に筋力値だけに振ってなく握ったものを離さず斬りまくる。そして、いい加減にしろと言わんばかりに武器をゲツガに向けて攻撃してくるが、跳躍して離れる。そして、ゲツガだけに気を取られていたAシュヴァラはヒースクリフのスキルをもろに食らった。
「きょーーーー!!」
「ナイスだ!ヒースクリフ!!」
「ゲツガ君こそ!!」
そう叫んでもう一度攻撃に入る。しかし、灯篭から火炎が撒き散らされる。
「うわっと!!」
反射的に、跳躍して避けるが炎のほうが早く、足を飲み込んでいた。
「ガッ!!」
尋常じゃないほどの熱さと痛みが足を襲う。あれ以来、あの声の通り、ペインアブソーバが働いてなく、攻撃されたら痛みが緩和などされずそのまま体に来るようになっていた。痛みを堪えながら天井まで到達すると、天井を思いっきり蹴って弾丸のように突っ込む。そしてその弾丸を阻止しようと、武器を振ってくるが両手剣で破壊していく。その間にもヒースクリフがダメージを与えていたらしく、AシュヴァラのHPは赤ゲージの半分まで行っていた。
「うぉおおおおおおお!!!」
攻撃を掠りながらも吼えながら武器を破壊していき、そしてAシュヴァラの額まで辿り着く。そのまま、剣を突きつけて頭を貫通する。
「きょーーーー!!」
その攻撃は、AシュヴァラのHPを余すことなく食らいつくしていった。叫びとともに、Aシュヴァラの体は割れて、ポリゴン片となった。そして、クリアの文字が現れる。こうして、五十層攻略は完了した。
後書き
ユキがゲツガを好きになったまでのおまけ話をいつか書きます。
誤字・指摘お願いします。
定冠詞を入れました。
【Thousand hand tha Azavara】
英語にするとこんな感じ?
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