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真・恋姫無双〜中華に響く熱き歌

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第7話 曹操孟徳

「あら、何かと思って来て見たら、誰かが歌っているみたいね。」
陳留のある食事処の前まで来た3人組の女性の1人がそう呟く。
3人組の女性は、陳留の太守とその腹心である。
3人組の真ん中にいる女性、というよりも少女と称した方がしっくりくるのが、陳留の太守である曹操、字は孟徳である。
曹操の外見は見目麗しい人形のような少女であるが、その実力と才能、そして野心は計りしれないものがある。
「様子を見て参りましょうか、華琳様。」
曹操の後ろ右側にいる黒髪の長髪の女性は夏侯惇がそう進言する。
この夏侯惇は、主人と違い、少女というよりは女性と呼ぶにふさわしい容姿であり、可愛いというよりかは綺麗と呼ぶ方がしっくりくる。
そして精強で知られる曹操軍において右に出るものはいないと言われるほどの猛将でもある。
「いや、ここからでも店内の様子は見えるが、見に行くほどの隙間がないぞ、姉者。」
その左にいるのが青髮の短髪の女性で夏侯惇の妹でもある夏侯淵が夏侯惇に言う。
彼女も夏侯惇の妹というだけ美人である。だが、姉の夏侯惇と比べるとより知的な雰囲気である。
彼女も姉の夏侯惇と同じく、曹操軍の将軍であるが、文官としての仕事も行うことがあり、並程度の文官と遜色がない程度の能力もある。
武将としての能力も天下五弓の1人にも数えられるほどの弓の能力と冷静に戦場を見渡すことができる目、判断力があるため、知勇兼備の良将として知られている。
「秋蘭の言う通りね、だから春蘭、ここで歌を聴けばいいわ。」
「し、しかし華琳様、どのようなものが歌っているかわからないような歌を聴くためにわざわざこのような場所で華琳様が聴かずともよいのでは?」
春蘭と真名を呼ばれた夏侯惇はそう進言したが、
「いいのよ、わざわざ歌を聴くために店内にいる民をどかしてまで入ろうと思わないわ。そんなことをするのは、この曹孟徳の流儀ではないわ。」
「は!分かりました!」
華琳と真名を呼ばれた曹操はそう言い夏侯惇の言葉を退け、
「秋蘭も、いいわね。」
夏侯淵の真名を呼び、念押しをするかのように告げた。
「仰せのままに、華琳様。」
夏侯惇と夏侯淵がそれぞれ返事を返した。
「ふふ、それにしても店内から聞こえてくる曲調は聞いたことがないわね。詩も聞いたことのない言葉や文章を使うようだけど、まだまだ聴いていたいわね。」
曹操が店内の歌に対してそう評したことに部下の2人は驚きを露わにする。
それは、主君の曹操は、軍事や政治に優れるだけでなく、詩人としても優れており、しかも並みの詩人など、足元にも及ばないほどの才能を有している。
そしてその主人は自己にも他人にも厳しく、己が認めたものしか褒めることはない。
その主人が褒めるとは・・・
そう思う2人であったが、
「あら、そろそろ終わりみたいね。」
主人の言葉で我に帰る。
その言葉通り店内の歌も終わり、流れている曲も次第に静かになる。
「そのようですね。そろそろ行きましょう華琳様。」
そう夏侯惇が進言し、曹操も
「そうね。終わるのなら、居る意味もないわね。」
そういって3人は店の前こら去ろうとしたが、
「よっしゃー!燃えてきたぜ!まだまだ行くぜー!!」
店内からそんな声が聞こえてきた。
どうやらまだ続くようである。
「まだ続くみたいね。なら、もう少し聴いて行きましょ。」
『は!』
勢い良く返事を部下の2人が返す。
それを見てから、店内に顔を向ける。
(さあ、次はどんな曲を聴かせてくれるのかしら?この曹孟徳を満足させられるほどのものかしら、ね?)
そう心で呟きながら、期待している、と言うような顔をしている。
その直後に
「ハートに直接届けてやるぜ!行くぜ!Submarine Street!」
そう宣言した直後に曲が響く。先程の曲とは雰囲気が違い、ゆっくりした曲調である。
歌が聞こえてきた。先程の歌とは違い、分かる言葉が多い。
どうやら思い人に対する歌のようだ。それも、遠い所に離れている思い人に対して、だ。
だが、この詩は、なにも詩的な表現をしていない。
ただ、思い人に対しての思いを強く強く、そしてまっすぐに表現している。いや、表現しているというのは正しくない。これは、言いたいというのが正しいだろうか。
思い人がいないことについて、自分の心がどうなっており、どう思うか、そして、どれだけ逢いたいかを、言いたいのかが、伝わる。
そんな詩であり、曲であり、歌だ。
詩の観点から見ると、詩的な表現も無く、美しさもあまり感じない。だが、歌に込められた思いは伝わる。
それを心地良く、そして熱く感じることができる。
そんな不思議な歌だ。
このような歌、聴いたことが無い。
「・・・見事ね、」
気づけばそんな言葉を漏らしていた。






 
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