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真・恋姫無双〜中華に響く熱き歌

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第3話 3羽カラス

あの3人組と別れてから数時間が経ち、日が沈もうとしていた。
バサラは北に向かって歩いていたが、一向に陳留という町に着きそうにはない。
だがアニキこと周倉からは、明日には着くだろうと言われていたので、バサラは焦りもせずに今日は野宿になりそうだと思っていた頃、前の方にいくつかの小さな家らしきものが見えてきた。
「お?ありゃあ町か?てことは、あそこが陳留ってとこか?」

そう言いながら10分ほど歩いて町らしき場所の入り口にたどり着いた。

「へー、この陳留って町は案外小さいんだな。」

そう言って町に入ろうとした時に、

「そこのお前!何もんじゃ?勝手に村に入ろうとしおって、何しに来たんじゃ⁈」
柵の町側から、若い男性が現れ、バサラに怒鳴りつけた。
男は、槍を持っており、バサラに向けて警戒を露わにしていた。
男の怒鳴り声を聞いて、家の中から人が何人か出て来て、バサラの方を見ていた。
どうやらバサラを警戒しているようである。

「俺か?俺は熱気バサラってんだ。俺のことを知りたいんなら」
そう言いながら、肩に担いでいたギターを構え、弦を鳴らした。
町の人たちは、何かするつもりかと警戒したが、
「俺の歌を聴けー!突撃ラブハート!」
目の前の男はあろうことかいきなり歌いだした。
町の人たちは訳が分からない顔でバサラを見ていたが、バサラが危害を加える気はないと感じ始め、1番を歌い終わる頃には、バサラの歌に聴き入っていた。
(へへ、みんな乗ってきたじゃねえか!俺も燃えてきたぜ!)
そう感じながらバサラはさらに思いを乗せるかのように激しく歌う。


(なんだ、この男は?なんだ、この男の歌は?)

町の人たちの中の少女は目の前の男の歌を聴きながらそう思っていた。
目の前の男は、見張りのものが怒鳴りつけていたことから、どんなやつかと思い来てみれば、いきなり歌いだしたのである。
経緯を思い返してみたが、意味が分からない。
(陳留に行く途中で立ち寄った村だが、なんなんだこいつは?)
そう思いながら、バサラを見ていた少女は、溜息をついた。
この少女は、凛々しい顔つきをしており、銀髪の髪を後ろに三つ編みで束ねている。
それに伴って鍛えていることが伺える体つきではあるが、硬いというよりしなやかな印象を受ける。
この少女は、いわゆる美人の部類に十分入るが、大きな特徴がある。
それは、全身に傷跡があり、顔にも鼻に横への傷跡がある。
それを本人は恥じており、あまり容姿に自信を持てないでいる。
少女の名は、楽進である。
(まったく、熱気バサラと言ったか?いきなり歌いだすとはどういうことだ?何か企んでいるのか?だが、企んでいるとして、この小さな村に何しに来た?)
そう思っていた楽進は、この村のことを思い出す。
陳留に行く途中で寄った村だが、取り立てていいものなどない、何の変哲もない普通の小さな村である。
この付近は、陳留の刺使が治めている。
陳留の刺使の政治は、良好のようで、ほとんど賊が出ないほどだという。
だから、賊というわけではないと思うが、なぜ歌っているのか分からない。
相談をしようと自信の親友2人に声を掛けようとしたが、親友2人はというと、

「はあああ〜!すごいかっこいいの〜!歌も上手くて、もうたまらないの〜!」

「うおー、なんやいきなり歌いだしたと思うたら、めちゃくちゃ上手いやないかー!それになんか熱いし、何よりもものすごかっこいいやんけ!」

ものすごく聴き入っていた。しかもいつの間にか最前列に居た。

楽進は、それに溜息を尽きながらも、自分も男の歌に聴き入っていくのを感じていた。

(・・・だが、それもしょうがないかもしれないな。こんな心が、魂が震えるような歌など、聴いたことがないしな。真桜も沙和も、こんな顔初めてだ。私も例外ではないし、な。ああ、まだ、まだ聴いていたい!)

楽進はそう思いながらも、自分自身も最前列に出ていき、村人や友人たちと共に歌に聴き入っていた。


「へへっ、いいノリじゃねえか!のってきたぜ!
まだまだ歌うぜ!PLANET DANCE!」

バサラの即興ライブは、日が暮れて、1時間程経過し、バサラが満足そうな顔でライブを切り上げるまで続いた。


 
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