エターナルトラベラー
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第五十五話
side ソラ
敵本拠地に乗り込んだ私とフェイトさん。
途中でシスター・シャッハと言う協力員と合流して進む。
途中生態ポットの立ち並ぶ場所に出た。
その光景は余りにも非人道的過ぎて生理的に受け付けない。
「きもち…悪い…」
そう呟いた私。フェイトさんの声にも怒気が混じる。
「こんな事を許していいわけない」
その時、空気を震わせて飛来する投擲武器が私たちを襲う。
避けようと回避行動を取った私たちだが、突然地面から生えた手にシスター・シャッハが捕まった。
飛来した武器はフェイトさんが弾き返したためにシスターには当たらなかったが、拘束されたシスターは地面ごと手に持ったトンファー型のデバイスで砕き下階へと落ちていった。
「フェイトお嬢様…」
そうフェイトに話しかけた敵の戦闘機人が二人ゆっくり歩を進めてくる。
大きなブーメランを二つ両手に持っている人と、無手の二人組み。
無手の方はインファイターかな?
「くっ…」
なんでしょう?知り合いかな?
まあ、それは別に良いんだけど、見敵必殺。これ、こう言った場合の常道だよ。
私を気に掛けてない訳じゃないけれど、フェイトさんの方にばかり注意が向いているし、フェイトさんと話し込んでいて正直隙だらけ。
AMFが重いために魔導師はその能力を大幅に減衰されているから、たぶんあちらはこちらが動いてからでも余裕でかわせると思っているのだろう。
だけど…ね。どこにでも例外は居るんだから注意しないと駄目だ。
「犯罪者の逮捕、それだけだ」
フェイトさんが敵に向かってそのデバイスを突きつけて宣言するよりも速く私は念で両足を強化して神速を発動。相手が知覚できない、あるいは知覚できたとしても反応できない速度で床を蹴って敵に迫る。
こちらを下に見てか二人の立ち位置はほぼ隙間のない横並び。
両手の平で一気に二人の顎を打ち抜く。
その一撃でぐらりと体制を崩し床に倒れる。
「は?ええっ?何が!?」
混乱するフェイトさん。
「ソラ、あなたいったい何をしたの!?」
何をしたって言われても、いくら戦闘機人が機械パーツが多いとはいえ、脳は人間のもの。
「顎先を手の平で殴って脳ミソを揺らしたんです」
「は?」
「手加減はしましたから、後遺症は無いはずです」
「そ、そうなんだ…」
両手持ちにしたザンバーフォームのバルディッシュを構えたままの姿が結構間抜けだ。
「さて、先に進みましょう。この二人はしばらく起きないと思いますから直ぐに他の局員を呼んでください」
この奥にはオーラの反応は一つ。おそらく黒幕だろう。
「あ、うん…」
さて、アオ達は大丈夫かな。
side out
side ヴィータ
なんなんだこいつは。
あたしを抱えたまま飛んでいるアオはまるで後ろに目が付いているかのようにガジェットのビームを避けながら追跡を振り切る速度で飛んでいく。
あたしがやることなんてほとんど無い。いや、まぁ、それじゃしゃくなんで浮遊魔法を自身に掛けて負担を減らしてんだけどな、とは言え本当にこいつはどうなってんだ?
いや、その答えは多分持ってるんだ。この前教えてもらった『念』ってやつを使ってるんだろうけど…やはりすげぇ。
後もう少しで駆動炉と言う所でアオのやつが急に止まった。
「どうした?」
駆動炉への扉はすでに見えている。距離にして100メートルほどだ。
しかし、あたしには何も見えないけれど急に止まったということは何か有るのだろう。
「何か居ます。それも大量に…」
「何も見えねぇが?」
「来るっ!」
その言葉が合図になったかのように前方からビーム攻撃が始まった。
たまらず後ろへ回避しつつ距離を取る。
「ヴィータさん、防御をお願いします」
「お、おう!」
着地と同時にあたしを自身の前方に下ろすとその後ろで何かを始めるアオ。
恐らく魔法のチャージだろう。ならばあたしの仕事はこいつが安心してチャージできる時間を稼ぐことだ。
「アイゼンっ!」
『ヤヴォール』
強力なAMF下で何とか術式を制御してバリアを張る。
敵の攻撃が激しさを増す。
「アイゼンっ!カートリッジロードっ!」
『エクスプロズィオーン』
カートリッジが炸裂してバリアの強度が跳ね上がる。だけど…
「もたねぇ…」
「大丈夫です。退いて下さい」
その言葉で直ぐにあたしはアオの射線上から退避する。
「サンダーーースマッシャーーーー(偽)」
(ライトニングクラウド)
バチバチと音を立てて電気変換された魔法が通過した所が次々と爆発して噴煙を上げている。
計6射。
噴煙巻き上げる機械の塊。あれには見覚えがある。
忘れもしねぇ、なのは撃墜の時の奴だ。
そう言えばあいつにはステルス機能が備わってたんだ。
アオを振り返ると今の攻撃で消耗したのか肩で息をしている。
「後は任せな」
「え?でもまだすべてを撃破したわけじゃ…」
「大丈夫だ。ネタが判れば遅れは取らねぇ。それに後少しだからな」
そう言うとあたしはグラーフアイゼンを構えて気合を入れる。
「仲間が切り開いてくれたんだ、後はあたし達の仕事だよな?」
ぐっと手に力を入れる。アイツのお陰で魔力は十分!
「派手に行こうぜ!アイゼン!」
『ヤヴォール!』
頼もしく答えた相棒を手にあたしは駆動炉に向けて走り出した。
side out
さて、なのはさんを抱えて飛行しながらガジェットの攻撃を避けていく。
破壊しないのかって?何体いるのかわからない物を相手にしてたらこっちの体力やら魔力やらが先に尽きてしまうって。
円を広げるとこの先の曲がり角に一つオーラの反応がある。
それを伝え、なのはさんにバスターのチャージを始めてもらう。
先手必勝。
ゆりかごの中に居る管理局員は俺たち3人のみだし、他は敵とヴィヴィオの何れかだ。
少し魔力を食うがサーチャーを飛ばすと曲がり角の先に居るのはどうやら戦闘機人のようだ。
映像を見ると武器からロングレンジの砲撃タイプと推察される。
スルーしたいけれど、ヴィヴィオが居る部屋に行くためにはここを通らなければならない。
「なのはさん」
向こうはチャージも完了してすでに発射体制も整っている。
「うん!」
しかし、こちらの準備も完了している。なのはさんの砲撃の威力は信頼しているから大丈夫なはずだ。
通路に躍り出るとなのはさんはすばやくレイジングハートを構えた。
「ディバイーーーーーン、バスターーーーーー」
ゴウッっ空気を巻き込むように迸るピンクの奔流は、相手の砲撃魔法を押し流して直撃、魔力ダメージで気絶させた。
さて、通りしなになのはさんが強固にバインドを掛けて行ったので、逃亡される可能性は少ないだろう。
そのまま通路を進むと少し大きめの扉が現れる。
「この奥?」
「ああ」
俺の返答を聞くとなのはさんはディバインバスターの収束を始めた。
問答無用で扉を打ち抜く気らしい。
正規の手段で開ける時間すら惜しんだようだ。
直撃したバスターは扉をくりぬき、破片が宙を舞う。
ちょうど大人が通れそうな位の穴が開き、そのまま進入すると玉座に拘束されるように座らされているヴィヴィオの姿が。
「ヴィヴィオっ!」
なのはさんが叫ぶ。
「…まっ…ま?」
「やはりこっちが当たりか!なのはさん、ここは任せます」
「え?アオくん?」
ボワンっと煙を上げてその姿が霧散する。
…
…
…
…
幅の広い通路を全速力で飛んでいる。
先ほどから段々ガジェットの量が増えてきている気がするが、向こうの移動速度以上の速度で飛んでいるので、正面の攻撃をかわしさえすれば後は追いつかれることも無い。
まあ、後ろからの追撃も有るには有るが、反転している間に射程範囲から抜けちゃってるから問題ない。
つい先ほどなのはさんと一緒に居た俺の影分身が帰ってきた。
どうやら向こうが当たりだったらしい。
玉座の間に向かう途中で俺は影分身を再度使用し、分身をなのはさんに付け、本体である俺はもう一つのオーラの所へと向かっていた。
この先だな。
途中、通路を駆けるだけではどうやってもたどり着けないようだったので、力技で壁の薄いところを粉砕すること4回。ようやくゴールが見えてくる。
さすがに四分の一のオーラと魔力では心もとない為に、なのはさんに付けた影分身は回収させてもらった。
この奥に居るであろう戦闘機人が大魔力攻撃が主体の相手だと四分の一ではバリアの上から落とされる危険性が高いからだ。
本来ならばヴィータにつけた影分身も回収したいところだが…
ちょうど正面の扉を守るように多数のガジェットが守っている。
「ソルっ!」
『サンダースマッシャー(偽)』
「サンダーーーースマッシャーーーーーー」
実際はライトニングクラウドなんだけど…電撃魔法が通り過ぎると、あちらこちらで爆発が起こる。
うん、対魔導師を意識しすぎだ。
AMFは強力だけど、その分純粋な衝撃や自然現象への耐性は低いようだ。
俺は『円』で相手の位置を確認すると目の前の扉を『硬』で強化したコブシでぶち抜いて進入する。
中に入って目視で敵を確認しようとしたが、俺の目には何も映らない。
確かにそこに居るはずなのだが…
「管理局の方から来ました。武装を解除して投降して下さい」
その後、貴方には黙秘権があり~とか、即席で覚えた犯罪者に対する定型文を述べるが返事は無い。
返事の代わりかレーザーが飛んできます。
とりあえず銃口はすべて飛針でつぶすとこれ以上はないのか攻撃が沈黙した。
うーん。姿が見えないってことはステルスか何かか。
とは言え、熱源や魔力、姿などをいくら偽装しようがオーラは駄々漏れなのでどこにいるか俺にはバレバレなのだが。
こんな奥で一人で居るところをみると、どうやら戦闘タイプではないのでは無いだろうか。情報収集や参謀といった裏方タイプで戦闘は苦手と見た。
「…なるほどね」
side クアットロ
なんなのあのイレギュラーは!
陛下の監視モニターを脇に避け、私はキーボードを操作しながら必死に侵入者の進撃を止めるべくガジェットを操っている。
先ほどから分身したと思ったらそれぞれが実体だなんて、そんなレアスキル管理局のデータベースに乗ってなかったはず。
シルエットだろうと何度も調査したが結果は変わらず。
あまつさえ先ほど同時に別々の場所で魔法のような物の行使を確認したし、それによる被害も甚大だった。
「まあでも、ここにたどり着けるルートは存在しませんから。放って置いても大丈夫でしょう」
なんて考えは直ぐに覆される事になる。
さらに分かれた内の一人が偽装してある薄壁を何のためらいも無く破壊して最短距離でこちらに近づいてくるではないか。
私はそれに慌ててガジェットを差し向けたが敵の進撃は止まらず、とうとう私が居るこの部屋の扉が壊された。
直ぐに私は防衛装置を起動して侵入者の迎撃をさせるが効果は芳しくない。
すべての迎撃装置は一射目を撃つと次射が発射される間もなく撃ち落されていた。
いくつも有った迎撃装置をことごとく掻い潜って来た相手だ、私の戦闘能力じゃ敵う訳は無い。
緊張で汗がにじむなんて経験は初めてだ。
大丈夫。私のシルバーコートは完璧なはずです。相手に私の姿は見えていないはず…
どうやって感知したのかはわかりませんが、油断してシルバーコートを起動していなかったために見つかってしまっただけの事。
このままやり過ごせばいいのです。
それに隙をみてほんの数メートル後ろにある脱出ポッドに乗りさえすれば脱出は容易。
私さえ居れば計画の再開は可能なのですから、あせる事は無いはずです。
私の位置をつかめていないはずの侵入者は魔法のチャージを始めると最後通告を発した。
「投降の意思が無い場合実力行使に移ります」
そしてチャージされる収束砲。
大丈夫。こんな所で空間攻撃なんてしたら自分にも被害が出るはず…それにどうやらあれは収束砲のようだし、砲撃魔法のようね。
この高濃度AMF下では連射は不可能。ならばその隙に脱出すれば…
そう考えて実行しようと後ろへと下がった私の眼前に極太の収束砲が迫って来ていた。
「なっ!?」
驚愕に漏れた言葉を飲み込むように私に直撃し、直後に私は意識を失った。
side out
「ディバイーーーーーーーンバスターーーーーーー」
ゴウッと発射される銀色の奔流は寸分たがわず敵を飲み込んだ。
プシューーーーーっ
余剰魔力を排出して撃ち終ると油断無く敵を見据える。
今の攻撃でステルス機能を維持できなくなったのか女性が一人倒れている。
それをバインドで拘束するが、抵抗する様子は無い。どうやら無事に魔力ダメージで失神したようだ。
敵が非戦闘タイプの頭でっかちで助かった。大方ステルスを見破れるはず無いと高をくくってたのだろう。
この世界の人間ならば騙されただろうが、生憎俺には何処にいるか丸見え。抵抗が無いんだから今のように一撃で沈める事も可能だ。
「さて、回収してなのはさんと合流するか」
浮遊魔法を掛けると俺も飛び上がり着た道を戻る。
十数分掛けてようやく玉座の間へと到着する。
目の前の破壊された扉を潜れば玉座の間だ。
その時扉を反対側から突き抜けて何かがこちらへと迫る。
あれは…なのはさん!?
俺はすぐになのはさんを受け止めると制動を掛けるためにそのまま後方へと十数メートル下がってから空中で止まる。
なんでなのはさんが?こんな事をした相手は誰だ?
後書き
さて、ソラやヴィータ達のパートの続きは書くと長そうなので適当に想像で補ってください。
ここからは巻きで行きます。
スカさん?ソラが居れば瞬殺でしょう。
え?会話? 見敵必殺! 目的は逮捕で会話じゃないよね?
きっとソラが会話前に倒しちゃいますよ!
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