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第七感

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第四章

「原作は原作だけれどね」
「ああ、絵はなのね」
「若い人達が描いてるのよ」
「同じ人が描いてないのね」
「チャンピオンの方は女の人でレッドの方は男の人よ」
 それぞれ描いている人が違うというのだ。
「また違うのよ」
「そうだったのね」
「そう、それでね」
「また連載してるのね」
「ジャンプより前の時代の話よ」
「ああ、あの頃よりも」
「またコスモとか第七感とかね」
 慶子は私に話した、この息子も言っていた設定を。
「健在よ」
「まだあるの」
「そう、あるのよ」
「まさか大人になって結婚して子供が出来て」
「まだこの言葉聞くなんて思わなかった?」
「終わったと思ってたわよ」
 星矢自体がだ。
「最終回でね」
「面白かったからね」
「だからまだ作品世界は続いてるのね」
「実際に今連載してるのもね」
 その若い人達が描いている作品も、というのだ。
「面白いから」
「そうなのね」
「よかったら読んでみる?」
「大きな子供のいるおばさんが?」
 私は笑って慶子に返した。あの時の私は高校生だったけれどもう結婚して子供もいてだ。ついでに言うとあの頃よりずっと太った、
「星矢読むの?」
「私はいつも読んでるわよ」
「だからなのね」
「英美も読んでみたら?」
「面白いのよね」
「私が保証するわ」
 その頃からの星矢ファンの慶子の言葉だ、
「このことはね」
「それならね」
「読むのね」
「単行本、どっちも全部買ってみるわ」
 そして読むとだ、慶子に答えた。
「面白いのならね」
「そうしてね、けれど本当にね」
「小宇宙も第七感もね」
「ずっと付き合ってる言葉ね」
「設定としてね」
「第七感なんてないのに」
 私はやれやれといった顔になって笑って言った。
「それでも付き合ってくのね」
「本当にないと思ってるの?」
 慶子は私に笑ってこうも言って来た。
「まだ」
「ううん、そう言われるとね」
「あるのかもって思えてもきてるでしょ」
「大人になって付き合う設定だとね」
 それならだった、付き合いが長いと。
「そうも思えてきたわ」
「君は小宇宙を感じたことがあるか」
 この言葉をだ、慶子は笑って私に行って来た。
「第七感を感じたことがあるか」
「感じられる様になればいいわね」
 これが今の私の返事だった、あの時は絶対にないと言っていたけれど。付き合いが長いと何故かこうも思えて来る、根拠はないのに。
 このことに笑いながらもだった、私はこうも思ってだった。
 喫茶店から出てその漫画をどちらも全巻買って家で読むとだ、栄太郎にすぐにこう言われた。
「お母さんも読んでるの」
「読んでみてるの」
 こう息子に答えた、読みながら。
「お母さんもね」
「僕も読んでいい?」
「後でね」
 やはり読みながら答えた。
「お母さんが読んでからね」
「読み終わったのから?」
「ええ、読んでいいから」
「うん、じゃあ僕も読むね」
「面白いわね、本当に」
 この子、そして慶子が言った通りだった。
「どちらも」
「そうだよ、だからお父さんも僕も読んでるんだよ」
「そうよね、面白い作品が残るのね」
 そして設定もだ、その現実にはあるとは思えない設定もだ。私は読みつつこのことについても考えていて心の中で笑って読んで楽しんでいた。


第七感   完


                        2014・9・29 
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