僕のサーヴァントは魔力が「EX」です。
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戦闘開始
ランサー、と。
確かにレーベンはそう言った。
その次の瞬間にレーベンの隣に現れた体から眩い光を放つ女性。つまり彼女が彼のサーヴァント。
年齢は二十代半ばくらいで服装は胸と腰に布を巻いただけの格好。そしてその顔立ちや体つきはまるで名工が作った彫像のように整って……いや、「整いすぎて」いた。これが人間離れした美貌ってやつなのだろうか?
「アヴェンジャー。僕、まだ君を含めてサーヴァントを二人しか見ていないけど……。彼女、普通のサーヴァントとは違うような気がしない?」
僕はレーベンが呼び出したサーヴァントを見ながら隣にいるアヴェンジャーに訊ねる。ランサーの外見は人間の女性に似ているが、あの眩い光を放つ姿はどう見ても、人間とは別の存在が英霊となったものとしか考えられなかった。
「……うん。私もそう思う。マスター、私の後ろに隠れていて」
アヴェンジャーはすでに臨戦態勢にはいっていて、その側には彼女の武器である骸骨の人形が宙に浮かんでいた。
そして僕はアヴェンジャーの言われた通り、自分より一回り小さい復讐者の英霊の後ろに下がった。サーヴァント同士の戦いに巻き込まれればただのマスターなど、その余波だけで死んでしまうからな。
「ふふ……。どうだい? 美しいだろう? 私が契約したサーヴァント、ランサーは? 彼女こそが私の正しさの証明。私が『あの人』を助けた事を天が正しいと認めてくれた証拠なのさ」
戦いの構えをとった僕とアヴェンジャーを見てレーベンはよほど自分のサーヴァントが自慢なのか嬉しそうに話しかけてくる。
「本当だったら私は試合まで君達と戦うつもりはなかったのだけどね? 彼女が『相手の情報を集めるには一度戦ってみるのがいい』とお告げをくれたのでこうして待っていたんだよ」
なるほど。ここで戦いを仕掛けてきたのはレーベンではなくて、あのランサーの意思ってことか。
どうやらレーベンは自分のサーヴァントの意見を尊重しているようだな。いや、この場合は尊重というより服従、もしくは崇拝かな? レーベンの言葉や態度を見ると。
《アリーナでの戦闘行為は禁止されています。即刻戦闘を中止してください》
どこからか合成音声の警告が聞こえてきた。
アヴェンジャーから聞いた話だと聖杯戦争では基本、正式な試合以外での戦闘は禁じられているらしい。参加者同士がお互いの情報を得るという目的がある為に完全には禁止されてはいないが、戦闘が始まると警告の後に強制的に戦闘を中止させるそうだ。
「強制中止まであと二、三分ってところかな?」
「ふふ……。それじゃあ早速始めようか? ランサー!」
「……!」
アヴェンジャーの呟きを聞いて不気味な笑みを浮かべたレーベンが命じると、ランサーは何もないところから光の槍を作り出してその手に取り、体から放つ光を強めて更には稲妻を纏いだした。……何で戦闘態勢にはいっただけでこんなに派手なエフェクトがでるの? やっぱりこのランサー、マトモな英霊じゃないって絶対。
「……! ッ!」
ランサーは僅かに両膝を曲げて見せると次の瞬間、あり得ないほどの高さまでジャンプをした。それだけでも驚きなのに、その後彼女は何もない空中を足場にして、こちらに光の槍を構えて突撃をするという物理法則を完全に無視した動きを見せた。
……!? 速い!
雷光を纏いながら突撃してくるランサーの姿は正に「人の形をした落雷」だった。
ランサーのクラスに選ばれるサーヴァントは総じて敏捷のステータスが高い者が多く、その為「最速のクラス」と呼ばれている。そしてあのレーベンのサーヴァントは、そのランサーに選ばれた中でもトップクラスの敏捷を誇っているのが分かった。
攻撃の速度はそのまま威力となる。普通のサーヴァントでは高速どころか「光速」と言っても過言ではないランサーの突撃を防ぐことは難しいだろう。……だけど。
ガキィン!
アリーナに金属同士が勢いよくぶつかり合う音が響いた。
それはアヴェンジャーが操る骸骨の人形が両手に持つ二本の刀を交差させてランサーの槍を受け止めた音だった。
確かに普通のサーヴァントだったらレーベンのランサーの槍を防ぐことは難しいだろう。だけど僕が契約したアヴェンジャーは「普通のサーヴァント」じゃない。
さあ、戦闘開始といこうか。
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