僕のサーヴァントは魔力が「EX」です。
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一回戦の対戦相手
【一回戦の対戦相手を発表する。二階の掲示板にて確認されたし。】
聖杯戦争二日目。対戦相手が決まったという連絡を受けて早速二階の掲示板を見に行くと、掲示板には一枚の紙だけが貼られていた。
【一回戦の対戦相手。
平和時行。
レーベン・クラウド。】
紙に書かれていたのは一行だけの文章と二人分の名前だけ。このレーベン・クラウドというのが僕の一回戦の対戦相手ということか。
……あれ? この名前ってどこかで聞いたことがあるような?
「君が私の対戦相手か」
「え?」
後ろから声が聞こえてきたので振り返ると、そこには一人の男が立っていた。
三十代くらいで無精髭を生やし、目の下にクマがある顔色の悪そうな男。もしかしてこの男が僕の対戦相手なのか?
「私の名前はレーベン・クラウド。君の対戦相手だ」
「……平和時行です。よろしく」
「見たところまだ少年のようだけど、私は一切手を抜かないよ……。私には使命があるのだから……。そう……ここに来て私は、私のした事が間違っていなかったと証明されたんだ……」
挨拶をしてきたのでこちらも挨拶を返したのだがレーベンは何かを呟いており、彼の目は僕を見ていないように感じられた。
『なんかこの人、様子が変じゃない?』
そう思ったのはアヴェンジャーも同じようで、彼女は僕にだけ聞こえる声で話しかけてきた。
「……それじゃあ私はもう行くよ。試合ではよろしく頼むよ」
レーベンは言いたいことだけを言うと一度も振り返ることなく廊下の向こうへと歩いていった。
『一体あの人、何をしに来たの?』
僕の耳元でアヴェンジャーが呆れたような声で呟いた。
☆
レーベンと別れた後、僕は昨日に引き続いてアリーナで戦闘訓練をする前に腹ごなしをしようと学食に来ていた。
このSE.RA.PHの中では別に食べなくても飢えることはないのだが、それでも人間の三大欲求の一つである食欲を満たすことで気力を充実させることができるからだ。
「ん? あれは……」
注文した料理(言峰神父監修・激辛麻婆豆腐)を受け取ってどこで食べようかと考えていると、昨日出会った男子生徒の姿を見つけた。
男子生徒は昨日と同様に元気がなく、目の前に置かれている料理(僕と同じ麻婆豆腐)も一口も食べておらず、気になった僕は彼の所に向かうことにした。
「隣、座るぞ」
「え? 君は確か……」
断りをいれて男子生徒の隣に座ると、彼の方も僕のことを覚えていたようで声を上げた。
「昨日ぶりだな。……なあ、これは余計なお世話かもしれないけど、昨日も今日も顔色が悪いぞ? 本当に大丈夫なのか?」
「……うん。体調は大丈夫だよ」
現実世界での職業柄、気になって聞いてみると男子生徒は覇気のない声で答える。……体調は大丈夫か。ということはアレかな?
「もしかして聖杯戦争に参加したことが怖くなったのか?」
「……………うん。それもある」
一つ思い当たったことを聞いてみると、男子生徒は少し黙ってから肯定をした。
この聖杯戦争に遊び感覚で参加しているマスターというのは実は結構多い。一度でも負ければ死、というルールもよくある脅し文句だと本気にしていないマスターが参加者の大半を占めている。
ここにいる男子生徒も、最初はそんな遊び感覚で参加したマスターだったのだろうが、今になって聖杯戦争が正真正銘の殺し合いだと理解して怯えているのだろう。
まあ、僕も半分遊び感覚で参加したものだし、いまだに聖杯戦争が殺し合いだと気づいていないマスターも多いから、彼はまだマシな方だろう。
「えーと、君さ……?」
「北斗。青野北斗だよ」
「そうか。僕の名前は平和時行。それで北斗、あのさ……」
「あら? 他のマスターの相談を聞いてあげるなんて随分と余裕ね?」
男子生徒、北斗に何かを言おうとしたその時、隣から聞き覚えのある声が聞こえてきた。声をかけてきたのは、僕と年が同じくらいで艶のある黒髪をツインテールにした赤い服を着た女性だった。
『何この女? 私の真似なんかして髪をツインテールにしちゃってさ』
隣にやって来た女性を見てアヴェンジャーが何かを言う。いや、ちょっと黙って。彼女は君の真似なんかしてないからね?
「遠坂凛……?」
「ええ、そうよ。久しぶりね、平和時行君?」
僕が名前を言うと赤い服の女性、遠坂凛は笑みを浮かべた。
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