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僕のサーヴァントは魔力が「EX」です。

作者:小狗丸
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準備期間

 アヴェンジャーと契約をして予選を突破した僕は「本戦会場の」月海原学園の廊下を歩いていた。

「……それにしても分からないな」

「分からない? 何が?」

 廊下を歩きながら呟くと、隣を歩くサーヴァントの少女が聞いてきた。

「この建物のことだよ。予選といい本戦といい、何で聖杯戦争の会場が学校の校舎なのかなって思ってね」

「ああ、そのこと」

 アヴェンジャーは納得したように頷くと、僕の疑問に答えてくれた。

「この聖杯戦争はね、ずっと昔に地上で行われた聖杯戦争を模しているものなの。それでこの学園は、その時の聖杯戦争で戦いの舞台にもなったことがあるらしくて、だからSE.RA.PHはここを聖杯戦争の会場にしたらしいよ」

「なるほど。だから予選もあんな内容だったわけか……って、ここか」

 話をしているうちに僕達は目的の場所に着いていた。そこは二階にある教室の一室で、扉に予選を突破した時に与えられた携帯端末をかざすと、扉から何かの呪文のようにも聞こえる電子音が聞こえた。

 大会運営からの説明が正しかったら、これでこの扉は教室じゃなくて僕達の「ホーム」に繋がるんだよな。

 ホームというのは聖杯戦争の参加者がそれぞれSE.RA.PHから与えられるプライベートな空間で、聖杯戦争が終わるまでの間、僕達はこのホームで暮らすのだが扉を置けてみるとそこは学園の教室だった。

「……あれ? 教室? ここはホームじゃないのか?」

 思わず口に出た僕の言葉にアヴェンジャーは首を横に振って答える。

「ううん。外からの繋がりは遮断されているし、ここは私達のホームで間違いないよ。まあ、ここが不便だったら、調度品とかを作るなりどこからか持って来いってことなんじゃない?」

「そうか。……まあいいか」

 僕は近くにあった椅子に座ると自分と契約したサーヴァントの少女を見る。ホームのことよりもまず彼女に聞きたいことがあるからだ。

「アヴェンジャー。君に聞きたいことがある」

「あ~、それってやっぱり私の真名のこと?」

「そうだ。教えてくれ。君は何者なんだ?」

 言い辛そうな表情をするアヴェンジャーだが、これからの戦いを勝ち抜くためには彼女のことを理解する必要がある。それにあの「EX」とかいう馬鹿げたランクの魔力のこととかも教えてもらいたいからな。

「……はぁ、黙っていてもいつかはバレることだし仕方ないか。マスター、私の真名はね『瀧夜叉姫』って言うの」

「………!?」

 アヴェンジャーの口から出た名前に僕は驚きのあまり目を見開いた。

 瀧夜叉姫。

 平将門の娘の一人とされている伝説の妖術使い。

 本来の名前は五月姫と言い、天慶の乱で父親の平将門を討たれて一族朗党を滅ぼされた怨みをはらす為に、貴船明神の荒御霊から妖術を授かり、妖魔の軍勢を率いて朝廷に戦いを挑んだとされる女性。

 瀧夜叉姫に妖術を授けた貴船明神の荒御霊は「丑の刻参り」で有名な呪詛神で、そこに彼女自身のエピソードが加われば確かに「復讐者」のクラスを得ても不思議ではないかもしれない。

「つまり私は真っ当な英霊じゃなくて、過去の悪行を人々に恐れられてその末に崇められた祟り神みたいな存在……『反英雄』ってやつなの。どう? 驚いた?」

「それはまあ、一応……」

 アヴェンジャーの言葉に僕は正直に答えた。「復讐者」なんてクラスを得ているのだから何かあるとは思っていたが、まさかここまでとは思わなかった。

「それでその……マスターは……これから私と一緒に戦ってくれる?」

「ん? それは当然だろ?」

 珍しく気弱な表情となるアヴェンジャーだが一体どうしたんだ?

「確かにアヴェンジャーの真名には驚いたけど、君は僕のサーヴァントなんだから一緒に戦っていくのは当然だろ?」

「っ!? それって本当? ホントに本当?」

 僕の言葉にアヴェンジャーは驚いた顔になって詰め寄ってきた。何だ? 一体何に驚いているんだ?

「ああ、本当だ」

「……! ありがとうマスター! 嬉しい!」

「うわっ!?」

 突然僕にアヴェンジャーが抱きついてきたが一体何だ? 何がそんなに嬉しいんだ? ……というか胸! アヴェンジャーの! 背丈とはアンバランスに大きな胸が当たって……!

「そ、それより! まだ聞きたいことがあるんだ。君の魔力の事なんだけど」

「え? ああ、その事」

 僕が聞くとアヴェンジャーは体を離して説明してくれた。……少し残念だと思ったのは内緒だ。

「私の魔力のランクはスキルによるものなの。私は『妖術』っていうスキルを持っていて、妖術というのは『呪術』のスキルに『魔術』のスキルの一面を持たせたもので、簡単に言えば私は周囲の怨念や呪いの感情を自分の魔力に変えることができるの。そしてこの会場には、今までの聖杯戦争で負けたマスターやサーヴァントの怨念が残っていて、それのお陰で本来だったらBランクの私の魔力もEXにまで強化されているってわけ」

「なるほど」

 ようやくアヴェンジャーの魔力の高さに合点がいった。……でもBランクがEXランクにまで強化かされてるって、それって凄まじく強い怨念がこの会場に渦巻いているってことか?

 そう考えたのはアヴェンジャーも同じらしく彼女は真剣な表情となってこちらを見てきた。

「……マスター、気をつけてね。もしかしたらこの聖杯戦争、一筋縄じゃいかないかもしれない」 
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