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タイヤル族の服

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第二章

 彼は学生達、日本人も漢族も高砂族も関係なくだ。鳥来への旅に誘った。その旅の内容のことも話した。
「一泊の少ししたものだがな」
「あちらの温泉に入ってですか」
「ゆっくりと楽しむんですね」
「そうして鳥来の風景も楽しむ」
「そうするんですね」
「そうだ、来たい者は私に行ってくれ」
 こう自分が教えている生徒達に言うのだった。
「是非な」
「じゃあお願いします」
「是非共」
「そうしたお話があるのなら」
「我々も」 
 結構な数の生徒達が彼と一緒に行くと志願した。その規模はちょっとした修学旅行程のものだった。だが。
 彼は馬車の手配もして彼等を全員連れて鳥来に向かった、馬車にことことと揺られてそうして鳥来に来ると。
 緑豊かな山々でだ、その中に家があった。
 その場所を見てだ、柳原はこんなことを言った。
「日本にもこうした場所はあるが」
「それでもですね」
「日本の山の中にある集落とはですね」
「また違いますね」
「ここは」
「うむ、違う」
 こう生徒達に答えつつ橋のところにいった。
 橋から川が見える。緑の木々に覆われた白い岩も見える谷と谷の間に青い川がある。そのせせらぎの音も見事で。
 その緑の木々と白い岩の間、青い川の上にだ。赤い色の家々もある。柳原はそうしたもの全てを見て目を細めさせて言った。
「いいものだ」
「日本の温泉街に似ている様で」
 日本生まれの学生が言って来た。
「また違いますね」
「そうだな」
「しかも暑いですね」
「山の中でもな」
「そこはやっぱり台湾ですね」
「そうだな、しかしいい」 
 目を細めさせての言葉だ。
「こうした景色も」
「そうですよね」
「最高の景色だ」
「では大尉」
 今度は漢族の学生が言って来た。
「今度はです」
「何だ」
「何か食べますか」
「そうだな、こうした場所に来たならばな」
 どうかとだ、柳原は漢族の学生にも答えた。
「その地のものを食わねばな」
「それも楽しみですよね」
「待て、楽しみではあるがだ」
 それでもとだ、柳原は学生に真面目に返した。
「我々は学問の為に来ているのだぞ」
「この場所を見てですね」
「学ぶ為にだ」
 まさにその為にというのだ。
「来ているのだ」
「だからですね」
「そのことは忘れるな」
 決してというのだ。
「いいな」
「では食べることも」
「景色を見ることだ」
 例え楽しくとも、というのだ。
「学問だ」
「そのことはですね」
「忘れるな、いいな」
「わかりました、そういうことですね」
「そうだ、ではだ」
「はい、そのことを忘れずに」
「食おう」
 現地のものをというのだ。 
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