エターナルトラベラー
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第四十八話
さて、リオの引渡しも済んだし、お別れの挨拶も終えた俺は、リオのご両親にお礼を言われた後、退席した。
早く六課へと戻りグリード・アイランドへと行かないとね。
って、どうやって戻ろう。
六課からは車だったし、ぶっちゃけこの辺りの地理には詳しくない上に、お金も持ってないよ…
六課内でははやてさんから預かったカードで済ませていたし、そのカードもグリード・アイランドに入るときに預けてある。
うわっ…間抜けだ。結局もう一度戻ってフェイトさんに用立ててもらうしかないか。
そう考えていると、俺のズボンをひしっと誰かが掴んだ気配がする。
「うん?」
引っ張られた方を向くと、金髪に虹彩異色の幼女の右手が俺のズボンをしっかりと握っていた。
左手にはウサギの縫いぐるみを持っているようだ。
「…どうしたの?」
取り合えずやんわりと俺のズボンを握っていた手を離させると直ぐにしゃがみこみ、目線を合わせて問いかけた。
「…ママ…いないの」
「そっか。ママとはぐれちゃったか。どこではぐれたか分る?」
「…わかんない」
「そっか…」
困ったね。
うーん、取り合えず病院の受付に行って見よう。そうすれば迷子の案内放送くらいしてくれるだろう。
「お兄ちゃんが一緒に探してあげるから、一緒に行こう」
「本当?」
「ああ」
取り合えず幼女の手を握り、立ち上がる。
「…うん」
「それで?君の名前は?」
「ヴィヴィオ…」
「ヴィヴィオちゃん、ね」
何だろうね…さっきリオと別れたばかりなのに、今度は別の幼女の面倒を見ないとなのね…
俺はヴィヴィオの手を引いて歩き出す。
それにしてもこの病院、やけに広いね。
中庭を抜けるのも一苦労。
ヴィヴィオを連れて歩いていると向かいから歩いてくる管理局の制服を着たなのはさんだ。
「あ、アオ君が見つけてくれてたんだ?」
「あれ?なのはさんも来ていたんですか?」
「うん、その子の様子を見にね」
そんな会話をしていると、風を切りさいて上空から殺気を振りまいて魔導師らしき女性がなのはさんを守るように現れた。
「っ!」
俺は咄嗟にヴィヴィオを抱え込んで後ろに思い切り跳躍した。
殺気からヴィヴィオを守るように抱っこして顔を此方に向かせ、向こうに意識を向けさせないようにする事でヴィヴィオの心を守る。
こんな子供にあの殺気は毒だ。
下手をすれば一生のトラウマになるかもしれない。
……俺やソラ、なのはは同じ年で、もっと凄い殺気を浴びていたけれど…それは家庭環境の違いだろう…たぶん。
さて、それよりも目の前の彼女だ。
両手はヴィヴィオを抱えているので動かせない。
魔法攻撃はソルがいるからシールドを張れるだろうが、両手に持っているトンファー型のデバイスを見るからにインファイター。
オーラを両足に集めて強化する。
いざとなったらいつでも逃げれるように。
ググッとトンファーの女性の四肢に力が入る。
「シスター・シャッハ。ちょっとよろしいでしょうか」
此方を警戒していたトンファーの女性。シャッハと言うらしいその女性が、後ろにいたなのはさんの声でその緊張が緩む。
「あの…、はあ」
不承不承といった態度では有ったが臨戦態度を緩めてくれたらしい。
と言うか、俺には何故武器を向けられたのかも分らないのだけれど。
「あの、アオ君。わたしたち、その子の事を探していてね。…ちょっと事情のある子なんだ。だから、いっしょに来てくれると助かるんだけど」
まあ、俺は取り合えず病院の受付に連絡を取ってだれかに引き取ってもらおうと考えたし、なのはさんの管轄内ならば大丈夫だろうと考え、なのはさんの言葉に頷いた。
さて、あの後シャッハ・ヌエラと名乗った女性にお詫びを言われ、まあ、俺には直接被害が無かった事もあり、気にしていないと答えた後、なのはさんの計らいでヴィヴィオを連れて三人で機動六課へと戻った。
戻るさなか、念話でヴィヴィオの大体の現状を教えてもらった。
先日保護した違法研究で生まれたかもしれない人造魔導師の素体の可能性が高いらしい。
本来ならば俺には教えるべきでは無い情報だが、ヴィヴィオが俺から離れないのでかいつまんで教えてくれた。
六課についてもヴィヴィオは俺のことを放してくれない。
なのはさんが自分の事を心配してくれているのが分るのか、だんだん心を開いてくれているらしいのは見て取れる。
そして夜。
「ヴィヴィオ、そろそろ放してくれない?」
「…やぁ」
嫌って…
「ヴィヴィオ、アオお兄ちゃんも用事があるんだよ。余りわがまま言わない」
「やぁだっ」
さらにしっかりと握られる俺のズボン。
取り合えずなのはさんの部屋で預かる事になったらしいヴィヴィオをつれてなのはさんの部屋に行ったのだけど…
「ほら、ヴィヴィオ、そろそろ寝る時間だよ。俺は自分の部屋に戻らないとだから放して」
「そうだよ、わたしが一緒に寝てあげるから」
「アオもいっしょにねる?」
一緒にって…まあ、なのはと一緒に寝る事なんてしょっちゅう有るけど…
じっとなのはさんを見る。
あ、眼が合った。
びくっとした後、顔を赤らめて俯いてしまったなのはさん。
おや、少しかわいい反応。
「そっそれはねっ!ちょっと、えっと、その…ね?」
ね?と言われても子供は分らんて。
「アオ君だって困るよね?」
「うん?別になのはとなんていつも一緒に寝てるけど」
「いつも一緒に!?」
「一週間の内半分は家に泊まりに来るし、いつの間にか俺のベッドに入っていることなんてしょっちゅうだったね」
「そ、そうなの!?」
まあ、このなのはさんは俺の知っているなのはではないし、異性と一緒に寝た事なんて自分の父親くらいしか無いのではないだろうか。
「そうですね。とは言え、さすがになのはさんとなのはは違いますね」
年齢も俺よりも上だし、その体は少女ではなく大人の女性だ。
流石にやばいか。
うーん。
仕方ない。
「ヴィヴィオー、なのはさんも困っているから、今日は俺の変わりに猫でも抱いて寝てよ」
「ううーねこ?どこにいるの?」
「ちょっとまってて」
一瞬で俺の体が溶け、その後には一匹の猫が姿を現す。
「え?え?アオ君って変身魔法使えたの?」
「ええ、まあ」
「わあ、ねこちゃんだ。おいで」
「はいはい」
とてとて歩み寄る。
「にゃんにゃん」
されるがままに撫でられている俺。
その後ぴょんとベッドの方へと飛び移る。
「ヴィヴィオーおいで」
「うん」
くるんと丸くなった俺を抱き寄せるように横になるヴィヴィオ。
「わあ、ふかふか」
それはベッドなのか?それとも俺か?
まあ、どちらでもいいか。
「え?まあ、猫なら?うん?でもあの猫はアオ君だよね?だったら…でも…あ、そう言えば昔ユーノくんも動物になって一緒の部屋で寝てた事が?あわわ」
なんか混乱しているなのはさんをよそにヴィヴィオの寝息が聞こえてくる。
しかし、その手はしっかりと俺をホールドしている。
抜け出せなくは無いけれど…今日一日くらいは付き合ってやってもいいか。
ソラたちにはちゃんと謝ろう。
「くぅ…」
隣に感じる小さな寝息と、高い体温に俺も次第に眠りについた。
「うにゃぁ…二人とも寝ちゃったし、どうしたらいいの?うーん、大丈夫だよね、アオ君にしてみたらわたしは妹みたいなものだし。うん、それじゃわたしも一緒に…うわぁ、あったかい」
なんだかんだ混乱しながらも結局なのはさんはベッドに入ったようだった。
意識が覚醒する。
一晩の間にヴィヴィオの拘束も解け、ようやく自由に動けるようになった。
布団から抜け出ようともぞもぞ動いてどうにか枕元へと移動する。
左を見るとどうやら観念して一緒に寝ているなのはさんの姿が。
右を見ると…うん?いつの間にかこのキングサイズのベッドに入り込んで寝ているフェイトさんの姿があった。
それもさも当然のような感じで…
そう言えば、この部屋は二人でシェアしていると聞いていたが、ベッドが一つしか無かった。
…つまり二人は毎晩一緒に寝ていると言う事?
何?もしかして二人はそう言った関係?
うわぁ…ユーノ頑張れ、マジで。
まあ、俺は見なかったことにしよう。その方が俺の精神衛生上いい気がする。
俺はベッドを抜け出すと、前足を手前に伸ばし、後ろ足を伸ばすとグッと背筋をのばした。
さてと。
「もう行くの?」
俺の後ろ、ベッドの上に、上半身だけ起き上がったなのはさんが眠気眼でこちらを向いている。
「そろそろ戻らないとね。ソラ達も待ってる」
「そっか。そうだよね」
「その子…ヴィヴィオの事は任せてもいいんでしょ?」
「任せてよ。ちゃんとヴィヴィオちゃんの面倒は見るよ。少し事情が複雑だけど、ちゃんと受け入れてくれる家庭を探すつもり」
「そう」
「……なんかアオ君ってわたしの事、妹扱いしてない?」
「うん?そうかな。うーん、ちゃんとなのはさんとなのはは別人だと認識していると思うんだけどね。ごめんなさい、少し気が緩んでしまってました」
そう言えばもう少し丁寧口調で接していたような気がする。
一月以上もゲームの中だったから忘れてしまったか?
「ううん。いいの。なのはちゃんと同じように話してくれていいから」
「そう?」
「うん。今まで少し距離を感じてたからね。過去のわたしがあんなに懐いているのを見るのは凄く不思議な気持ちだったけれど、ふふっ、少しだけ分った気がする」
うん?
「なんでもない。行ってらっしゃい、お兄ちゃん」
「……行ってきます」
なんか最後はからかわれた様だが、まあいいか。
一応はやてさんにメールを送信し、俺はグリード・アイランドへと戻った。
再び降り立ったグリード・アイランド。
ソラたちに念話を繋げると、マサドラの宿屋に居るそうだ。
俺は強化した四肢で全速力で草原を駆け抜け、岩場を走破し、ソラ達に合流する。
宿屋の宿泊部屋のドアを開け、中に入る。
「あ、お兄ちゃん。お帰りなさい」
「ただいま、なのは」
「お帰りなさい、アオ」
「おかえり」
「ただいま、フェイト、ソラ」
挨拶を済ませると、取り合えず俺はソファに腰掛ける。
「ゴメン、少し事情があって遅れた」
「…まあ当初に設けた期日以内だったから良いけどね。
そうだ。スペルカードは40種類コンプリートできたわ。まあ、使うのはお金だけだったしね。ダブりカードなんかを売却すれば良いだけだしね」
まあ、Bランク以上の指定カードの売却値段は1000万Jとかが相場だしね。
その代わり、Bランク指定カードの店売りの値段は億からだったけどね。
「おお。大天使の息吹は?」
スペルカード40種類集める事で手に入れられる、どんな怪我も一度だけ治してくれる指定カードだ。
「…残念だけど、引換券だった」
引換券。
つまり、すでに3枚、カード化されていて、誰かの使用待ちと言う事か。
「まあ、それは仕方ないよ。他のスペルカードは?」
「堅牢は二枚目以降は擬態で増やしたのも含めて全て使ったわ。だから私のバインダーの指定カードのページは全て守られている。…私のバインダーでよかったの?アオので良かったんじゃない?」
堅牢さえ使ってしまえばカードをスペルカードで強奪される心配は無い。
「俺はまた外に出る事もあるかもしれないし、ソラが適任」
「そう、わかったわ」
「神眼は?」
「私が優先的に使ったけど、ダブった分はなのはとフェイトが使ったわ。残りは無し。後、『堕落』のカードを使ってダブっていたBランクカードをDランクカードNO84『聖騎士の首飾り』に変換して置いたから」
とは言え、ランクDの指定カードはそれだけだけどね。
「宝籤は?」
「当たったはじから使ったよ。何枚当たったかもう分らないけど…Aランクカードが10枚、Bランクカードが21枚。後はなんか良く分らないアイテムカードだった」
俺の問いになのはが答えてくれた。
「それも直ぐに売ってお金に変えて買い続けたからね。今は何も残ってないよ」
続けたのはフェイト。
まあ、指定カードとスペルカード以外は基本的に必要ないから(食料等をのぞく)その判断で間違いない。
「なるほど。そう言えば『奇運アレキサンドライト』は?」
「まだ取ってない。と言うか、私じゃまだイベントを起こしていないしね」
ソラは今までずっとリオに付きっ切りだったしね。
「そっか。じゃあ、『聖騎士の首飾り』の首飾り貸して、後で俺が取ってくるよ」
「分った。『再生』は取ってあるから大丈夫だよ」
『聖騎士の首飾り』はランクD。『再生』が使えるのはランクC以下のカードだから、カード化しても元に戻せるなら使っても大丈夫だ。
「『漂流』もすでに50回使用してドントルマに行って来たよ。…なんか私達がプレイした時よりもヴァージョンアップされてるみたいだったけれどね」
なにそれ、怖い。
ただでさえあのクエストの難易度は高いのに…
さて、それを踏まえて今後の行動指針を立てよう。
攻撃スペル等は全部売り払って良いだろう。
必要なのは移動形のスペルや、複製系のカードだ。
防御系は『聖水』が全員分有ったので直ぐに使用し、後は売り払う。
後はどのカードから取るかだ。
『神眼』を使用しているソラが検索した所、高ランクカードですでにカード化枚数がMAXなのが『一坪の密林』『大天使の息吹』『闇の翡翠』『浮遊石』『身代わりの鎧』とかなりの数がある。
これらのカードを俺たちが手に入れる方法は幾つかある。
トレードか奪うか。
スペルカードによる奪取は性質上ランダム性が高い。
確実に手に入れたいならばトレードと言う事になる。
そうなると、高ランクカードを取ってそれをスペルカードで増やしてトレードが望ましい。
今残っている高ランクカードで誰も手に入れていないのは『一坪の海岸線』と『モンスターハンター』
『一坪の海岸線』は参加人数が15人必要なクエスト。
影分身は同体を作る忍術ではあるが、どうだろう?
同一アカウントとみなされてクエストが発生しないと思う。
それに一人一試合がルールで15試合中半分以上勝たないと行けない。
さて、影分身が一人分とカウントされるかどうか…
それに過度の衝撃に耐えられない影分身には少し荷が重いきがする。
前回はほぼ横で見ていたような状態だったレイザーさんとのドッジボール。
あの球を影分身が受け止める事ができるかが問題だね。
まあ、取り合えずレイザーさんの所に行って見れば分ることだが…
取り合えず今現在取れる方。『モンスターハンター』を狙うと言うことでまとまった。
後書き
今回はstsの世界にいる以上はずせない、ヴィヴィオに会いましたよと言うお話。
つまりフラグですね。
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