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学校の小さな防人

作者:ナンブー
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ACT.1 「仮想の初戦」

浜松市立南高校 8月29日

今日は2学期が始まる日。だから学校は午前中で終わる。だが、それは一般の生徒の話であって、「彼ら」は違う。

各国の特殊部隊で採用されているA-TACS市街地戦迷彩を着用し、誰も居なくなった学校を部隊に、犯罪者相手に追いかけっこをする彼ら。

腰のホルスターには各々が選択した拳銃が収まり、頭の紺色戦闘帽には「H-SOUTH」と所属がマーキングされている。

追いかけっこと言っても実質的には「サーチ・アンド・デストロイ」、つまり、見つけたら排除するルールになっている。ただ、彼らの信条は「不殺」なので、昏倒させる=排除になっている。その証拠に、彼らが装備している銃器はすべて暴徒鎮圧用の軟質プラスチック弾を使用している。

H-SOUTH.3…浜松市立南高校SDFチーム3はテロ対策演習を行っていた。

勿論の事、弾は軟質プラスチック弾を使用。テロリスト役はチーム4が担当。武器の使用は無制限というルールで演習を行った。

結果は敗北。理由はチーム3が新しく創設されたチームだということ、また、新隊員が7人中4人という割合で配属されているため、個々の連携が取れていないことが挙げられる。

チーム3分隊長、長門恵介は隊長である先輩に結果を報告した後、待機室である2ー1組教室に入った。

中に入ると分隊全員が戦闘服から制服に着替え終わっていた。

顔はどれもどんよりしている。負けたからだろう。

「…まぁ、初戦だから仕方が無いよ…」

何とかして慰めようとするが、隊のテンションは一行に上がらない。

そんな分隊は7人編成。これは、SDFの分隊基準より2人も多い数である。

分隊長の長門は2年生。将来は陸上自衛隊の普通科に所属したいと思っている。使用武器はH&K社のHK416D。拳銃は同じくH&KのUSP.45タクティカルを使用。

副分隊長は2年生の真田拓馬。分隊狙撃手を担当。性格はいたって普通。使用武器はDSR-1、拳銃はベレッタ社のM93R。

SDF数少ない女性隊員の中の一人、伊吹芽衣も2年生。近接格闘術等高度な格闘術が使えるが、性格は大人しめでいじめられていた過去を持つ。使用武器はH&KのMP7A2短機関銃。拳銃はグロック社のG17。

丸坊主の土岐司は1年生。あだ名は「マルコメ」。何故か仏教のお経をほぼ暗記している。使用武器は自衛隊正式採用の89式小銃。拳銃はこれまた正式採用のシグザウアーP226。

土岐といつも一緒に居る長谷守も1年生。上に従順な人柄。身長181cmの巨体。使用武器はシグ社のSIG552アサルト。拳銃は警察が採用していたニューナンブM60。今は芽衣が装備しているG17に更新されている。

短髪が似合う柴田雅之は1年生。あのテニス選手のように絵を描いたような熱血。使用武器は土岐と同じく89式小銃。拳銃はベレッタ社のM92FS。

分隊最後の一人は女性隊員の柿原ゆうき。身長175cmがコンプレックスらしい。人懐こい性格で、入学当初から芽衣と仲が良い。また、第二の分隊狙撃手を務める。
使用武器はH&KのG3/SG-1。拳銃はスプリングフィールドのXDハンドガン。

そんな個性豊かな面々だからこそ、コントロールが難しい。だから今回の演習で仲間間のミスを連発し、仮想敵に敗北したのだろう。

はぁ、と溜息を付く間にも無情に下校時間は迫り、各々解散することとなった。

「はぁ…どうしたものか…」

二年生になっての最初の難題が長門の前にどさっと落ちて来ていた。
 
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