魔法少女リリカルなのは 異形を率いる男
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9.動揺
前書き
更新が遅れてすいません。
次もこちらの都合で遅れてしまうかもしれません。
海鳴市内のとある神社。
その神社の階段を駆け上がる人物がいた。
朝霧夜市である。
そのまま夜市が階段を上がりきろうとした時、強い光が彼の視界を覆った。
光が収まった時には、そこには通常から考えれば異常としか考えられない様な大きさの、黒い犬のような生物がいた。
だが、その体には本来、生物には無いような装甲のようにも見える部分が存在し、犬であるの面影は骨格程度しか残っていない。
「遅かったか…確か、元は犬だったか?」
薄れてきた前世の記憶を探りながら、周囲に結界を張る。
「ただの子犬が何を考えていたらこんなに凶悪な体になるんだよ」
自らの疑問を呟いていると、巨大な犬が跳び上がろうと体を低くする。
「マスター、来ます」
ブラックはそう言うと夜市の指示なく、バリアジャケットである黒いロングコートと顔の半分を覆うゴーグルを展開した。
前回と違う点は手に握られている物が大型の拳銃ではなく、細い布の巻かれたホッケースティックとなっていることだ。
犬は夜市のバリアジャケットが展開された直後に跳び上がり夜市に向かって、周辺にある木など簡単に、それこそ熱したナイフでバターを切るかの様に切り倒すことが想像できる爪を振り下ろしてきた。
その攻撃に対し、夜市はスティックを野球のバッターのように構え、真っ向から迎え撃った。
スティックと爪が激突する直前、犬の体から、橙色のアキアカネが飛翔し、それは夜市のスティックに入り込んでいく。
いくら、魔法で肉体を強化していようとも、所詮は子供の力であり、結果は見えている筈だった。にも関わらず、爪とスティックが激突した瞬間、一瞬の拮抗も無いほど簡単に犬の方が吹き飛んだ。
そして犬が吹き飛ばされた瞬間に周囲から大量のアキアカネが飛び立ち、犬に光の束となり、入り込む、犬は後ろにあった神社の本殿に直撃した関わらず犬はそれを貫通し尚も直進し続け、地面を抉りながら数十メートルもの距離を進みようやく止まる。
それでも尚、犬は何とか体を動かそうとするが体はほとんど動かず、低く唸ること程度しかできない。
「まだ動こうとするのか。早く終わらせよう。ブラック」
その冷静な一言で夜市の手に握られていたホッケースティックは大型の拳銃に変化する。そして、その銃口を犬に向け、引き金を引く。
銃口から撃ち出された魔力の塊は光の尾を引きながら犬に当たり、光の柱を出現させる。
「ジュエルシード、シリアル16封印」
その言葉を合図に、菱形の青い宝石が犬の体から浮き出てきた。
「なぜ、それを回収しているんですか!?」
夜市が封印し終わった菱形の宝石、ジュエルシードを回収しようとした直前に、その声は聞こえた。
「それは僕が回収しなければいけない物なんです。渡してはくれないですか?」
細長い体をした小柄な動物であるフェレットが発した言葉だった。
通常から考えれば異常な事であるはずではあるが、魔法の存在することを知る者であれば、それは異常では無く、通常な事として認識される。
だが、得体のしれないフェレットがそれは僕のですから渡してくれませんと言って渡すようなお人好しはそうそう居ないだろう。
その上、後ろからついて来た人間が年端もいかない少女であることが信憑性を恐ろしく下げている。
確かに夜市は真実を知っていが、それだからと言って渡すような人間ではない。
「誰が、得体の知れないフェレットに『それは僕のものですから渡してください』と言って渡すような奴が何人いると思う?」
夜市は溜め息交じりにそう言う。
「それでも、僕の考えが正しければ、あなたは僕がこれを集めている事を知っているんじゃないんですか?」
一瞬、コンマ一秒にも満たないほどの時間だが、確かに夜市は動揺した。
正直、意外だったのだ、ばれている事が、必死に逃げていた事やなのはの潜在能力の方に気が行き此方の方にはそこまで気が行かないと思っていたが、誤算だったようだ。
「やっぱり昨日、僕たちを見ていたのは貴方だったんですね」
「まあ、それが分かったところで、こちらに渡す気は無いがな。今日はこのあたりで帰らせてもらおう」
夜市がそう言った直後、その体は霧散するかの様に何処かに消えてしまった。
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