ガンダムマスター シンデレラ達の探訪記
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第一話『シンデレラ始動』
side―卯月―
凛ちゃんや未央ちゃんと一緒にブルーフィングルームへと向かっていた。
そう、これから各世界を旅する際の母艦となるキャリーベースの通路をガイドレバーを摑んで通っていた。
「いや~、久しぶりになるよね…。皆に会うのは…」
「仕方ないよ…未央。だって、この前会ったのは『OVER WORLD』で起きたアメリアス事件での時だったからさ…」
「うぅ…、そうなんだけどさぁ」
「ふふ、分かるよ未央ちゃんの気持ち。でも、本当に大変だったよね…あの時は…」
その中で親友の二人と一緒に他愛も無い雑談をしていくも、凛ちゃんの言葉の中から出てきたアメリアス事件を思い出してフッと懐かしむように思い浮かべる。
アメリアス事件…。それはジェネレーションシステムを乗っ取ろうと言う悪巧みを抱いた一人の女性―アメリアスによって起こされた物で、アプロディアから『肉体コード』を奪い、彼女に成りすましたアメリアスの巧みな言葉に操られて各ガンダム世界の戦士達がオーバーインパクトを引き起こすバルバドロを血眼になって探し回る。
まぁ…、私達も騙されてそのバルバドロを追走して倒しちゃったんだけど…。でも、途中でそのアプロディアが偽者だと気付いて、本物のアプロディアやその彼女に付き添っていたコード・フェニックスさんと共に何とか彼女を倒しす事に成功。その際に、アメリアスが自身の能力『裏切りのコード』を消去されて、少女の姿になっちゃって…。その後も色々とあったけど…。それはまた別の機会に…、後あの大量のハロ軍団はトラウマになり掛けたかな…。
その懐かしい思い出にふけたりしていると、ブルーフィングルームへと辿り着いた。
「たのもぉ~!!」
冗談交じりに勢いよくブルーフィングルームの室内へと入っていく未央ちゃん。
私と凛ちゃんはそのはっちゃけ振りに苦笑しながら、後に続いて中へと入っていく。
そのブルーフィングルームの室内には顔馴染みの少女達が何人もおり、皆がこちらに顔を向けてくるとその表情には自然と笑顔が零れていた。
すると、皆が一斉に駆け寄ってきて懐かしむように見つめてきた。
「お久しぶりですね…、凛さん」
「その様子だと、余り変わってないね。肇…」
丁寧な敬語を使ってくる少女―肇ちゃんはたれ目を細めて穏やかな口調で喋ってくる。その声音からは再会の嬉しさが伝わってきた。
肇ちゃんは昔から共に戦ってきた仲間の一人で、MS小隊『藤原隊』の部隊長を務める程の実力を持っていて戦場で戦うその彼女の姿は鬼神を思わせる程。
でも、普段の彼女は温和な性格をしていてたれ目な事もある為に柔和な印象が一層強く、初めて出会った頃は日常と戦場とでの激しい彼女のギャップに驚かされたのが今でも記憶に残ってる…。
「Давно Не Виделись(ダブノー 二ェ ヴィーヂェリシ)。お久しぶり…、未央」
「やっほー、アーニャ」
銀髪の少女―アーニャちゃんが青い瞳に未央ちゃんを映して、笑顔で言葉を送る。
アーニャちゃんは『PORTABLE』時代から一緒に戦ってきた戦友で、実力も高くシンデレラメモリーズでは一、二を争う程。まぁ…、本人は謙遜しちゃって「そうじゃない」の一点張りだけど…。
でも、肇ちゃんの部隊に所属しているアーニャちゃんは部隊長である彼女からの信頼も厚く、背中を預けられる存在らしい…。『WORLD』からは副隊長に任命された。
また、普段は人当りが良く優しい性格であり、シンデレラメモリーズのメンバーからも良く頼りにされている。その為、アーニャちゃんが過度な疲労で倒れてしまうのではないかと心配してしまう。
「卯月ちゃん、元気にしてた!」
「うん、元気にしてたよ! 美穂ちゃん」
元気そうに尋ねてくる少女―美穂ちゃんに私も笑顔で返答する。
美穂ちゃんは肇ちゃんと同じで昔から共に戦っていた古い戦友で、私や凛ちゃん、未央ちゃんが所属する『小日向隊』の部隊長を務めている。
ここも肇ちゃんと同じで総合能力が高く、格闘戦が得意な為に接近戦に特化した機体に乗って戦えばアーニャちゃんに渡り合う程の実力を持っている。
戦場に出ると頼もしい存在になるけど…、その分日常とのギャップが激しすぎるのである。
本当にその姿は懐かしくついじっと見つめてしまうと、
「あの…さ、卯月ちゃん…。そんなに見つめられると恥かしいんだけど…」
彼女は一瞬にして両頬が赤面して、恥ずかしそうに視線を逸らした。
そう、日常の彼女はこうやって視線を感じると直に羞恥心を抱いて、頬を赤面させ視線を逸らす。
私は当初その事に嫌われているのではないかと思い違いをしていた事があったが、今ではその彼女の動作に愛くるしさを覚えてしまい、その瞬間彼女が小動物のように見えてしまう。
「うん…なんだ「相変わらず、か…かわいいよぉー。みほちぃ―――!」かって、え…!?」
その可愛さの余り未央ちゃんは勢いよく彼女に抱きついた。私はその突然の出来事に目を丸くしてしまう。
抱きつかれた美穂ちゃんもまた驚いた表情をしていた。
「くっ苦しいよぉ…、未央ちゃん」
「ハッ…、御免…みほちぃ」
必死になって苦しみを訴えてくる美穂ちゃんに未央ちゃんは正気に戻り、顔全体が熟れたトマトのように真っ赤になってしまった美穂ちゃんを離す。
美穂ちゃんは解放された事にホッと胸を撫で下ろすと、自らの犯した過ちに項垂れていた未央ちゃんに気遣うように笑顔を送ってくれた。
「大丈夫だよ、これくらい…」
「うぅ、優しすぎるよ…みほちーは…」
未央ちゃんはそんな彼女の優しさにポロリと涙が出てきそうになるが、周囲から送られてくる冷たい視線にうっと息を飲んだ。
「未央、行き成り抱きついて美穂に迷惑かけるんじゃない」
「そうだよ! それに美穂ちゃんとは私が話していたんだから…」
「う…、何か酷い事言われてる。まぁ、私が悪いんだけど」
だが、そこに私と凛ちゃんの非難や怒りの言葉が放たれ、未央ちゃんの心を抉っていく。
そのダブルパンチに力なく床の上に倒れ込む未央ちゃんの姿に皆から笑い声が生まれる。
「すみません、皆さん。遅れてしまい…」
「わ、私は戦場になんて行きたくないのに…。唯、ダラダラしていたい…それだけなのに」
行き成り入口の方から申し訳無さそうな声が聞こえてきた為に振り向く。そこにはキャリーベースの副艦長である千川ちひろさんと彼女に引き摺られてきた小さな少女―双葉杏ちゃんが拗ねたような表情を浮かべていた。
二人の髪は乱れて、身に纏っていた衣服の彼方此方に皺が寄っていた為に、何があったのかと一瞬考えてしまう。
まぁ…、面倒くさがり屋な杏ちゃんが「戦いたくなんかない…」って小さな子供みたいに駄々を捏ねていた所をちひろさんによって無理やり連れてこられたのだろう。
「皆さん久しぶりですね、キャハッ!」
「未央ちゃん…大丈夫?」
ちひろさん達が室内に入ってくると次に 菜々ちゃんと美羽ちゃんが姿を見せた。
奈々ちゃんは私達を視界に映すと同時に声を掛けてくる。美羽ちゃんは未央ちゃんを心配そうに眺めていた。
奈々ちゃんもまた昔から一緒に戦っている仲間で、美羽ちゃんはアーニャちゃんと一緒で『PORTABLE』時代から共に旅をしてきた戦友。
因みに杏ちゃんは操舵手で、美羽ちゃんが整備士。 菜々ちゃんがオペレーターや医師などの残りの役割を担っている。
「では、全員が集まった所でこれよりアプロディアから授かった指令やこれから私達が行動する上での目的などを説明していきますので、席について下さい」
私がその事を考えていると、ちひろさんの大きな声がブルーフィングルームの室内に響き渡り、皆が其々の席についた。
昔一緒に戦っていた残りの仲間―楓さんや藍子ちゃん、茜ちゃん、みりあちゃんの姿がどこにも見えないんだけど…。
私はその事に不安になり、右隣の席に座っていた凛ちゃんと顔を見合わせた。他の皆もそわそわと話し合っている。
楓さんはカリスマ性があり、統率力や指揮能力も高かった為にアメリアス事件まで艦長を務め、私達を勝利へと導いてくれた。
その組織の中心とも言える存在である楓さんの姿が見えなかった事が理由で、皆が不安そうな表情をして話し合うのは理解できる。私だってそうなのだから…。
「あのすみません、ちひろさん。楓さん達は一体…」
未央ちゃんが遠慮もせずに、皆の内心を代弁するかのようにちひろさんに尋ねた。でも、私達も気持ちは同じで、心の中で疑問になりながらもちひろさんを見つめた。
「楓さん達は…アメリアス事件で負った傷を癒すべく、プロデューサーの指揮下の元で待機中。傷が治り次第、私達と同じく行動をするようです。それまでは私が艦長代理となります」
ちひろさんは一瞬言葉を濁すも、意を決して未央ちゃんの疑問に答えて行く。
「そうなんですか…」
未央ちゃんはかくん、と顎を落とした。私達も動揺してしまう。
「…となると、私達の部隊は二人になって厳しくなりますね」
肇ちゃんが表情を顰めて、悩むような声を上げた。実際に藍子ちゃんや茜ちゃん、みりあちゃんはMSのパイロットを務めており、藤原隊に所属してた。その為、その三人が抜けるとなると肇ちゃんの部隊は一気に戦力がダウンしてしまう事になる。
「肇ちゃん、その件なら大丈夫です。直にアプロディアから人員補強の形で二、三人新しく手配して貰えるみたいなので…。もう既にその一人が到着しています。入って来てください」
ちひろさんが自信に満ちた表情を浮かべて断言するかのように言い切ると、ブルーフィングルームの入口を見つめて入ってくるように促す。
私達はその人物が誰なのか興味を持ち、視線を送った。 プシューと音を立てながら、開く自動ドア。完全に開くと同時に、小さな一人の少女が様子を窺うようにこちらを覗いてきた。その両頬は羞恥心で赤面しており、瞳はうるうると揺れていた。
「あ…」
その彼女の小動物を思わせる動作にある一人の仲間が脳裏に思い浮かぶ。そうだ、この子…美穂ちゃんに似てる…。
当の本人である美穂ちゃんはそんな風に思われている事も知りもせずに、隠れる少女に対して小声で「可愛い」と呟いていた。
でも、私が感じたのはそれだけじゃなかった…。
「ッ…!?」
一瞬、脳に一つの閃光が走るとその痛みで顔を顰めるも、直にその閃光が走った原因である少女を見つめた。凛ちゃんも同じであったのか、新入りの少女を凝視していた。
もしかして、この子…私や凛ちゃんと同じNT…。
「こちらに来て自己紹介をお願いします、由愛ちゃん」
その急かすようなちひろさんの声に彼女は小さく動揺を見せるも、小さく決意を決めてちひろさんの元に歩いていく。その足取りは固く、緊張で表情が強張っていた。そして、ちひろさんの元に辿り着き、自己紹介を始めた。
「わわわ…」
「由愛ちゃん、落ち着いて…。一回、深呼吸して」
緊張の余りに頬が固まってしまい、上手く話せないのか…一つの単語を連呼するのみ。だが、一度空気を吸い込むようにちひろさんに指摘され、空気を吸い込んではいた。
「私は…成宮由愛…と申し…ます。この度…人員補強と言う形で…藤原隊に配属…される事になりました。皆さん…宜しく…お願いします」
途切れ途切れではあるが、勇気を振り絞って声を出す由愛ちゃん。
「よろしくね、由愛ちゃん」
「よろしくゆめちん」
「宜しくお願いします」
其々挨拶の言葉を返すと、由愛ちゃんの頬がまた一瞬にして真っ赤になっていった。
そんな彼女をちひろさんが席まで誘導していく。彼女は肇ちゃんの隣の席に座って、その後ろにはアーニャちゃんが座っていた為にお互いに軽い挨拶を交わしていた。
ちひろさんが元の場所に戻ると、
「これで紹介の方はすみましたね。では、これよりアプロディアから授かった指令を説明していきます。彼女から受け取った指令は『SPIRITS』時代までと同様に各ガンダム世界に起きた戦争の歴史の記録を行う事ですが、今回はその詳細な部分―例えば、今までホワイトベース隊と行動を共にして一年戦争の記録を行っていましたが、今回は他の部隊とも行動してまだ目にしていなかった戦いなどの記録活動を行っていきます。それが、私達の『シンデレラメモリーズ』の行動方針になります」
アプロディアからの指令や今後の私達の行動方針なども説明してくれる。
皆がこくりと頷く中、私は少々内心であり一つの疑念が生まれてくる。
「あの、すみません。それって他にも記録対象となる部隊―ホワイト・ディンゴ隊や第08小隊などが色々とあると思って良いんですよね。もしかして、その全ての部隊の記録活動を私達の部隊だけでやると言う事になるんですか…」
そう、私達だけで記録活動を行うにしてもその行動範囲には限界が出てくる。その私の言葉に皆も悩むような表情でちひろさんを見つめた。
「別に私達だけで全ての部隊の行動を記録すると言う訳ではありません。それに記録対象となる部隊は地球連邦だけでなく、ジオン軍にも幾つか存在しております。悪魔で私達は今までと同じでホワイトベース隊と行動を共にしつつ、彼らの戦いを記録していく事です。後は、たまに第11独立機械化混成部隊とも行動するくらいで…、他の部隊には別の人達が調査に向かいます」
「つまり、私達以外にもその記録対象となる部隊―ホワイト・ディンゴ隊などに近付いて彼らと行動を共にして、その戦場で起きた戦いを記録する者達が他にいる…」
私の質問に詳しく答えてくれるちひろさん。その後に、凛ちゃんが顎に手を当てながら自身の考えを述べていく。
「そういう事ですね」
その凛ちゃんの解釈の仕方が合っていたみたいで、ちひろさんが笑顔で肯定した。
じゃぁ…、その子達ともどこかで会う事になるのかなぁ…。
その時、激しい警告音が鳴り響き、皆でブリッジに向かうと民間人を乗せたホワイトベースに向かって二隻の戦艦が航路を進んでいた。次第に近づいていき、七機のザクが母艦から出撃してきた。その内の一機は赤い機体であり、それはシャアの搭乗している機体だと認識できる。
ホワイトベースからは出てきたのはガンダムの一機のみ。
MSの性能で勝っていても、圧倒的な物量の前でそれは無に等しい物である。
「これは少々危機的な状況ですね…。美羽ちゃん、機体の整備は…」
「もう卯月さん達が来る前に全機体の整備は完璧にしておいたので大丈夫です」
ちひろさんはやや焦ったような声で問うも、美羽ちゃんは力強い声で応答する。
「仕事が早くて助かります…。では、これより本艦は戦闘態勢に入ります。各自、持ち場についてください!」
「了解…!!」
こうして、行き成り訪れたジオン軍に対抗するべく、皆が其々の持ち場についていく。私達―パイロット勢もまたMSが格納されているMSデッキへと向かって行った。
Next Stage『ガンダム大地に立つ!!』
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