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ファイヤーエムブレム 疾風の剣士

作者:blueocean
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序章1 出会い

 
前書き
こんにちはblueoceanです。


小説の情報でも書きましたが、今回、自分の処女作を書き直して再度投稿する事にしました。
ペース的には1週間に1話投稿出来たらいいなと思ってます。

投稿スピードはまた変わるかもしれませんが、完結するまで頑張りますのでどうかよろしくお願いします!!

 

 
かつて『人』と『竜』が共存する大陸があった。彼らは共に英知を持ち住処を侵すことなく穏やかな生活を営んでいた。
しかし突然『人』の侵略によってそのバランスは破られる。
どちらともが大陸の覇権をかけ争い、それは大自然の理をも変化させるほどの大戦となった。
のちに『人竜戦役』と呼ばれる戦いである。
その結果敗れた『竜』は 大陸から姿を消し、『人』は戦いの痛手を乗り越えて、大陸全土、そしてそれに連なる島々へ着実にその勢力を伸ばしていった……




それから千年近い時が流れ………




大陸エレブ。
そこには天敵をもたぬ『人』が広がりいくつもの文化を築きあげていた。
まず西に大陸一はなやかで高度な文化をほこる『エトルリア王国』
東に派手さはないが堅実な文化と質実剛健な気風をよしとする『ベルン王国』
この二つの王国が中心となりそれにはさまれるかたちで小勢力が続く。
複数の領主たちが手を結び、二大王国に対する『リキア同盟』
民と共に荒地を切り開く『イリア』地方の諸騎士団。
広大な草原を馬で駆けめぐる『サカ』地方の諸部族。





そして物語は『サカ』の草原から始まる………





風が吹き抜ける。見渡す限りの草原に広い景色。流れる風と共に馬に乗り、狩りをして、親父や母に剣を学び、1日が終わる。
他の国のような優雅な生活とは真逆な生活。
それに不満は無かったし、俺自身好きだった。

だけどそんな生活は長く続かなかった。大国ベルンの動きで世界情勢が変化していき、いつ戦争が始まってもおかしくない様な状態。俺が住んでいる場所、『サカ』も例外ではなかった。

そして彼女と出会ってから事態は大きく動き出すのだった………





ファイアーエムブレム 疾風の剣士




「ゼオン、何をボーっとしている、さっさと行くぞ」
「あいよ」

森の中を2頭の馬が並んで進んでいた。その馬には男がそれぞれ乗っており、とても顔が似ていた。

「全く、お前は呑気だな」
「親父に似たんだよ」

遠くにいる親父に追い付き、声を掛けた。腰には親父がいつも使っている鉄製の剣。俺も同じのを使っているが、親父のは良い感じに年期が入っている。

「これでガベラ一族は殲滅出来たかな?」
「分からない、結局何人かは逃がしたし、親玉のガベラは見なかったしな」

そう悔しそうに呟く親父。俺達は最近この辺りで活発に活動するガベラ一族の山賊狩りを行っていたのだ。
ガベラ一族は俺達の様な様々な遊牧民族が住む『サカ』で暴れまわっている山賊グループで、個々が強いわけでは無いのだが、数も多く、中々根絶やしに出来ないでいた。
俺達が住む部族はサカの大都市ブルガルよりも左に位置する草原で、その下にサカとリキアを繋ぐように山が連なっている。
その山からよくガベラ一族が出没するのだ。

「そう言えばまた書状が来てたぞ。クトラ族のスーがまたお前と競いたいそうだ」
「またかよ………俺は専門は剣技なのによ………」
「お前が皆の見ている前で大いに負かすからライバルと思われているんだろ?」
「それ、ガキの時の話だろ?いつまで根に持ってるんだか………」

クトラ族とはサカでも古い部族でサカの遊牧民の中心とも言える部族だ。スーはその部族の族長で俺と年が近く、族長会議などで、俺達の族長を親父が護衛するのに一緒に行った際、初めて会った。
民族衣装を纏い、しっかりと部族の家紋が入ったヘアバンドを付けたスーを見て、大事にされたお嬢様だと思った。
粗相のない様にと親父にも言われていたので、そのつもりで遊んでいたが、話は弓対決となり、俺達は勝負する事となった。

結果は俺の圧勝。山が近い俺達の部族は山での狩りも行い、どんな体勢からも正確無比に狙える程の腕を持つ。そして俺自身も狩りも遊びの内にやるようになり、剣だけでなく、弓にも多少自信があったのだ。
だがただ勝っただけならよかったのだが、その対決はいつの間にか集まった部族長達も見ており、大いに話題になった。親父はさぞ鼻が高かっただろうが、終始涙目で睨んでくるスーの視線に俺はその場から居たたまれなかった。
そしてその後も会うたびに勝負するようになり結果として勝ったり負けたりを繰り返し、決して俺だけが1人勝ちしている訳では無いのだが………

『それではまた次会ったときに』

と毎回真顔で約束させられるのだ。

「戦績だってスーの方が上になったんだからもう競う必要もないだろうし、うちの部族で一番だったらティエナだろ?何で俺なんだか………」
「お前な………もういい歳なんだからもう少し違う視点で物事を見た方が良いぞ」
「うん?どういう事?」
「もういい………全く、そんな余計な所まで似なくていいのに………」

呆れた様子でそう呟く親父だが、俺にはちっとも分からない。いい歳と言っても17歳になったばかりでそんな歳の事を心配されなくてもいいはずだ。

「………まあいい、取り敢えずクトラ族まで顔を出しに行け」
「あいよ………」

北へずっと行かなくてはいけないので面倒だが、ついさっき山賊も殲滅したししばらくは大人しいから離れていても大丈夫だろう。

「ん?」

ちょうど森の出口へと出ようとした時だった。

「親父………」
「ああ、何か大きな音が近づいてくるな………さっきの山賊共の残党か………?」

森の左側からこっちへやって来る草を分ける音や激しい足音が聞こえる。

「ゼオン、気をつけろ………」
「分かってるよ………」

馬から静かに降り、剣を抜く。もしそうだったとしても不意を突かれないためだ。

「近いな………」

ガサガサと草をかき分ける音が大きくなるにつれて、剣を握る手にも力が入る。

「不意打ちはいい、それよりもリラックスして落ち着け」

親父にそう指摘され、1度深呼吸をする。目の前に姿の見えない相手に少し緊張していたようだ。それに相手は山賊とは限らない。

「ハァハァ………」

相手の息遣いも聞こえてきた。懸命にこっちへ走ってきているみたいだ。

「誰かに追われてる!?」
「おい、待てゼオン!!」

そう思った俺は親父の制止を無視して駆け出した。
草をかき分け、人の気配がする方向へ走る。

「来る!!」

ある程度進み、俺は止まった。相手もすぐ目の前まで来ているようだ。

「ハァハァ…あっ!?」

かき分けて現れたのは青白い髪の少女。肩の出た白いローブを着ており、杖を持っていた。その服装からもシスターだと思われる。

「おっと!!」

ぶつかりそうになった少女を受け止める。かなり汗をかいていて、大きく肩で息をしていた。

「大丈夫か………?」
「は、はい………ありがとうございます………」

綺麗な赤い目でそう呟いた少女は、俺の手から離れ、さっさと去ろうした。
その尋常じゃない雰囲気に放っておけなかった。

「おい、何かあったのか?」
「逃げて下さい………追っ手が私を………」
「追いついたぜ………」

そう言いながら現れたのは3人の男だった。
屈強そうな男が斧を、軽装の鎧を着た男が槍を、そして最後の男が弓を持っていた。

「悪いが鬼ごっこは終わりだ………ん?」

どうやら少女だけでなく俺にも気が付いたようだ。

「サカの民か………悪いが見られた以上、生かしてはおけん!!」

そう言うと斧を持つ屈強な男が襲いかかってきた。

「なっ!?」

振り下ろしてきた斧をバックステップしながら避け、剣を構える。

「女は殺すな」
「分かっている」

俺が武器を構えた事で、相手は無闇に襲い掛かるような事はしなかった。

(普通のゴロツキとは違う………)

戦い慣れているような雰囲気に思わず身震いする。俺はガベラ一族相手にしか実戦を経験したことがない。実戦に近い感覚で親父や幼馴染のジンとは何時も戦っていたが、所詮模擬戦の様なもの。

(強いな………)

死ぬのは恐い。……だがそれ以上に高揚している自分がいた。

「あの………」
「君は俺の近くに。直ぐに親父も来てくれるはずだから」
「親父………?」

少女を背中に隠すように立つ。

「ふっ、逃げずに俺達3人から守るつもりか………だが1対3でどこまで戦えるかな?」

そう言った後、再び男が襲い掛かってきた。

「だらっ!!」

今度は横薙ぎに斧を振る。物凄いスイングに圧倒さそうにもなるが、ただ勢いが強いだけの攻撃だ。

(身体を少しひねって回避したと同時にカウンターの一撃を与えて………!!)

そこで気が付いた。後ろには女の子がいるのだ。無闇に避けては彼女まで害が及ぶかもしれない。
そう考えた俺は剣を盾のように構え相手の攻撃を防御した。

「ぐっ…!?」

重い衝撃が身体全体に響く。何とか体勢を崩されないように踏ん張ったが、身体全身が痺れているように感じるほどの衝撃だった。

「ほう………俺の攻撃を受け止めるか」
「はああ!!」

しかし休んでいるわけにはいかない。さっきは防げたがそう何度も上手くいくとは限らない。ならば相手に攻撃される前にこっちから攻撃しなければと考えた。

「なっ!?速い!!」

力ではかなり劣っているだろうが、速さなら断然俺の方が速かった。

「ちっ!?」

しかし流石に相手が相手であるだけに対応もうまい。俺の動きを先読みし、回避するのを諦め、防御に徹した男は俺の斬撃を俺を見ずに受け止めた。

「だあああ!!」
「くうっ!?」

攻撃を受け止めた男は足で俺の腹を蹴ってきた。武器にばかり目が行っていた為、無警戒だった俺は避ける事も守ることも出来ず攻撃を受け、相手から距離を取ってしまった。

「まだだ!!」

そんな俺をちゃんと確認もせずすかさず斧で斬りかかる。モーションが大きいので普通ならいとも容易く避けられるが、蹴りを受け完全に動きが止まった所を狙われたので回避が出来ない。

「ぐっ!?」

相手の攻撃を剣で受け止め大きく仰け反ってしまった。

「終わりだ」

仰け反った俺に対して止めと言わんばかりに斧を振り下ろす。

「こなくそ!!」

俺は後の事は気にせず思いっきり地面を蹴った。
体勢を崩していた為地面に背中から倒れ込むような形となるが気にしている余裕は無かった。

ドスン!!と斧は目標から外れ、地面を抉る。

「うっ!?」

完全な直撃こそ避けたが衝撃が俺を襲い、多少避けきれなかった腹部に痛みを感じた程度致命傷には程遠い。

「がっ!?」

………が背中から倒れ込んだ衝撃がキツかった。

「運が良いな……」
「大丈夫ですか!?」

相手の声が聞こえた後、女の子の声が聞こえてくる。

「あ、ああ大丈夫………!!」

心配させまいと少し苦しかったが強目な口調で答えた。

「血が出てます!!」

少女の言う通り、落ちていた石に当たって怪我をしたのか、腕から血が流れていた。

「これくらい大丈夫だよ」

感覚もあるし、痛みも麻痺しているみたいで、戦闘に支障はない。

「ちょっと待って下さい」

そう言って手に持っていた杖を掲げる。

「ライブ」

温かい光が傷口を包み込む。すると開いていた傷口がみるみる消えていった。

「これは………!!」
「回復の杖です。これで傷は取り合えず大丈夫です」
「ありがとう、助かったよ」

初めて受ける回復の光に驚きつつ、お礼を言う。
そう言うと女の子は照れたのか顔を俯いてしまった。
しかし運が良かった。3対1で相手が手練れの状態ではどうしても不利な状況は変えられないと思っていたが、回復する手段があれは多少はそれも覆るだろう。

それに………

「………面倒だな、これ以上時間をかければゼハード様に何と言われるか分からん。ここはさっさと3人で奴を殺してさっさと連れ帰るぞ」
「そうだな」
「ちっ、分かったよ」

そう言って3人それぞれ武器を構えた。
確かに彼等相手では3対1じゃ勝機は無いだろう。

だが………

「俺の勝ちだ」

そう確信した瞬間、後ろの茂みから一番頼りになる人物が現れた。

「親父遅えよ………」
「お前が馬を置いてさっさと行くからだろうが………まあいい、多勢に無勢のようだから手伝ってやるよ」
「なら槍と弓の男を頼む」
「了解」

なんとも余裕な様子軽く答える親父。一応2対1で1人は弓と不利な条件が揃っているが、恐らく分かった上で即決だろう。

だけどそれでも相手が可哀想に思える。

「1人増えようが大して変わらない。お前達親子を殺して女を連れ帰るだけだ」
「………何の目的かは知らないが嫌がっている女の子を無理矢理連れ去る所を見過ごせない。それと俺はともかく親父はかなり強いよ?」

そう言った瞬間激しい金属がぶつかる音と強い風が吹き抜けた。

「がああっ!?」

槍を持っていた男は持っていた槍を斬られ、更にバツの字に鎧を斬られ仰向けに倒れた。

「なっ!?」

斧を持っていた男の表情が変わる。

「ドルガー!?」

弓を持った男が慌てて倒れたドルガーの元へ駆け寄る。

「そんな………一撃で………いや2連撃か……?しかし一体いつの間に………」

倒れている男を観察しながらそう呟く。

「次はお前だな」
「………舐めるな!!どんなに速くても剣の届かない所から矢を射れば!!」

男はドルガーから離れながら流れるような動きで矢を射た。狙いは確実で真っ直ぐ親父の心臓めがけて飛んでいく。

動きながら矢を射る。遊牧民の多いサカの民族のような動きだった。

「へぇ………」

親父は感心した様な声を上げながら剣を振り、矢を叩き落とした。

「なっ!?」

相手は驚いてその場に立ち尽くしている。
無理もないだろう。距離があればまだ出来るものも多いだろうが、距離の近い場所から射た矢を叩き落とす事出来るのは親父くらいだろう。

「くそっ!!」

男は負けじと矢を次々と放つ。………が、どれも親父に打ち落とされた。

「ありえない………」
「凄い………」

目の前の光景に信じられないのか呆然と立ち尽くす相手。
女の子も思わず見惚れてしなうほど鮮やかだった。

「悪いが弓で俺を殺すんだったら、もっとスピードを上げるか、気配を消し、視界外から撃つべきだったな」
「くっ………!!」

近づく親父にナイフで防戦しようとしたが、ナイフを取り出したと同時に既に親父は通り過ぎていた。

「なっ、バカな…………」

そう言い残して男は倒れる。

「さあ、後はお前だけだな」
「くうっ………!!」

俺がそう言うと男は唖然とした態度を止め、俺に殺気を向けてくる。

だが俺には分かる。相手はもう既に心が折れている。
例え俺を倒しても次に控えるは仲間の2人をあっという間に仕留めた親父がいるのだ。
それに俺が親父と呼んでいることにも気がついているだろうから、殺しでもすれば先程よりも鋭く、怒りに満ちた攻撃が自分に襲いかかってくるだろう。

その恐怖を隠すためにも虚勢を張っている。
そういう風に俺は見えた。

(勝ちは勝ちだけど………)

しかし俺としてはやはり納得できない部分がある。
今回みたいに親父の強さを見た相手が戦意喪失する事は多くあった。特に山賊相手が多い俺の場合、戦意喪失し、なるようになれと半ば強引に攻撃してくる敵。
相手にならないのだ。自然と守ってくれる親父の強さは俺の憧れでもあるが、同時に邪魔にも思えてしまう。

(俺だってもう一人前の剣士だ………)

本当ならば今回のガベラ一族討伐も俺1人で行こうと最初は考えていた。しかし一人前と中々認めてくれない親父が否応言わせず付いて来たのだ。

(過保護過ぎる………とはまだ言えないか………)

ガベラ一族だけが相手だったらそう言えたかもしれないが、今回は親父が居てくれて本当に良かったと思う。
1人であれば彼女を守りながら戦えただろうが、3人を倒すなんて事は恐らく出来なかっただろう。

(親父の言う通りまだまだ甘いな………)

そう自嘲気味に小さく笑い、相手を見据える。

「だが、その女を捕まえて逃げれば!!」

そう叫びながら斧を振り下ろす男。やはり思った通り先程と打って変わって単調で大振りだ。

「終わりだ」

その隙を見逃さずスピードと共に渾身の一撃を相手に食らわせた。

「くっくそっ……!!こんなガキに………」

そう言い残し、男は倒れた………








「殺したんですか………?」
「まさか!この装備、恐らくベルンのものだ。今のベルンはいつ他国へ兵を挙げてもおかしくない状態だ。そんな緊迫した状況で変に火種を巻くのは良くないからね。気絶に止めておいたよ」

そう言って親父は3人の男を木に縛り上げた。
わざわざ入り口付近まで運んだのだ。誰かしら気がつくだろう。

「だけどこれがベルン兵か………」
「なんだ、気づいていたんじゃないのか?」
「いや、親父が殺さずに気絶させたから俺も合わせた方が良いと思っただけだよ」
「なるほどね………」

そう呟きながら親父は入り口の木に止めていた馬の縄を解く。

「お前にしては上出来だ」
「お前にしてはってな………」

少々納得出来ないが、渋々親父から馬を受け取った。

「あっ、悪いけど君は零治の後ろに乗ってくれ。馬が2頭しか無いんだ」
「い、いえ!むしろありがとう御座います。助かりました。……私セリアと言います」
「セリアちゃんか。私はアルス。こっちが愚息のゼオンだ」
「誰が愚息だ!!………ゼオンだ。よろしくセリア」
「はい、よろしくお願いします」

「よし!互いに自己紹介も終えたし、1度集落の方へ移動しよう。また増援でぞろぞろ来られても厄介だしな」

親父の提案にセリアも頷き、俺達は帰路に着いた………







「よし、何とか日が暮れる前に着けたな」

馬に揺られて1時間ほど。
それほど遠く無い場所に俺達の集落はあるが、馬に乗り慣れていないだろうリーンを考慮して進んだ。

「ここが俺達、リオル族の集落だ」
「ここが………?」

不思議そうにそう呟くセリア。

無理も無いだろう。
リオルの部族は他の部族と比べてまだ新しい部族である。
サカで唯一都市と呼べるブルガルに近い影響もあり、生活する人間の半分がサカ以外からやって来ている珍しい部族だ。
更に他の部族とは違い広範囲に遊牧生活をせず、近くの山周辺を遊牧する変わった生活をするのも特徴だ。
故に天幕のようなテント生活を行う他の民族に比べ、俺達リオル族はある程度拠点を転々とする生活をしていた。

「だから大きくはないですが、簡易的な家があるんですね」
「サカ出身者じゃない人だとこっちの方が安心するだろ?」
「なるほど………」

馬を馬舎に置き、歩きながら説明する。
親父は家に案内するように言い残し、そそくさと族長のテントへと向かった。

「でもこんな特殊な生活をしていると他部族から反対は無かったのですか?」
「それはまあね………結構訳ありの人も多いし、新参者には結構厳しいからサカの遊牧民は。クトラ族が擁護してくれるからかなりマシになったけど、最初は風当たりが悪かったし、1番大きいジュテ族とは未だに冷めた関係だし」

ジュテ族とはサカで一番規模の大きい部族で、実質サカのリーダーとも呼べる。しかしクトラ族にいる『灰色の狼』のダヤンの存在もあってか、クトラ族と拮抗しているのが現状だ。
それにジュテ族は良い顔をせず、冷えた関係が続き、サカの遊牧民族の中で派閥が出来つつあった。

「サカも一筋縄じゃいかないんですね」
「まあね………」

そんな中、リキア同盟の結束力は凄いと思う。小さい時1度、親父と母の知り合いと言うフェレの公爵家の城に遊びに行ったことがある。
そこではフェレ侯エリウッド以外にオスティア侯そしてリキア同盟の盟主ヘクトルも居た。
エリウッドとヘクトルは互いに幼馴染で唯一無二の親友。フェレとオスティアの繋がりの強さこそリキア同盟の強さを物語っていると俺は思っている。

「着いたよ」
「わぁ………」

俺の家………天幕だが、初めて見るのかセリアは目を輝かせて中の様子に見入っていた。
この天幕はただ円状に広がっているだけではなく、それぞれ部屋が出来るようになっており、寝る際はそれぞれの部屋で寝る。故に天幕も広く、初めて来た人も特徴さえ言えば直ぐに見つかるだろう。

「良いお家ですね………」
「別に気を使わなくていいぞ?」
「本心ですよ。草原の風に揺られながら自然と共に生きる………素晴らしいと思います」
「そ、そうか………」

自分の思っていた反応と違っていた為少々戸惑ってしまった。

「どうしたのですか?」
「い、いやぁ………田舎っぽいとか時代遅れとか言われるかなって思っててさ。俺はこの生活が気に入ってるけどやっぱりエルトリアの様な貴族の豪華爛漫な生活に憧れる奴はいるし………」

特にサカ以外から人が集まるこのリオル族ではそう思う人間は少なくない。

「私はこっちの方が好きです。私の故郷も自然溢れる地でしたから………」
「故郷?どんなところだい?」
「そ、それは………」

そう質問すると困った顔で口籠ってしまった。

(しまった、何か聞いちゃいけなかったか………)

「ふぅ………ん?何か気まずいな。愚息が何か気に触ることでも聞いたのか?」
「い、いえ………」
「愚息言うなっての!!………まあ確かに俺が悪かったけど」

だけど親父が来てくれて助かった。親父の冗談で気まずかった空気もだいぶ和んだようだ。

「おっと、それは兎に角ゼオン、悪いが今からジンとティエナを連れて来てくれ」
「ジンとティエナを?どうして?」
「いいから、さっさと行く!」
「うおっ!?わ、分かったよ、ったく………」

背中を押され俺は舌打ちをしつつ天幕を出て行った。

「さて、君に幾つか聞きたいことがあるんだが………」

 
 

 
後書き
本当なら新しいファイヤーエムブレムの発売日と合わせて投稿しようとしたのに………
ともかく新作はファイヤーエムブレムでした。
本日からまた定期的に投稿していこうと思います。
色々と説明したい事はありますが、本編で出たその都度説明していきます。

取り敢えず誰得かは分かりませんが、今回か後書きに登場したキャラの能力値を書いて行こうと思います。

ゼオン ロード
レベル5
HP20 力7 技8 速さ11 幸運5 守備4 魔防2  

アレス ソードマスター
レベル13
HP45 力14 技22 速さ23 幸運14 守備10 魔防8


取り敢えず今回はこの親子。
それでは次回もよろしくお願いします!!  
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