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魔法科高校~黒衣の人間主神~

作者:黒鐡
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九校戦編〈下〉
  九校戦六日目(2)×ほのかの眩惑魔法と名無しのシャドーダイブ

深雪が三度、神秘的な美貌で客席を虜にし、神懸りとも思える圧倒的な力で敵陣を蹂躙しているのは何も深雪だけではない。名無しもまた三度、まるで神のような構えを取っていて圧倒的な力と未知なる魔法で敵陣を蹂躙している頃。バトル・ボードの水路では、女子準決勝の第一レースが始まろうとしていた。既に選手はスタート地点についているが、その中にほのかの姿があった。

「う~ん」

「・・・・」

「これはチョッと・・・・」

「・・・・」

「まあ、その、ね・・・・」

「・・・・」

「さっきから何だよ、二人して」

スタート位置に並んだ三人の選手を見て、客席で悩ましげに唸っていたエリカとその隣で絶句している美月に、レオが呆れ顔で問い掛けたのだった。ちなみに名無しもこの後出るが、決勝の時は一年男子のレースに出場権を貰ったのであとはほのかだけとなった。

「何かさ~、異様じゃない?選手全員、黒メガネって」

「エリカちゃん、そこは『ゴーグル』と言おうよ・・・・」

エリカと美月の言う通り、今回はほのかだけでなく、他の二人も濃い色のゴーグルを着けていた。ほのかが使う魔法での対策何だろうけど、蒼太的には策にハマった感じで遠くから見ていた。ちなみにピラーズ・ブレイクでは満席御礼だが、バトル・ボードは少なからず空席が目立っていた。

「当然じゃないのか?光井さんの眩惑魔法対策としては一番手頃で確実なんだから」

幹比古が常識的な推測を返すと、エリカはまるで『つまらないな~』とでも心の中で呟いているかのように見えた。あとそう呟いた後に気の抜けた笑い声が漏れていた。

「・・・・何が不満何だよ?」

「だってさ~、これって多分一真君の思うツボだよ?バトル・ボードで選手がゴーグルを使用しなかったのは、付着した水飛沫で視界が妨げられるのを嫌った。って言うちゃんとした理由があるのに、一回目晦ましが使われたのを見たからって、安直にゴーグルを使用する何て・・・・。眩惑魔法対策なら他にも色々な手があるのにねぇ・・・・」

「ほのかさん、今度は水飛沫で目潰しを掛けるって事なの?」

美月の問い掛けに、エリカは試合に対する興味を薄れた表情で頷く。その答えを言おうとしたら、エリカ達がいる席に近付く蒼太が応えたのだった。

「それはあり得ませんね、一真様がそんな単純な策を使うとは到底ありません」

「蒼太さん。なぜここにいるのですか?」

そう言ってから、空いてる席に座った蒼太だった。そしてその答えは見えば分かると言って、スタートを待った。そしてスタート直後に使った閃光は使わなかった。

「出遅れた!?」

「いや、ちゃんとついて行ってる!」

スタンド前の緩い蛇行を過ぎていくと、ほのかは二番手で最初のカーブへ侵入した。

「えっ?」

先行した一番手の選手が、妙なコース取りを見せた。それは一番手はインコースからアウトコースに行くので、減速をしながら大きく中央ターンをした。ほのかはアウトコースからインコースである内側ギリギリを抜けて一気に加速して見せた。同じ減速をしたのに、ほのかが一位になった事でレオ達に疑問が出た。

「何だ今のは?」

普通なら大きく減速してからインコースを回るか、減速を抑えながらアウトコースギリギリを回るかの二択である。先程のように大きく減速しながら、内側を広く空けてコーナを回るのは、中途半端なだけだ。

「・・・・コースに影が落ちたような気がしたけど」

レオの声に、エリカが鋭く目を細めて呟いていた。

「あっ、まただ!」

今度は緩い大きなカーブをするが、他の選手はアウトコースに大き過ぎる余裕を残し必要以上に減速してカーブを抜けた。ほのかだけはインコースギリギリで、減速をした結果ほのかは更に差が開く事だった。

「・・・・なるほど、蒼太さんが言いたかった事はこれの事か」

「えっ、何?」

頷く幹比古にエリカが訊ねるが、それを答えるのは幹比古ではなく蒼太が答えたのだった。

「幹比古の思った通りですが、あれはまさに一真様の狙いです。他の選手にも遮光効果のあるゴーグルを着けさせる事で、エリカさんの読み通りとなりました。ただそれは水飛沫で視界を遮る為ではなく、暗い所を見えにくくする為なのですよ」

「全部言われてしまったけど、つまりそう言う事なんだよエリカ」

「なるほどねえ~、幻術にこんな使い方があったなんて・・・・」

「明るくする事、暗くする事というだけで、敵行動をコントロールする事も可能です。魔法というのは本当に使い方次第で、ある意味誰も使った事のないような事も出来ますからね。一真様も光と闇を使う事で、今ほのかさんがやっている事もですけどね」

「・・・・三人で納得してないで、どういう事なのか説明してくれよ?蒼太さんは最初から理解してたのは知ってたけどさ、二人も分かったのなら余計気になるじゃねえか」

レオの不満げな声だったので、蒼太の説明をレオの頭で分かりやすく説明をした幹比古だった。その頃同じ時に説明をしていた本部でも、ほのかが使った魔法についてを説明していた鈴音である。

「織斑君の作戦は単純なものですよ。光波振動系により水路に明暗を作りますが、ただでさえ濃いゴーグルで視界が暗くなっているのです。明るい面と暗い面の境目で水路が終わっていると錯覚させてから、相手選手は暗い面に入らないようにする。つまり、相手選手にコースを狭く使わせているのです」

男子ピラーズ・ブレイクの観戦に行った克人の代わりに本部へ詰めている服部と、彼に付いて来た桐原は食い入るような表情で鈴音の解説に耳を傾けていた。

「本当はもっと広いはずだと頭で分かっていても、目から入ってくる情報に逆らう事は困難です。そしてどんな選手でも、狭いコースでは広いコースよりスピードが出せません。相手選手に、その実力を発揮させないという戦術の基本となりますね」

「・・・・しかし、光井さん自身は影響を受けないのですか?」

「本来であれば練習を積んでいますが、織斑君が作ったというオリジナルデバイスの機能により、光井さん自身に影響がないようにしていると言ってました。デバイス補助機能には、暗視ゴーグルのような機能で暗い所でもまるで明るい所だと認識させるようです。これには流石の私でも驚きましたよ」

「なるほど、織斑兄なら未知なる技術を簡単に作ってしまうから。ですかな?」

「コースの幅は決まってますが、織斑君なら不可能を可能にしてしまう技術とエレメンツ使いというのが役に立ったと言ってましたから、決勝リーグでも使うと彼は言ってました」

本来なら目で頼らずに身体で慣れろと言いたい所だが、俺の技術と力により可能にしてしまったデバイスにより主に驚いていた本部と作戦スタッフメンバー。俺が考えた策は、奇策もあれば正攻法もあるという事でもあり、主に驚いてもらいたいという俺の悪い性格が出てしまった。

そしてほのかが、決勝に進み見事優勝を果たしたが次はいよいよ名無しの出番となった。ピラーズ・ブレイクでは、決勝まで進んで午後の試合にて一条対名無しの試合が深雪達がいるステージでやる事が決定した。

「おっ、これから名無しの決勝リーグだけど人数多くねえか?」

「ホントだ、普通決勝リーグは二人だけなのに予選みたいに四人いる。どういう事?」

「恐らくこれからやる試合は、先ほど光井さんがしてくれたような試合になると思っての事。ならば決勝リーグでは、決勝に進んだ他校の男子だけだと面白みがないと察知したのでしょう。これがホントの光と闇の使い方だと言う事を見せてくれると思いますよ」

名無しがいるスタート地点には、決勝に進んだ他校の男子とCB隊員ら男性三人がいた。皆バトル・ボードは得意中の得意ではあるが、名無しがやると必ず負けてしまう。という結果となるので、ここでまた白黒ハッキリさせたいと言ってきた誠達だった。皆のボードは普通だが、名無しだけは重さ何十キロはある鉄板ボードだ。普通なら沈んでしまうが、名無しがやると普通のボードと同じように加速するし重みがあるボードなのでいつもより速度が違う。

「お前ら、これはお遊びじゃねえ事ぐらい分かってるんだろ?」

「当たり前です。ここで勝てればの話ですが、どうせ負けると分かっていてここにいます」

「名無し様とは何度やっても負けてしまいますから」

「ですが、今回でケリをつけましょうか!」

と言いながら、スタート地点にて赤からライトが付いた事で皆お喋りはやめてからスタートを待った。他校生徒は、本来ならどこの奴かは書かれていないので第七高校の男子生徒となった。水上・海上で実用性の高い魔法を得意とするが、俺らの前だと本番ではどうなるかな。スタートと同時に、俺はエレメンツの一つである闇を使って水路を暗くさせた。そうする事で、俺の姿は無くなりどこにいると思ったらいつの間にか先頭にいた。

「え?さっきのとは比べものにならないくらいだけど、一体どういう事?」

「それを知るのであれば、魔法科高校に通っている生徒ならば考えれば分かる事だと言っておきましょうか。今回答えは考えて正解を当てて下さい、と名無し様に言われましたので」

「ノーヒントという事か、うーん。水路に暗闇が出来たと思えば、いつの間にか名無しが消えてどこにいるかとなれば先頭にいた。・・・・現代魔法でも古式魔法でも使わないから、デバイス効果なのかもさっぱりだ」

「あれは一種の幻術だと考えればと言っても、あんな魔法あったけ?闇の中に潜る魔法って」

そう言いながら、名無しは闇に潜っては他の選手達がカーブを曲がった時には更に差を付けていた。重さ数十キロある鉄板ボードに、加速魔法や移動魔法を駆使するが名無しはそんなもんは使っていない。エレメンツマスターである名無しだからこそ出来る技であり、これは元々ポケモン技にあったもんだ。これに気付いたのは数名で、中には老師と呼ばれた烈も気付いていた。というより、名無しが出る全ての試合を見てきたのである程度の事は分かっているつもりだ。

「おいおい、あんな魔法あったか?服部に市原先輩」

「・・・・名無しさんが使う魔法については、ほとんどよく分かっていないので残念ながら余裕を持って答えられませんね。服部君は分かりますか?」

「いえ、ただあれはまるで暗闇を潜って進んでいるようにしか見えません。水中ならあまり抵抗力がないので、それかと思ったのですが『私が代わりに答えましょうか?皆さん』あなたは沙紀さん!」

「教えて下さい、名無しさんが使っている魔法について。あれは現代でも古式でもない事ぐらいは分かりますが・・・・」

そう言って蒼太と同時に沙紀も同じ答えを言ったのだった。

「あれはエレメンツの一つである闇を使った事ですよ。そして水路が暗闇となった事で、闇に潜ってスピードを上げる事により、カーブ時に減速せずに加速のまま直線となって水面に出た事で二位の選手と差が広がるようになっています。これについては技名がありまして、シャドーダイブと言います。闇の中なら、名無し様は無限に速度が出せます」

「それじゃ、名無しが使っているのは単に闇の中を潜って抵抗力を無くしたって事なの!?そんなの現代魔法にも古式魔法にもないはず」

「忘れてると思うけど、一真と名無しが使うのは百年前あったエレメンツを使った事だから、例え光と闇を使ったとしてもあり得る事なんだよエリカ」

「まるで潜水状態のまま進んでいる感じのようだぜ。それだと最早この勝負の勝ちは決定したようなもんだな、水面でバトルしている奴らと潜水として進んでいるなら勝ち目はないな」

そう言っていた同時に本部でも同じ事を言った沙紀によって納得した鈴音達だった。

「なるほど、予選では空間移動みたいな感じでしたが決勝からは本格的なエレメンツを使ってきたという事ですか。風や水も使えるという事は、光や闇も使えるのであればこの決勝は彼の勝ちとなりますね」

「最早勝負という感じではありませんね。これでは、ただ名無しが勝つように推測されたとしか考えられませんな」

「名無し選手がなぜハンデをつけた理由が分かった気がしますが、高校生の実力とは思えない程です。二科生だとしても、これでは一科生ぐらいの実力です」

そう言ったが、なぜ二科生にしたかはこの前の事件でハッキリさせたからだ。そして余裕でゴール後、スピード・シューティングにバトル・ボードの一年男子は第一高校の名無しが優勝をしたのだった。残りはピラーズ・ブレイクだが、決勝リーグはまだ時間が余裕なのでしばらく休憩をしてから一度本体と合流を果たした。なおシャドーダイブについては、蒼太と沙紀が箝口令なので他では言わない事だと知らされたので名無し=一真が明かすまで秘密となった。 
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