美しき異形達
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最終話 ピクニックその十
「幾らでも食べられるよ」
「ええ、私もよ」
黒蘭は大きめのお握りを両手に持って食べている。
「お握り好きよ」
「黒蘭ちゃんもだよな」
「よく食べるわ、自分で作って」
「夜食とかでもよく出るしな」
薊はこの時にもお握りを食べると言った。
「まああたし夜食はあまり食べないけれどさ」
「そうよね、寮でも」
「歯を磨いたら食べないんだよ」
夜はとだ、薊は裕香にも答えた。
「だからさ」
「夜食は食べないのね」
「寝る前はそうしてるんだ」
「そういうことね」
「ああ、それにしても何か本当に今は」
薊は嬉しそうに食べながらこうも言った。
「これ以上はないまでに幸せだよ、食べられていい景色も観られて皆がいて戦いもさ」
「終わって」
「もう戦わないでいいんだからさ」
だからだというのだ。
「あたしこれ以上はない位に幸せな気分だよ」
「私もよ」
「私も」
「勿論私もね」
他の少女達も笑顔で言う。
「私も本当に」
「実は私もそうだから」
「私もね、ほっとして」
「私も戦わなくてよくなったから」
「だよな、皆そう思うよな」
「そう、もう君達はね」
見れば食べる必要がない伯爵もだった。
「それこそ自衛隊にでも入らない限りね」
「戦うことはないか」
「うん、まあ自衛隊に入っても戦争になる可能性は少ないよ」
伯爵はその政治的な見解も出した。
「むしろ災害救助が多いね」
「地震とかの時のか」
「自衛隊の仕事は主にそちらだよ」
このことは実際にそうだと言っていいことであろう、戦争は政治的交渉で充分避けることが出来る。しかし災害はそうはいかない。
「災害救助だよ」
「あれな、あたしずっと自衛隊の人見てるけれど」
「大変だね」
「海にヘリが落ちても行くんだよな」
「救助でね」
「それで災害があれば」
日本の何処かでだ、薊はしんみりとした顔になって述べた。
「すぐに飛んで行って」
「人を助けに行くんだ」
「それが仕事だよな」
「だから大変だったな」
「そうだよ、とてもね」
「滅多に出来ない仕事だよな」
薊は食べる手と口を止めて述べた。
「あの仕事は」
「そう思うよ、私もね」
「だよな、あたしは自衛隊はな」
薊はこの仕事についてはだ、首を傾げさせて述べた。
「なるつもりはないな」
「私もです」
「私も。自衛隊は」
「考えていないです」
他の少女も言う、裕香もその中にいる。
「何か合わない様な」
「別のお仕事に興味があります」
「ですから」
特に菊と向日葵、桜はそれぞれの家の家業のことが念頭にあってだった、それで微妙な顔になってそれで言っていた、このことは鈴蘭と黒蘭もだ。
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