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真田十勇士

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巻ノ二 穴山小助その七

「そうした者なら」
「ではまずはな」
「会いましょう」
 こう話してだ、そしてだった。
 幸村は穴山と共にその頭目と会うことにした、そこで雲井が言って来た。
「それではこれより」
「雲井殿も来られますか」
「はい」
 幸村に対して静かに答えた。
「そうさせて頂きます」
「左様ですか」
「幸村殿の腕は見せて頂きました、そして」
「その頭目の腕もですか」
「見たいと思っております」
 穴山を見つつだ、幸村に応えてだった。そのうえで穴山にも言った。
「そして出来れば」
「それがしの腕も」
「見る機会があればと思っています」
「さすればその時は」
「御覧になって宜しいでしょうか」
「是非お見せしましょう」
 穴山は雲井に確かな笑みで応えた、しかし。
 ここでだ、幸村は雲井を見つつだ、こうしたことを言った。
「しかし雲井殿も」
「それがしに何か」
「はい、実はここに来る前にある武芸者の方とお話したのですが」
「武芸者ですか」 
 そう聞いてだ、雲井はその目をぴくりと動かしたがそれは一瞬だった。幸村にも穴山にもその動きは気付かれていたが。
「と、いいますと」
「大柄でお顔に立派な髭を生やされた」
「その方が何か」
「かなりの剣術、あれは二刀を同時に使われ」 
 左右の手をそれぞれ使ってというのだ。
「忍術も相当ですな、雲井殿と同じく」
「そうした方とお会いしましたか」
「雲井殿と似ていますが少しです」
「違うと」
「はい、しかし歩き方や呼吸は似ていますな」 
 そこまで見ていた、幸村は。
「同じ流派の忍術でしょうか」
「忍術といっても様々ですからな」
 穴山もここで言う。
「それがしはこの信濃の流派ですが」
「拙者は真田忍術だしな」
 幸村は自身の忍術の流派の名前も出した。
「忍術、剣術もな」
「それぞれですな」
「そうじゃな」 
 こう話すのだった、そして。
 雲井は穏やかな笑顔でだ、幸村にこう言った。
「その型がともかくとしてそれがしは確かに」
「忍術もですな」
「身に着けていて手裏剣等も使えます」
「そうですな」
「それを歩き方や息の仕方からも見られるとは」
「忍術もしていますので」
 そのことからだとだ、幸村は雲井に話した。
「それに最初にお会いした時にお話しました」
「しかし言葉からだけでなく」
「はい、そうしたことからもです」
「そこが違いますな、どうやら幸村殿は目も備えておられますな」
「確かに。この方が主と思いますと」
 穴山も笑って言う。
「この上なく有り難いです」
「いや、そう言われるとな」
「どうもですか」
「気恥ずかしいのう」
 実際にそうした笑みでの言葉だった。
「わしとしては」
「ではこのことは」
「言わないでもらいたい」
「幸村殿は褒められることは苦手ですか」
「幼い頃よりどうも」
 雲井にも苦笑いで答えた。 
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