夢のような物語に全俺が泣いた
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兎と出会ったその日の出来事
俺の所属するファミリア、ゼウスファミリアは18階層にある冒険者が立ち上げた町の入り口付近に存在する。
地上へ出るためにはダンジョンを逆走しなくてはならないし、それ以外の方法ならばファミリアの誰かに転移してもらうしかない。
俺も練習中ではあるが、これが中々上手く行かない。
前も失敗して湖に転移してしまったのだ。
ユウジさん達は最近、妙にいそいそしており、これから戦場へ向かうかのような雰囲気を出している。
聞いてみても良いのだが、うんうん唸りながらに準備をする様を見ればそう言う気も起きないと言うものだ。
「行ってきます!」
今日もまた、ダンジョンへとむかう。
Lvなど、上昇させる目的もあるが、新しく考え出した魔法も試してみたい。
今回は逆走しようと思っている。
ところで俺の装備は異常と言える。
武器は取り合えず最強武器であり、俺の好きな二刀流。
クサナギノツルギを装備し、防具はマム・ベイン。
まず防具を装備して気づいたことが一つ。
何を装備しても服装が変わらないのだ。
どゆこと?と思ったが、便利なので気にしないことに。
そして問題はアクセサリだろう。
まずダークシールとデモンズシールで経験値をブーストする紋章を装備。
これを取り合えず首、量肩、腰、両足に取り付けている。
更にそこへアミュレット、ポイズン、ピヨ、ストーン、ドレイン、パラライのチェック用品をユウジさんに渡し、砕いて一つに纏めて貰った。
形はクリスタルの様で虹色の輝きを持ち、ピアスにして貰いそれを左耳に装備。
これで状態以上には架からないし、ノーリスクで経験値を稼げる。
因みにこんな初歩的なことに気付かずにデモンズシールを装着した瞬間、
脱力感を感じ、吐き気、頭痛、腹痛、麻痺………兎に角色々な状態異常にかかった。
たまたま見ていた翔さんが居なかったら危うくポックリ逝ってしまっていたらしい。
だがそれだけでは終わらない。
ゲームとは違い、装備できる数が指の数であるリング。
アタック、ディフェンス、フォース、フェアリィ、ホーリィ、メンタルリングを両指に3つづつ装備している。
更に量腕に一つづつリングシールドを装着した。
もう完璧チートなこの装備。
つーかクサナギノツルギを装備しただけで力がSになっている時点でバグってることは間違いない。
兎に角この装備でダンジョンに潜り続けた結果、Lv3になってステイタスはカンスト。
更にスキルも2つ増えてもうなんと言っていいのやら。
今さらだが、ここでスキルの説明をして置く。
まず[英雄碑]
これは転生特典であるため、省く。
次に[ヘイトマスター]
前世では忌々しかったこの能力も、様代わりを果たして任意的な物になった。
自分が敵であると認めた相手のヘイトを上限なしに集める。
その結果、怒り狂って同士討ちに発展した奴もいた。
そして新しいスキルの[守護願望]と[英雄の趣味]。
[守護願望]は自分が護りたいと思った対象が存在するし続ける限り効果継続。
その数が多いほどに効果上昇。
ステイタス上昇。
[英雄の趣味]は…まぁあれだ。
料理とか裁縫とか合成とか…。今はランクIだけど…これ極めると何でも作れそうで怖い。
「よっし到着!」
あれこれ考えているうちに地上へ到着。
取り合えず前の酒場へ赴き、昼食を食べることにしよう。
俺の走ってきた道には魔石やモンスターの血が飛び散っており、後に入ってきた3人の冒険者が驚愕したのは別の話。
「おや、ユウジのところの坊やじゃないか。
あー…確かケイって言ったね」
店に入ってすぐにミアさんに声をかけられる。
「どうも。昼食を食べに来たんですけど」
「好きな席に座って待ってな。
ほら、冒険者ならビシッと決めなっ!」
俺に席を促し、目の前にいる白い髪の少年の背中を押すミアさん。
少年は明るい笑顔になり、店を飛び出していってしまった。
「えーっと…シル、だったかな?」
「はい」
「あの少年…これこらダンジョンに向かうの?」
「多分そうだと思いますよ?
明日は怪物祭なので早めに切り上げると思いますけど」
「怪物祭?」
「あはは…貴方も知らないんですね。
それならこの後行ってみたらどうですか?きっと楽しめると思いますよ?」
「ん、そうしてみるよ。ありがとう」
俺はクスクスと笑うシルを見て、目の前に持ってこられた料理を食べはじめた。
翌日。
再び地上へ来た俺は早速怪物祭へと向かうことに。
大通を歩いて数分、闘技場の様な場所が見えてきてそこで止まる。
「でけぇな…彼処でモンスターの調教すんのか…つーかモンスターってペットとして飼えるのか?」
素朴な疑問を口にしてみたものの、答える者は当然いない。
「取り合えず出店でも回って――っ!?」
再び歩き出そうとした瞬間、誰かに見られているような…それでいて粘着質な視線を感じてバッと振り返った。
振り返った先にはフードを被り、あまり顔を目立たせていないような服装の…
「女…の子?女性か?」
ゆっくりとこちらへ歩いてくるその姿を仰視してしまう。
「どうかした?」
やはり女だった。声質からして女性。
「……いや、別に何でもない。
悪かったな。食い入るように見ちまって」
「悪いことなんて無いわ。
私にとっても、良くあることだから…じゃあね?」
「ああ…」
そうしてフードの女は去っていく。
あの瞳に隠された言い様のない感覚に疑念と恐怖を感じたが…一体何だったんだろうか…。
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