ザンネン6……何か悪いの?
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八話
病室の前にある椅子に座るチームラビッツは、廊下の天井に設置されたテレビに流れる、自分達に関するニュースを見ていた。
現在の彼らの恰好は、「グランツェーレ都市学園」の制服でも≪アッシュ≫のパイロットスーツでもなく、病院で検査を受ける患者が着るような、ただ布をはおっただけのような服装だ。
イズル達が自分達の情けない姿を映したニュースを見ている中、マヤは、そんなニュースに興味を向けず、地面に着かない足をプラプラと揺らして呼ばれるのを待っていた。
「見よ。アサギスペシャル」
「その映像をこれ以上見せるな」
立体投影のパソコンに流れる、≪アサルトイェーガー≫を避ける≪ブルー1≫の映像をリピートして見せるスルガにアサギはデコピンをしてツッコむと、ため息を吐く。
「今回の任務でいいとこがあったのは、マヤとイズルだけか……」
「だなぁ。ニュースもこの場面が一番多く放送されてるもんなぁ……」
「お待たせいたしました。」
検査のため、美人看護師が六人に呼びかける。
「いえ、全然待ってません!」
「男子は1番検査室に、女子は身体測定室に進んでくださいね?」
「はあ~い!?」
「・・・!」
スルガは喜ぶが、タマキはなんだか不安な顔になる。
全ての≪アッシュ≫を収容しているゴディニオンのドッグ。そこでは、各≪アッシュ≫のピットクルーが忙しそうに働きまわっていた。
それぞれ損傷が大きいが、特に酷いのは、レッド5とブラック6だ
「はあ・・・もっとリンケージを簡単にオート化できないの?」
「考えてみる。」
と、スズカゼとレイカの意見の言い合いが続いていた。
「あの子たちはまだ、ジュリアシステムに慣れてないわ。だからこそ、私達でカバー
しないと・・・。」
「真剣と深刻は違うわ。リラックスしないと、壊れちゃうわよ? リンリン。」
「・・・・。」
スズカゼは僅かに溜息を吐き、自分を落ち着かせた
「奇襲任務?」
検査を終えた私達六人は、司令室でシモン司令から次の作戦を聞いていた。
『そうだ。ウルガルの補給艦に奇襲を仕掛ける。』
「こっちからですか?」
「だから奇襲っていうんだろ。」
『作戦は36時間後、内容はその時に伝える。』
それだけいって、シモン相例が映っているモニター画面はプツンっと切れた。
「また失敗したらどうすれば……。」
アサギがおなかを抑えて呟く。
「俺たち、へたれだもんな~……。」
「あたし達一生ザンネン6?」
「はあ・・・・。」
と、面々が自信なさげに発言する。そんなとき扉が開いてスズカゼが入ってくる。
「チームラビッツ。一日半の休暇ができたので、準備出来次第出発するように。」
「休暇?」
「ふふ・・・バカンスよ。」
そういってスズカゼは、加えていた飴を突き出す。
『バカンス?』
バカンスの地に向かう小型船の中に、私達六人は座っていた。
「ここ高級リゾートだぞ!? く~~~!」
「リゾート! バカンス! ロマンス!」
「・・・。」
私、アサギ、ケイの三人は、何故か盛り上がれなかった。
「リゾートか・・・。」
「心残りのないようにって事かしらね?」
「お前らもっと喜べよ!」
「リゾート! バカンス! ロマンス!」
「明日は奇襲かけるんだぜ? 盛り上がれってほうが無理だよ・・・。」
「でも・・・リゾート! バカンス! ロマンスら~!」
「………」
私はみんなの会話に入れずに宙を見ていた
バカンスについた一行。食事をするために、近くのレストランに足を運んで、メニューを開く。
「俺カレー。」
「大盛りごはんと塩辛~。」
「ないわよ。」
「私は……」
私もメニューを見回す。すると、
「ねえ、あの子たちニュースで見た・・・。」
「ああ、出来るんだかできないんだかわからない奴らだろ?」
「・・・・・・。」
その客の声を聴いてイズルは、ガックリと落ち込んでしまう。
「落ち込むなよ。これくらいの事、養成所でさんざん言われたじゃねえか。」
「いや、養成所と宇宙全体ではかなり違うぞ。」
アサギも腹を立てており、勢いよくテーブルをたたく。
「・・・食欲ないし、先にコテージに行ってる。」
「私も。」
そういってアサギとケイは、宿泊先のコテージに向かう。
「何だよノリ悪いな~!」
「ほんとらよ~!」
それを見てスルガとタマキがふくれっ面をする。そこに
「お待たせいたしました。塩辛でございます。」
「カレーでございます。」
「(塩辛あったの!?)」
「「(バカンス最高~~♪)」」
私は塩辛があったことに突っ込み、タマキとスルガはそれぞれイケメンスタッフと美人
ウェイターが運んできてくれたことに歓喜した。
「じゃあ僕も・・・。」
「何だよお前もコテージか?」
「いや、特訓する。」
「特訓?」
「ヒーローは失敗したとき、八割の確率で特訓するんだ!」
「「「・・・・・・。」」」
その熱血漢に、三人は黙ったままだった。
「ごめんなさい……気分が優れないから私もコテージに行くね?」
私はそう言ってレストランをあとにした
「~~~♪」
私はコテージ裏の湖に足を浸りながら歌を歌っていた……私が大好きな歌手の……大好きな歌を……
「あら、良い歌声ですわね」
「!」
後ろから声が聞こえてくる……振り向くと……ピンク色の髪に白いドレスのような服を着た女性が歩いてくる……
「お隣、よろしいですか?」
「え……ぁぅ…」
女性が聞いてくるが私はいつも通り、声が出せなくてなんとか、頷くと女性は「では、失礼します」と、言って私の隣に座る
「自己紹介がまだでしたね。私はラクス・クラインですわ」
「…………マヤ・ヤマトです」
私たちは名前を交わす………あれ?…ラクス・クラインって……ラクス様?
「……ら、ラクス様?」
「わたくしのことはラクスとお呼びください」
「……ぁぅ………すみません」
「謝らないでください、わたくしが様付けで呼ばれるのは苦手なだけですわ。マヤさんにはなんの悪気も無かったんですから」
「……はい」
この時、私はラクス様と何処かであった気がした……もし、会ってるなら養成所に入る前……記憶を消される前の私だと思う
「マヤさん、わたくしたちが出合ったのは何かしら意味があるとわたくしは思います。ですから、一曲歌いませんか?」
「………いいんですか?」
「はい、わたくしからお願いいたしますわ」
「………わかりました」
私はラクスさんのお願いを……一緒に歌うことに少し舞い上がった。
そして、私は一度深呼吸するとラクスさんと同時に私の大好きなラクスさんの歌………Fields of hopeを歌う
【Fields of hope~】
「ご一緒できて良かったですわ」
「私も……一緒に歌えてよかったです」
歌い終わると私は自然とラクスさんと握手をしていた。
すると、ラクスさんの後ろ道に止まっている車からクラクションが鳴らされ、ラクスさんは車に軽く手を振ってから私の方を見てくる。
「残念ですわね……マヤさんとはもっとお話したかったのですが……時間のようですわ……」
「そう………ですか……私も…もう少し……お話したかったです……」
私はこのとき初めて『また会いたい』と思っていた。
「また、会えますわ。その時にもっとお話出来ますわ」
「またですか………そうですね……またがあれば……お話したいです……」
私は『また』と聞くと暗い顔をしてしまった。
「大丈夫ですわ。わたくしたちは近い将来に会えますわ。」
私が暗い顔をしているとラクスさんが《《この先を》》知っているかのように微笑みながら言ってきた。
「?」
私はラクスさんが言ってきたことがわからなかった。
ラクスさんは私に軽くお辞儀すると車のほうに歩いていってしまう。
「あの!」
「どうかなされましたか?」
私がラクスさんを呼び止めてしまう
「……もし…私が……死んでしまったら……ラクスさんは……悲しんでくれますか?」
私は自分でなんでこんなことを聞いているかわからなかった。
「はい、もちろんですよ。私にとってマヤさんは《《大切なお友達》》なんですから」
ラクスさんは微笑んで言ってくれて…ラクスさんは車に乗って行ってしまった。
続く
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