美しき異形達
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第五十五話 最後の戦いその一
美しき異形達
第五十五話 最後の戦い
教授の前に現れた最後の怪人達、その彼等はというと。
「恐竜?」
「そうね」
菫は向日葵の言葉に応えた。
「どうやら」
「そう、恐竜よね」
見ればだ、最後の怪人達は。
合わせて八体いた、その彼等の状況は。
プテラノドン、エラスモサウルス、トリケラトプスにだ。
アンキロサウルス、ティロサウルス、ソレデス、ゴロサウルス、それにティラノサウルスだった。大きさは人間であったが。
人間と恐竜が合わさったこれまでの怪人達の姿だった、その恐竜の怪人達を見て今度は菊が自分の構えをしたまま言った。
「恐竜は確か最強のね」
「存在だったと言われていますね」
桜がその菊の言葉に応えた。
「これまでの地球の生物の中で」
「そうだったわね」
菖蒲も言う。
「これまでの怪人とは気が違うわ」
「ええ、最後に相応しいというか」
こう言ったのは黒蘭だった。
「そうした相手ね」
「やれやれね」
鈴蘭がその妹に言う。
「最後の最後で」
「恐竜ねえ、子供の頃好きだったよ」
薊はその目を鋭くさせつつも笑ってみせた。
「でかくて格好いいからな」
「気に入ってくれたみたいだね」
「まあな、最後の最後の戦いにな」
それこそというのだ。
「面白いの見せてもらったよ」
「全く、言葉尻を捕まえて最後の戦いを挑んでくるとはね」
伯爵は教授を見据えつつ難しい顔になっていた。
「流石は稀代の詐欺師と言うべきか」
「ははは、それが私の仕事だからね」
詐欺師のそれだというのだ。
「そうしたんだよ」
「そうだね」
伯爵も静かに返す。
「卿らしいよ」
「褒めてくれたのかな」
「そう思っていい、さて」
「私は約束はする」
確かに言葉尻を捕らえてもというのだ。
「この戦いで最後だよ」
「この娘達に何かをすることは」
「もうしないよ」
何があろうともというのだ。
「この娘達の子孫にもね。けれどね」
「それでもだね」
「一つ余興を加えよう」
こう言ってだ、そのうえで。
教授はその右手をゆっくりとかざしてから動かしてみせた、すると。
少女達の周りが急に変わった、これまでの庭園だったが。
花吹雪が起こった、それは様々な花の花びら達によるものだった。
桜もあれば菊もある、菖蒲も。色も様々だった。
その花びら達を見てだ、薊は言った。
「これがか」
「わかるね」
「幻術か、あんたの」
薊はそのことを察して教授に言ったのである。
「ここで使うか」
「そう、しかもね」
「ただ見えているだけじゃないな」
「私の幻術は目だけではないよ」
そこにだけ仕掛けるものではないというのだ。
「その他にもね」
「鼻もだな」
薊はここで感じ取った、その香りを。
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