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戦国異伝

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第二百十三話 徳川の宴その十

「あの方には常に助けてもらってきた」
「当家も」
 蒲生もこう言う。
「ですから」
「その器を見せて頂けるか」
「そう思います、では」
「明日もじゃな」
「楽しい宴を期待しましょう」
「それではな」
 柴田はその大きな口を豪快に開いて笑った、そうしてだった。
 彼は同僚達にだ、あらためて言った。
「さて、明日も楽しい宴になりそうじゃ」
「ですな、では」
「明日も楽しみにして」
「そしてですな」
「今日は」
「うむ。休むとしよう」
 こう言ってだ、柴田は休むのだった。そしてここでだ、柴田はその場にいた長政にも声をかけたのだった。
「では猿夜叉殿も」
「うむ、ではな」
「お休み下さいませ」
「ではな」
「そういえば猿夜叉殿もこの度は」
「いやいや、わしは特に何も」
 していないとだ、長政は柴田に苦笑いで返した。
「しておらぬ」
「しかし山陰を収めたのも上杉に睨みを利かし北陸を収めたのも」
「わしの手柄か」
「はい」
 そうだというのだ。
「それで殿もです」
「領地に茶器と下さったのか」
「官位もです」
「それでか」
「やはり殿の義弟殿です」
 長政は、というのだ。
「それに相応しい方です」
「だといいが」
「それでお市様ですが」
「久方ぶりに小谷に戻ったが」
「お元気でしたか」
「元気で何より、子達もおるしな」
 市との間に生まれた子達だ、言うまでもなく。
「家も守ってな」
「生きてですな」
「そうする」
 こう言うのだった。
「無駄死にはせぬ」
「そう言って頂き何よりです」
「父上のこともあるからのう」 
 久政のこともというのだ。
「だからな」
「ではこれからも」
「織田家の為に」
「そうしよう、しかし」
「しかしとは」
「どうしてもな」
 ここでだ、こうも言った長政だった。
「父上の傍にいた二人の坊主達と髑髏」
「あれですな」
 ここで言って来たのは林だった。
「その二つのことは」
「何だったのじゃろう」
「そのどちらも」
「特にあの髑髏は」
 黄金の髑髏がというのだ、とりわけ。
「何だったのかわからぬ」
「そうですな、しかし間違いなくあれは」
 林が長政に己の考えを言った。
「左道です」
「左道であるな」
「はい、そうとしか思えませぬ」
「そうじゃな、やはり」
「あの坊主達もまた」
「どう考えてもまともな坊主ではない」
 長政は確かな顔で言った、そして。 
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