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ドリトル先生と二本尻尾の猫

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第十二幕その五

「先生、有り難う」
「いやいや、僕達は見ていただけだよ」
「何言ってるのよ、色々調べてくれたじゃない」
「デートの前に」
「私と猫達の主観だけじゃね」
「判断出来なかったっていうんだね」
「先生が調べてくれてアイディアも出してくれたから」
 それで、というのです。
「上手くいけたのよ」
「だといいけれどね」
「しかもね」
「しかも?」
「そう、先生がね」
 さらに言うお静さんでした。
「あのガラの悪い人達退散させてくれて」
「あれも動物の皆がしてくれたから」
 先生でなく、というのです。
「僕じゃないからね」
「そこでそう言うのがね」
 お静さんは先生ににこりと笑ってお話するのでした。
「また先生らしいわ、謙虚ね」
「有り難う、そう言ってくれて」
「とにかく今回は先生のお陰よ」
 お静さんは先生の横を後ろ足で歩きながらお話します。
「ハッピーエンドになったわ」
「そしてハッピーエンドの後は」
「新たなストーリーのはじまりよ」
 お静さんはにこにことして言うのでした。
「これからも大変だけれど」
「それでもだね」
「お二人は幸せになるわ、いえしてみせるわ」
「お静さんがだね」
「絶対にね」
 こう言うのでした。
「これからも」
「頑張ってね」
「ええ、先生もね」
「僕も?」
「そう、頑張ってね」
 お静さんは先生のお顔を見上げてこうも言ったのです。
「先生も」
「学問も誰かの為に動くこともね」
「いやいや、どっちもじゃなくて」
「あれっ、違うのかな」
「ううん、そうじゃなくて」
 お静さんも動物の皆と同じお顔になってしまいました、そうして言うのでした。
「何ていうか」
「?どうしたのかな」
「先生本人の幸せは遠いわね、まだまだ」
「僕は幸せだよ」
 やっぱりわかっていない先生でした。
「皆がいてくれてお仕事もあってお家もあってね」
「ああ、そういう幸せじゃなくて」
「これで充分じゃないかな。美味しい食べものにも囲まれていて」
「確かに先生は幸せだけれど」
 それでもというのです。
「ちょっとね」
「そうなんだ」
「まあ遠くても」
「それでも?」
「何時かはね」
 お静さんは先生に温かい言葉をかけるのでした。
「先生もね」
「今よりもなのかな」
「今よりもだし」
 お静さんは先生にこうも言いました。
「今の幸せとはまた別の幸せよ」
「幸せにも色々あるけれど」
「その中の一つよ」
「僕が出会う幸せは」
「何時か出会う幸せはね」
「それは何かな」
「まあね、わかる時も来るわ」
 お静さんは明るいお顔です、そうしたお話をしてでした。
 先生にです、こう言ったのでした。 
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