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インフィニット・ストラトスGM〜天空を駆ける銀狼〜

作者:
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似たもの同士

「うわぁ〜、大きいですね〜」

私は前に聳え立つ白を基調にしたビルを見上げて、驚愕するがすぐに顔を戻すを表情を引き締める。そして、続けて深呼吸。
(ここに……あの人が……)

☃☃☃

「社長にお客様が」

「今行く」

わたしは机に山積みになった書類に目を通すと席を立つ。あとちょっとだ、それよりお客様を待たせたらいけないだろう。そう思い、客間に足を踏み入れるとそこに居たのは以外、可愛らしい人形めいた少女だった。コーヒーに砂糖をこれでもかというほど入れている。その量に驚いて、まだ入れようとする彼女の手を掴む。

「君、そんなにも入れたら。病気になってしまうぞ」

私の言葉に下を向いていた少女が上を向く。そして、更なる驚きをわたしに与えるのだった。彼女は肩まで伸びた黒髪をお下げにしている。そして、わたしを見つめる。その大きな蒼い瞳ーーその潤んだ瞳は今まで見たことないほど綺麗で、見るもの全てを惹きつける。暫く、ぼぅーと彼女の瞳に見とれていると

「その……手を離して頂いてもいいでしょうか……?」

「はっ!?すまない」

そう言われ、パッと手を離すと少女は立ち上がり、わたしに向かい合う。

「お忙しいのにわざわざ時間を空けてもらってありがとうございます」

ペコリと頭を下げる少女にこちらもペコリと頭を下げる。

「那珂優里って言います。日本から来ました」

日本という言葉に眉をピクッとさせる。彼はーー彼女は元気にしてるだろうか?とふとと遠い異国にいる人物に思いを寄せる。

「今日、社長を呼んだのは娘さんの事で相談があって」

「!?」

今、まさに思いを寄せていた人物を指摘され、わたしを硬直させる。少女はそんなわたしの心情などお構いなしに話を進めていく。

「いや。待ってくれ、立ったままでは疲れるだろう。座って話そう」

「……そうですね」

那珂優里と名乗った少女の後にわたしも腰掛ける。那珂優里は砂糖をたっぷり入れたコーヒーを美味しそうに飲むとわたしを見る。

「シャルロット・デュノアって名前に見覚えありますよね?」

「あぁ」

彼女は綺麗な瞳に色々な感情を含ませて、わたしを睨むとコーヒーを飲み干す。

「社長はどうして。シャルロットさんにあんなことをさせたんですか?」

「あんなこととは?」

「白を切るつもりですか?……私はどうしても貴方みたいな優しい人がシャルロットさんにあんな酷い事をするとは思えないんです」

「……」

那珂優里はわたしから視線を外すと窓の外を見る。その仕草があの人と重なり、わたしは頭の中で彼女との出会いを思い浮かべる。

☃☃☃

窓から差し込む光にキラキラと光る彼女の濃い金髪。窓を見つめる瞳は薄い青色でわたしの視線に気づいて振り返った彼女は柔らかい笑みをわたしに浮かべる。続けて、膨らんだ自分のお腹を優しく撫でる。

彼女ーーアリスと出会ったのはわたしが社長になって間のなくの頃だった。階段の途中で立ち止まって、窓の外を見ていた彼女にわたしが気付かず、思いっきりぶつかってしまい。気絶した彼女を背負って、休憩室まで運んだ。その後、ソファに寝かした時にアリスが気がつき、引くほど謝られたとか。わたしの方が心配されたとか断片的に覚えている。アリスはどちらかというとこういう仕事に向いてないと思われた。資料をコピーするのも人より数倍かかったし、運びものも所々向けていてよく上司に怒られていた。しかし、何故かアリスはこの仕事をやめようとしなかったし、わたしも何故か彼女を辞めさせようとも思わなかった。
アリスと出会って、数ヶ月が経った。
そこ頃になるとわたしも社長の仕事に慣れ、私生活も充実していたが妻との間に子供を作れなかったのはわたしの悩みでもあった。その頃のわたしは精神的にも参っていたのかもしれない、妻に毎日といっていいほど行為をせがまれ、両親からも孫を早く見たいと言われる始末。そんな中、アリスの入れてくれたコーヒーが心体ともに癒された。そして、いつの間にか彼女自身を癒しとして見ていた。そんなある日、傘を忘れたというアリスを家まで送ったことがあった。いいという彼女に半ば強引に傘に入れて、帰路を歩いていると彼女の薄手のシャツが雨に濡れて、下の白い肌が透けていることに気づいた。思わず唾を飲み込んでしまい、ハッとする。彼女を無事家まで送ったのは良かった。彼女がわたしも濡れていることに気づき、部屋に入れるとシャワーを浴びて行くように言う。その彼女の無防備さには此方も参ったが、有難く使わせてもらうことにした。その後もそんなやりとりが続き、理性が壊れて彼女を押し倒すとついに彼女と契りを交わしてしまった。落ち込むわたしに彼女はこう言った。
『愛人でもいいです。貴方が私を愛してくれたら、それだけで私も幸せですから』
彼女はわたしと関係を持った数日後、会社を離れた。理由はわたしとの関係を知られたから、貴方が大変だからだそうだ。アリスは森奥の人があまり寄り付かない家に引っ越してそこで静かに過ごしていた。わたしも彼女の家に頻繁に通った。
そして、数日後。
アリスが妊娠したことが発覚したのは、わたしは飛んで喜んだ。アリスを抱きしめるとありがとうありがとうと何度も言った。それからは時間が経つのは早かった。そして、生まれたのは彼女に良く似た可愛い女の子。わたしはその女の子にこう名付けた、シャルロットと。
でも、幸せはそう長く続かず。アリスが亡くなるとシャルロットはデュノア社にいいように使われた。本当は助けたかった、でも会社を守るためと割り切り頑張ったつもりだったが……。本当、笑えるものだ。

☃☃☃

私は窓から視線を社長に戻すと社長は変な顔をしていた。

「なるほど。彼女は……あの子は元気にしてるかい?」

「?はい。元気ですよ?」

私の問いには答えてないが社長は笑うと悲しそうな顔をした。

「本当はわたしもシャルロットにあんなことをさせたくなかったんだ。しかし、いつの間にかわたしも彼女から逃げていたんだな。ありがとう……君のおかげで彼女の謝れそうだよ。しかし、ミラにどう説明しようか?」

「ミラ……?」

「私の妻だよ。あの子を『この泥棒猫の娘が!!』って叩いたっていう。君もあの子からおおよそのことは聞いているのだろう?このデュノア社が危機に陥っているって事をね?」

「えぇ、まぁ」

社長は立ち上がると私を手招きする。

「今日は私の家に泊まるといい。シャルロットの小さい頃の写真を見せてあげよう、と言っても少ししかないんだけどね」

☃☃☃

「優里、大丈夫かな……」

洗濯物を干しながら、思わず溜息が出てしまう。思い出すのは優里が突然、『シャル。私、旅行行ってきます』と言った日だ。


『優里、ちゃんとご飯食べなくちゃダメだよ?』

僕は優里に服を渡しながら、心配そうに優里を見つめるが優里はそんな僕の気持ちなどお構いなしで着々と準備を進めていく。そして、僕を見るとプッと吹き出す。

『大丈夫ですよ、シャル。本当、シャルは心配性ですね』

『違うよ。僕が心配性じゃなくて、優里がダラズなんだよ』

『……シャルはもしかして……私に喧嘩うってます?』

『うってないよっ!!』

僕は至って真面目に、優里の事が心配で。だって、優里は朝あんなに弱いのに……。もし……、電車で寝過ごして変な所に行ってしまったらとか嫌な想像ばかり頭によぎる。しかし、優里はそんな僕の心配を見抜いているようで。

『電車では寝ないようにします。朝も……頑張って起きます……っ。だから、そんなに心配しないでください。私はシャルの方が心配なんですから。あんな変態が居るのにシャルを一人で置いていくのは、かなり苦痛の選択だったんですよ?』

『僕は大丈夫だよ』

『その大丈夫が心配なんですが……』

苦笑を浮かべる優里はふと思い出したようにポケットに手を突っ込む。そして、綺麗にトッピングされた小さな包みを僕の掌に置くと頬を赤く染めて横を向く。僕はというとどうしていいか分からず、そんな優里と包みを交互に見ると優里がチラッと僕を見て開けるように言う。

『………優里?』

『その……お守りみたいなもの……です』

『うん。開けていい?』

『どうぞ。ご自由に』

『何それ』

優里の顔に似合わない無愛想な言い分に頬を膨らませながら、開けるとそこにあったのはーー。
手にとって、眺めてみる。光に反射して、畳に薄い紫色の影を作る。それを暫く眺めていると。

『それ。アメジストって言って、私の誕生石なんです。本当はシャルの誕生石を送りたかったんですけど、シャルの誕生日知らなくて……。気に入ってくれました……?』

優里が恐る恐る僕に尋ねる。

『うん!ありがとう、優里。大切にするね』

『はぁ……、はい』

満面の笑顔を優里に向けると優里はそっぽを向く。そんな優里がまた可愛く、僕は改めて優里が好きなんだと実感した。


「シャルロット君、ご飯出来たよ〜」

「は、はい。今行きます」

(まぁ、優里なら大丈夫かな?僕より強いし……)
洗濯カゴを抱えている白い指には紫色の指輪が光っていた。

☃☃☃

「それではあそこがシャルが住んでた分家なんですか……。にしても大きいですね。プールも有りますし……」

「優里ちゃん。こっちだよ」

何故か断るに断れず、流されるままにデュノア家に泊まることになってしまった。私は社長に会えたから、日本に戻るつもりだったのだが、こんなことになってしまった。城みたいな自宅に招かれ、おっかなびっくりに入ると使用人やらメイドやらが頭を下げてきたときには流石に帰ろうかと思ったが社長に『ミラの説得を手伝ってくれ』と言われたら帰るに帰れず。ズルズルと客間に案内されているところという事だ。

「はぁ……。なんで、私はこんなにも問題に巻き込まれるんでしょう……」

(間違いなく、自分から問題に突っ込んでいるからだろうな)

自分の性格に嫌気が差す。客間に案内された後は何もすることがなく、ぼゥ〜と外を眺めていたが目に入るのはあの分家であんな小さい……と言っても私の自宅の居間(20畳ぐらい)有るので一人暮らしには不自由しないかもしれないが、シャルはどんな気持ちであそこに住んでいたんだろう。どんな思いでこちら(本家)を眺めていたんだろう。

「………」

帰ったから、聞いて見てもいいかもしれない。彼女がどんな風に育ったのかをーー。
(そうか……私は……。いや、俺は……シャルの事が……)
そんな事を思って、ふっと鼻で笑う。だから、後ろでドタドタと走ってくる足音に気づかなかった。

「優里ちゃん〜〜!!」

「うわっ!?……ってシャーロックさんですか……。なんですか、びっくりさせないでください……」

「だって、ミラが〜〜」

私に抱きつくのはデュノア社の社長でシャーロック・デュノアさんである。そのシャーロックさんのあとを鬼のような顔で追いかけてきたのはシャーロックさんの妻、ミラさんである。そして、ミラさんは私を抱きしめてワンワン泣くシャーロックさんを見て、また怒りマークを増やす。

「シャーロック!!あなたという人は……」

「ひぃ!!優里ちゃん、なんとかして」

「いや、私には関係……」

「このままじゃあ、あの子に会いに行けない」

「良し。ミラさん、とりあえず落ち着いてください」

まぁまぁと鼻息を荒くしているミラさんを落ち着かせるとミラさんはなんとか落ち着いたらしく、今度は腕を組んで私を睨んできた。

「よく見たら、貴女……あの泥棒猫の……」

最後まで続けなかったのは私が彼女を睨んだからだろう。自分の好きな人を泥棒猫と言われて嫌な気持ちにならない人は居ないだろう。彼女は軽く震えるが構わず、続ける。

「あの子に何を言われたか知らないけど、シャーロックは日本に行かないから」

「へぇ〜。そうですか?でも、それってあなたの一方的な言い分でしょう?」

「一方的な?何を言ってるのかしら?この小娘は」

「私は小娘ではありませんよ?男ですから」

「「………」」

「なんですか、その沈黙は」

私の爆弾発言に目の前のミラさんも後ろに隠れているシャーロックさんも目を丸くして、私を舐めるように見る。その視線を苦い顔で耐えると二人の言葉がハモった。

「「えっ?嘘をついてるんじゃなくて?」」

流石に親子というべきか全く同じ言葉を言う二人に苦笑を漏らす。

「本当ですよ。それになんでこんな修羅場で嘘を付かないといけないんですか?シャルにも嘘、付いてないよね?って言われましたよ。本当、親子ですね」

「そうか……あの子も……」

「証拠はーーシャーロックさんとお風呂に入れば分かることです。なんで、顔を赤くするんですがシャーロックさん……」

里親と同じ反応に若干引きながら、ミラさんを見る。

「なんで、シャーロックさんを日本に行かせないんですか?」

するとミラさんは顔を横に向けるとボソボソと呟く。

「だって、シャーロックって方向音痴だもの。迷って、帰れなくなったら困るじゃない。それに……あの子に合わせなくないというか……」

(なるほど、この人もこの人なりにシャーロックさんを心配してたんだ)

「心配しないでください。ミラさん、シャーロックさんは責任持って私が連れて帰ります。だから、シャーロックさんをシャルに会わせてくれませんか?このまま、縁を切ったところでシャルは本当の意味で救えませんし、やっぱり親子は一緒に住むに限りますよ」

その時、私はどんな顔をしていたのかは分からない。でも、ミラさんは暫く考えた後で首を縦に振ってくれた。そのミラさんに頭を下げて、シャーロックさんと二人して喜んだ。

☃☃☃

ある寝室での夫婦の会話。

「ミラ。ゴメンね、またわたしの勝手で」

「気にしないで。あなたの勝手は今に始まったわけじゃないわ」

「で、どうだい?優里ちゃんは?」

「うん。いい子ね、あの子になら任せてもいいかも」

「そうだね。でも、まずはあの子に会ってみないと。わたし達がどうしてあんなことをしたのか……。分かってくれるかな?」

「大丈夫よ。あなたの子だもの」

☃☃☃

「あれが……」

茂みから少年を観察する。濃い金色の髪を後ろで丁寧に結んでいる。青い瞳は憎くらしく思っている人物を思い出すのでなるべく見ないようにする。

「那珂優里……今から地獄を見せてやる……」

その呟きは風にかき消された。
 
 

 
後書き
今まで一番長かった〜〜。

登場人物は全部適当に付けたものです。 
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