Dead!?お笑い部。
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
6終回 冗談みたいに無名
「キミノイウ、オワライブ『ッテノ』ニ、入ってやるよ」
「ホントか!?」
「アァ、イッショウナ、ヤク『ソクシ』テヤル」
「よっしゃーぁああ!」
米田 砂種は両腕を上げてピョンピョンと飛び跳ねた。
「やったぜえ!いや待てよ、これは、器械人形が部員の部ってもしかしてお笑い部だけ!?マジか?多分マジだよなぁ!」
「ゴロウガバスケ『ブニハイッテイ』ル」
「マジかぁ、一番乗りでもオンリーワンでも無かったかぁ……いやいやでもでもでもこれでお笑い部が正式に部になるぜぇ!」
「キカイニ『ンギ』ョウ、ウソイエナイ」
「よっしゃーじゃあ残りの部員のとこに行こうぜ!」
「シンニュウ『ブインノ』、ヤンシュー・トキ、ダ。ヤン『シュートヨ』ンデクレ」
「暮家 智野よ。宜しく」
「俺は塚見 一男。宜しく」
「コチ『ラコソヨ』ロシク」
「そして俺が、米田 砂種だ!」
……
……
「……え、えっと、知っとるわーい、はは」
「…………なんかごめん」
砂種は激しく落ち込んだ。
「いや……これは俺達がやらかしたかもしれん」
「オワラ『イブダシボケニタイオウ』セネバナ」
「うん……でも、いきなり振るのも無茶だったな……」
……
……
……
ボガァアアアァアァァアアン!
沈黙を破ったのは、壁が爆発した音だった。
「何だ!?」
「ククククク、米田くぅん……」
その声は聞き慣れたものだった。ある時は敵対し、ある時は共に競いあい高め合った……
「貴様が隠し持っていたのかアァああああアァぁ!」
「何よコイツ、知り合い?」
智野が砂種の方を向く。
「こいつは……名前は知らない」
「知らないのかよ」
「いや名前は知らないんだけど、何回も会ってんだ。名前を変えて、姿を変えて」
砂種が前を向くと、砂煙が晴れて、目の前が見えるようになっていた。
「気づかれちゃいましたかぁ、まぁいいや、確かにぃ、あなたに名乗ったのは偽名ですぅ。本名をタダで教えるっていうのはマスコミの流儀に反するのでねぇ」
それは、ひょろっとした20代後半の男だった。エイのようなものの上に乗って、宙に浮いている。しかし、その声は年齢の割に高いものだった。
「申し遅れました私、……」
「名乗んなくていい」
男の自己紹介を、砂種は遮った。
「クズで、十分だ」
「……クズでとは、仲良しってわけじゃなさそうね」
「クズで十分と、どんな因縁があったんだ?」
「クズデ・ジュウブ『ンダモソウ』トウウランデルミタイダナ」
「お前ら折角俺がかっこよく決めてんのによぉ!」
「ククク……おしゃべりはそこまでにぃ、しておいた方が、いいですよぉ」
クズはニタァと笑った。
「飛ぶエイの、ファンのクリーニングが終わりましたぁ。これで、100%の力が出せます。さぁぁ、絶望なさぃ……」
飛ぶエイの双翼に取り付けられた小さな銃口から、何かが飛び出してくる。
「っ!!」
パジュジュウウ!
砂種が腰を抜かしたように体の下にやると、上から硬いものが焼け融けるような音がした。
「……すげぇ威力」
「ハハハハハハフハハァアアァアぁぁ、いいですいいですいいですねぇえああはははあははは!」
クズは狂ったように笑い散らした。
「さぁぁ、腕の1本でも撃ち抜けばぁ、アナタも差し出す気になるでしょぅハハハハハァ!」
体勢が完全に崩れている砂種に、飛ぶエイの銃口が向けられる。
「ハハハァ!」
「っ……!」
「タピオカショットガン!」
パパパァン!
「……!?」
砂種がゆっくり目を開けると、全く敵対せず、高め合いのたの字も無い人の背中が見えた。
「……人殺しを見過ごすのは、流石に怪盗の流儀に反しますからね」
「……お前誰?」
「あ、そういや予告状うんたらって、前にあったよーな、無かったよーな……」
「忘れた」
「オ『レハシ』ランゾ」
「なんでもいい」
怪盗は体の向きを変え、砂種を見据えた。
「君はサイボーグ機械を適合させてくれ、早く」
「っ!?なんでそのことを……」
「いいから早く!ここは僕が時間を稼ぐ!」
そう言うと怪盗はポケットから何か丸っこくて少しトゲトゲした物を取り出した。
「怪盗流弐三式 ドリアンボム!」
怪盗はすぐクズの方を向くと、手に持ったものを地面にたたきつけた。
ボン!
その瞬間
「ぐええぇえぇぇえううおおぉおおぉうぇええ」
とてつもない悪臭が辺りに立ち込めた。
「早く行くんだ!」
怪盗が急かす声に押し出されるように、砂種は這うように歩き出した。
「……ふぅ、臭いはもうしないな」
砂種はある程度離れたとこでひと息ついた。
「さぁて、行くぞ、アイツを、止める……」
自分の為、みんなの為、お笑い部の為、
「うおぉぉおぉおおおおおぉおぉおぉぉお!」
砂種は走った。そして、校長室のドアを勢い良く開ける。
「校長先生!お願いがあります!」
「……」
撃栂 胡蝶は、肩で息をする砂種を見つめた。
「……サイボーグ機械に、相応しい人間になりましたね」
それから胡蝶は、砂種がしたこと、やらなかったことを叱り、褒めた。
(いい加減終わらねぇかなこっち急いんでんだよ)
「いいでしょう」
胡蝶がボタンを押すと、機械の腕が伸び、1つの絵画の裏にある、鍵をつまみとった。
「……ありがとうございます、校長先生」
砂種は一礼するとそれを受け取った。
「……いきなさい」
「……はい」
砂種は、鍵を握りしめた。
図書館の、地下2階。そこにエレベーターで行く方法は、生徒達の間で噂になっていた。
「……えっと、」
薄暗い廊下をコツコツ歩くと、「関係者以外立ち入り禁止」と書かれた扉があった。番号を入れると、ピピ、という電子音の後に解錠の音がした。
(ありがとう……ヤンシュー)
するとすぐ目の前に、人の大きさの機械があった。
「これを……」
校長から託された鍵のボタンを押す。
「……!!」
ドガァアアアァアン!
「!?」
突然の真横からの爆発に、怪盗は対応出来なかった。
「隙ありいぃいぃいいぃい!」
そこに飛ぶエイの銃口が向けられる。怪盗は完全に体勢を崩している。
「バァイバァアアアアイ!」
パシュウ
パバキキン!
「んなぁに!?」
飛ぶエイの2つの銃口が、突如はじけ飛んだ。
「……みんな、無事か?」
いつも何度も聞いたその声に、みんなが顔を綻ばせた。
「砂種!」
「米田!」
「米田君!」
「キッサマアアアァアァァアァァア!」
激昂したクズが飛ぶエイで突進する。
「……ルールは1つ」
砂種は校長に渡された鍵を向けた。
「!?」
バギャ、ボガァアアァアン!
「俺の勝ちだ」
空を飛ぶ乗り物を壊され、重力に引かれて落下していくクズの音を聞きながら、砂種はゆっくりと仲間達の元に歩いた。
「……成る程。これで4人揃いましたね」
「じゃ、じゃあ……」
「お笑い部の、存続を認めます」
「「「やったああぁぁあ!!!!」」」
砂種達は互いにハイタッチし、リンボーダンスをし、喜びをわかちあった。
「但し」
そこに食い込むような胡蝶の鋭い声。
「部活動を怠ったものがいれば、すぐさま廃部の危機が訪れると思って下さい」
「「「はい!」」」
はしゃぎながら校長室を出る3人を見、姿が消えても漏れる楽しげな声を聞いてから、胡蝶は反対側を向いて、窓の外を見た。
「私も、甘くなったものですね……」
あの怪盗は、「これは君に託す」と言ってどこかへ消えてしまった。またいつか、会えるかもしれない。
ヤンシューは、クズが潜り込ませた自爆装置付きのスパイだったが、左腕は正式にお笑い部の部員になっている。
そして……
「さぁ、始まりました笑いのサバイバル。激戦を生き抜き、勝ち上がるのは誰でしょう?」
司会の小気味のいい挨拶が聞こえる。
前を見ると、みんなが楽しみにこちらを観ている。
「では、第1の挑戦者を発表しましょう、この方です!」
ポチ
「お母さんチャンネル間違えてたよ」
「あーら、ごめんなさい……って、間違ったまんまじゃない」
(へ……あ、ヤベッ!)
「はぁ!?ちゃんと23-a番押したんだけど」
もう一度念押しにボタンを押すのを見て、急いで正しい番組にする。
「ただの押し間違えだったんじゃないの?」
「えー絶対ちゃんと押したし。テレビの調子が悪いんじゃないの?」
「まっさか、買ったばかりよ?」
「どうだろうな。最近のテレビは、買ってから成長するって言うからな、分からんぞ」
「お前は仕事探せハゲ」
砂種は冷や汗をかきながら、次は間違えないように薄型の自分の回路を回してストレッチをした。
後書き
※これからするのは人間の発言なので、この作品にそういうのを求めてない方は急いで戻って下さい
というわけで完結ですね、ありがとうございました。
なんとなく小説を書きたくなったけど、起承転結しつつキャラの成長とか考えるとちょっと病み上がりには辛いので、食い違っててもマイナス点にならない作品を書きました。あと、文量も少なくて済みそうな感じにしましたね。1日に万単位で書くのは無理なので。
最終回は思い切って好き放題やってたけど遊んでたら厨二になってしまったのは何故なんでしょうね。僕別に英雄になって相手をバッサバッサとか夢見てないのに、カッケー主人公がクズ(文字通り)を粉砕するっていう上っ面になってしまったのは運が悪かったとしか言いようが無いですね。
書く前に抱いていた1話のイメージが早速破綻したので思っていたのと全然違うストーリーになってしまいました。当初は1話でお笑い部結成させる気だったし。
ちなみに最終回言ってますが、続きはあるかもしれません。また今の僕みたいな状態になった時に、リハビリする感じで2部を作るかも。
まぁとにかく、これで暇を潰したり何か新しい発見が出来たのなら幸いです。読んでくれてありがとうございました。
ページ上へ戻る