美しき異形達
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第五十四話 山師の館その九
「地下に続く」
「そう、階段だよ」
「そしてこの階段を降りた先に」
「新たな場所があってね」
そのうえでというのだ。
「彼がいるよ」
「そうですか、地下にですね」
「地下はどうなっているかはわからないけれど」
それでもというのだ。
「おそらくはいるよ、ただ」
「はい、急いで探し出さないと」
「そこから逃げられるよ」
その地下からというのだ。
「ただ地下に隠れている様な人ではないからね」
「脱出路もありますね」
このことは鈴蘭が言った。
「やっぱり」
「そうだよ」
「ですから」
それで、というのだ。
「ここは急ごう」
「わかりました、じゃあ」
鈴蘭は伯爵の言葉に頷いてだ、そしてだった。
少女達は伯爵と共に階段を降りた、地下に向かう階段は暗く足元もあまり見えない。しかも長い階段だった。
その暗く長い階段だったがだ、薊が。
その右手に火を出して灯りとしてだ、足元を照らした。薊は灯りになっている自分の火を見つつこう言った。
「力ってのはこう使うんだよな」
「そう、戦う為ではなくね」
伯爵も薊に答えた。
「そうしてね」
「便利なことに使うのがいいのか」
「錬金術もだよ」
「戦いとかに使うんじゃないんだな」
「悪用すれば恐ろしいものになるけれど」
このことは錬金術だけでなく魔術もひいては科学も同じだ、強い力は悪しき方向に使えばどれも恐ろしいものになる。
だが、だ。それを正しき方に使えばというのだ。
「正しい方向に使うと」
「いいんだな」
「この上なく素晴らしいものになるよ」
「それが本来の錬金術なんだな」
「そうだよ」
その通りだというのだ。
「だからね」
「ここはか」
「そう、私は心掛けているから」
その錬金術の使い方をというのだ。
「そのつもりだからね、君達もね」
「こうして使うのはいいんだな」
「そうだよ、ただね」
こう言うこともだ、伯爵は忘れていなかった。
「その力はあまり人には見られない様にね」
「超能力とか言われて騒がれてか」
「色々と面倒なことになるからね」
「だよな、それはわかってるよ」
薊は伯爵の言葉に頷いた、他の少女達も同じだった。
「やっぱりな」
「そう、静かに普通に暮らせたら一番だよ」
「そうだよな」
「平和にね」
「平凡な生活がか」
「一番だよ」
伯爵は温和な笑顔で話した、少女達に。
「芸能人やスポーツ選手で有名になるのならいいけれど」
「それはか」
「そう、けれどこうした力で騒がれると」
「また別なんだな」
「そう、おかしな騒がれ方で」
それで、とだ。伯爵は薊達に話した。
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