戦国異伝
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第二百十三話 徳川の宴その五
その宴を楽しむことにした、その宴の酒はというと。
元就がだ、息子達に唸って言った。
「これはのう」
「はい、この酒はですな」
「違いますな」
「格が」
隆元、元春、隆景も応える。
「匂いがです」
「他の酒ではありませぬ」
「とびきりの酒ですな」
「しかもじゃ」
元就はさらに言った。
「これは本朝の酒じゃが」
「他の国の酒もですか」
「用意されているのですか」
「その様じゃな」
「ではその酒は」
「一体」
「わからぬ、しかしその酒もな」
是非にと言う元就だった。
「飲ませてもらおう」
「ですか、では」
「この度の宴は」
「我等も」
息子達も楽しもうと話してだ、そしてだった。
毛利家の面々も宴がはじまるのを待っていた、そうして酒が運ばれてきてそれからだった。さらにだった。
馳走が来た、その馳走はというと。
鱧に鮑、鯛にだった。そうした海の幸だけでなく。
山の幸もふんだんにあった、その幸はというと。
「猪か」
「鴨もあるぞ」
「それに鹿も」
こうしたものもありだ、その他にも。
海草も山菜もある、そうした馳走の膳が来てだった。
宴にいるどの者も驚かせた、これは織田家の面々も同じだった。
「何と、この馳走は」
「前の時よりも凄いぞ」
「うむ、この城が出来上がった祝いの時の宴の時よりもな」
「さらにじゃ」
「凄いではないか」
見事な食材とだ、しかも。
料理も違った、そのどれもがだ。
前の宴よりも見事だだった、実際に味わってみると。
羽柴がだ、秀長に目を剥いてこう言った。
「これまでの味はじゃ」
「はい、口にしたことはですな」
秀長も鱧の焼いたものを口にしつつ応える。
「ありませぬな」
「全くじゃ」
「堺に都、明石等手を尽くして食材を仕入れ」
「とびきりの料理人達に作らせてな」
「そして使っている味噌や醤油も」
そうしたものもだった。
「普通のものではありませぬな」
「見事なものばかりじゃ」
そちらもだというのだ。
「これはな」
「そうですな」
「だからこの味か」
羽柴は目を剥いたまま言う。
「凄いことじゃ」
「そうですな」
「酒もな」
羽柴はその酒を飲んでまた言った。
「違うわ」
「これまでの酒とは」
「うむ、違う」
それも全く、というのだ。
「美味いというものではないわ」
「全くですな」
秀長も驚きを隠せない、そしてそれは。
公卿達も同じだった、近衛もだ。
その馳走と酒を口にしてだ、山科達に言った。
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