俺の知ってる作品でバトルロワイアル
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
32話:零崎舞織の人間交流Ⅲ
杉村弘樹と共に逃げていた無桐伊織はエリアの境目まで来ていた。森だったフィールドは途切れ、アスファルトで舗装された街のようなエリアの入り口だ。
「服部さん、大丈夫ですかね?」
「‥‥」
杉村の表情は固い。
やはり服部を助けに行きたい気持ちが強いのだろう。
「駄目ですよ杉村さん。ちゃんと最初に決めたとおり、三十分待っても来なかったら街の方に逃げるんです」
それを察した伊織は杉村に釘を刺す。
「‥‥わかってます」
渋々、だがきちんと理解した様子で承諾する杉村。
彼も殺し合いを経験した人間だ。自分の身を守る事が第一だということは見に染みてわかっているし、下手な行動を一度でも取ってしまったらそれが死に繋がることも身をもって知っている。
あの刀を使っていた女は、相馬光子よりも、もしかしたら桐山和雄よりも恐ろしい存在なのかも知れない。
「あと、二分か‥‥」
あと二分。
その間に服部平次が現れなければ、伊織と杉村はこの場から去る。
それは事実上、服部を見捨てるに等しい。
杉村の不安は、服部が一分後に息を切らして森から出てくるまで続いた。
「服部さん! 無事だったんですね!」
「ああ。すまんな心配かけて」
笑って見せるが、伊織にも杉村にも服部が疲れきっていて余裕が無いことがわかった。
「ほんじゃ、さっさと行くで。あのおっかない姉ちゃんが追いかけて来るかもしれんしの」
しかし、服部はそれを見せようとせずに二人を積極的に率いる。
二人はそんな服部を見て、何も言わずに着いていくのだった。
◆
零崎双識と白純里緒の戦闘はまだ続いていた。
幾つものエリアを跨ぎ、幾度となく攻撃を繰り返し、幾度となく離脱しようとしたのだが。
「くっそぉ! しつこいな‥‥!」
接近して斬りつけてきた白純のエリミネイター00を払い、蹴りを入れて身体をぶっ飛ばす。白純は背を壁に勢いよくぶつけたが、すぐに立ち上がって再度双識に襲い掛かる。
「くそ! こっちは早く美琴ちゃんや子荻ちゃんや伊織ちゃんに会いたいのに!」
思わず人が聞いたら白純を応援したくなるような事を口に出す双識。
相手が正気ではないことは最初に襲われた時に気付いていたが、だからと言ってここまで戦闘スキルが高いとも思わなかったし何より何発もまともに喰らって立っていられる耐久力を持っているとも思わなかった。
おそらく首を切断するなどしない限りどこまでも追いかけて来るだろう。
「自殺志願《マインドレンデル》がない方が強いというのは、場合によってかもしれないな」
長い時間走り、長い時間戦い、流石に疲れが出てきた双識は弱音を吐いた。
そしてデイパックから手斧を取り出す。
支給品の一つだ。
後ろを振り返ると同時に、思いっきりそれを投げた。
回転しながら手斧は真っ直ぐ白純の首に向かって飛んでいく。
白純が手斧の存在に気付いたときにはもう、それは目の前まで迫っていた。
◆
服部と共に隠れる場所を探していた伊織は何か、大きな肉が固いものにぶつかったような音を聞いた。
杉村も服部もそれを聞き、警戒して身を固くする。
「どこかで、戦闘が起きているようですね」
「せやな。巻き込まれないよう早めに行かんとヤバイで」
服部も杉村も伊織も、同時に近くの隠れられそうな場所を見つけて身を潜める。
服部は民家の家の庭に入り、塀に身を隠す。
杉村は裏路地に入って外の様子を見つつ隠れている。
伊織は服部のいる庭に生えている木に登った。この位置なら服部に何かあってもすぐに援護できると思ったのだ。
しかし、伊織にとって悪かったこと―――いや、良かったことかもしれない―――は。
戦闘を行っていると思われるうちの一人が、死んだはずの大切な家族だったことだろう。
◆
(まさか、手斧を歯で受け止めるとはな‥‥)
殺人鬼と人食鬼の追いかけっこはまだ続いていた。
まさに万事休すの状況だったその時、追いかけて来る白純里緒を振り切ろうとしていた零崎双識は、急に近くに家族がいると感じた。
(アスか? それともトキか? はたまた人識君か?)
幸運だ、と双識は思う。
家族が近くにいるなら、協力して白純里緒を殺害にまで追い込めると思ったのだ。
(もしトキだったらとどめは私が刺さなければならないし、楽器を取り上げられているかもしれないがそれでも戦力は殺し名二人になる。二対一なら負ける道理はない!)
家族の気配が近くなる。
双識から前方二メートルの民家にいる。
向こうも気付いたようで、木から顔を出した。
「伊織‥‥ちゃん?」
一方の伊織も、やはり家族の気配に気付いて思わず木から乗り出した。
「双識、さん‥‥?」
なんで、と言おうとしたところで双識の背後に迫る人食鬼が目に入った。
とっさに伊織の体が動き、ショートソードを抜いて飛び掛かっていた。
長身の双識を飛び越えて、ショートソードの刃を真っ直ぐに突き立てる。
そのままいけばショートソードの切っ先は白純の顔面に突き刺さるはずだったが、白純は突然の襲撃に反応し、後ろに下がった。
結果、ショートソードは僅かに白純の顔を傷付けるだけにとどまった。
そして伊織が着地した途端に、白純は上からエリミネイター00を振り下ろす。
「伊織ちゃん!」
それを見た双識が長い腕で伊織を突き飛ばし、白純の凶刃から庇う。
だが代わりに、白純の持つエリミネイター00は双識の腕に深く突き刺さった。
「ぐ、ああ‥‥!!」
呻き声をあげながらも双識はその長い脚で白純の腹部を蹴飛ばす。
エリミネイター00は双識の腕に刺さったままだ。
白純の得物を奪った。
双識は左手で右腕に刺さったエリミネイター00を抜き、白純に刃先を向ける。
「もう終わりにしよう!」
そう叫んだのは白純に逃げるように言うためではない。文字通り、白純を殺して終わらせるという意味だ。
だが、白純にはまだ武器が残されていた。
右腕を振るい、その指先を双識の顔に向かって伸ばす。
顔をのけ反らせて避けた双識の額に、赤い傷が刻まれた。
「こいつ、爪で‥‥!!?」
言って双識は思い出す。
こいつ、歯で手斧を受け止めてたよな、と。
予想通り、今度は双識の首を目掛けて大きく口を開けて飛び掛かってきた。顔にも何度も打撃を与えて歯も何本か折ったはずなのに、口の中には鋭い歯が一本も欠けずに生え揃っていた。
(化け物め‥‥!)
バックステップで回避を試みるが、間に合わない―――。
そして、一瞬の後。
アスファルトに倒れ付していたのは白純里緒だった。
「大丈夫かいな! おっさん!」
服部平次が、白純の背後に回って支給品のガンツソードの峰で白純を殴ったのだ。
「私は、おっさんではない――――!」
返事を返す双識は倒れた白純の心臓目掛けて、勢いよく踵を落とした。
渾身の一撃を叩き込まれた白純の心臓は、停止した。
ふぅ、と一息ついてその場に座り込んだ双識に伊織と服部が駆け寄る。
「やあ伊織ちゃん。ようやく感動的な兄妹の再開を祝えそうだよ」
「いや、その前に何処かで休みましょう」
「そうだね。出来れば伊織ちゃんに包帯巻いてもらったり伊織ちゃんにあーんしてもらったり伊織ちゃんにナース服着てもらったりしたいな」
「こんなところにナース服なんかあるわけないでしょう」
やはり双識だ。
本物だ。
と、こんなことで実感してしまう伊織。
しかし変だ。この双識が確かに本物であることが間違いないのだが。
どうも、一度死んで生き返った人間には見えないのだ。
もしも目の前の双識が伊織と人識の前で死んだ零崎双識ならば、自分の欲望全開な要求よりも自分が死んだあと伊織や人識がどうなったかの方を気にするはずなのだ。
「あの―――」
と、伊織が疑問を口にしようとしたところで、服部が二人を呼んだ。
「おっさん、とりあえずあいつは服破って縄代わりにして縛っておいたで」
あとこれ使うならやるわ、と言って白純の持っていたエリミネイター00を差し出してきた。
「わかった。ありがたく貰うとしよう」
あと私はおっさんではない、と付け加えながら双識は考えていた。
この少年はやはり殺し合いには乗っていない。そして人を殺す気もない。
結構腕は立つようだが一般人だな、と。
彼は白純を後ろから攻撃したとき、刃ではなく峰で叩いた。つまり、どう見ても殺し合いに乗っていた白純も殺す気がなかった、ということになる。
だから白純にとどめを刺すときに伊織のショートソードを使わずに心臓を踏んで止めたのだ。一般人には気絶させたようにしか見えないだろう。
とはいえ、伊織をここまで守ってくれたのは感謝しているし、白純の凶刃から逃れられたのも服部のお陰である。
「文句なしの合格、だな」
その言葉の意味がわからずキョトンとする服部に双識は何でもないと言う。
「そういえば、君の名前は聞いてなかったね。妹を守ってくれてありがとう」
「気にせんでええよ。ワイは服部平次。あと一人杉村っちゅう坊主がいるんやが―――」
そこで服部が気付いた。
杉村弘樹はどうしたのだ。
もう戦闘は終わったのに、なぜ出てこない。
「服部さん! 後ろ!」
考え始めてしまった服部は、それを避けきることが出来なかった。
心臓が再び動き出した白純里緒が、爪や歯で拘束を破り、一番近くに立っていた服部に襲い掛かったのだ。
伊織の声に思わず振り向いて、白純に気付き慌てて回避行動をとるも、間に合わなかった。
白純の爪が服部の脇腹を裂き、赤い血が飛び散った。
「平次君!」
双識が強烈な蹴りで白純を蹴飛ばすと、白純の身体はあっさりと地面に転がる。
白純は起き上がると同時に、飛び上がって逃げ出した。
双識は追いかけようか一瞬迷い、止める。伊織と合流した今は白純に構う理由も暇もない。
「服部さん!」
「来るな! 今すぐおっさんと逃げるんや!」
駆け寄った伊織を服部は手で制す。
戸惑う伊織をよそに服部は続ける。
「それと、杉村は多分―――」
言いかけたところで、辺りにガキンという金属音が響く。
「言うとおりにしよう伊織ちゃん。確かに相手が少々ヤバい」
見ると、エリミネイター00を構えた双識が白目を赤く染め、包丁を手にした杉村弘樹と睨み合っていた。
両者の刃物は、刀身をぶつけ合っている。
「まさ、か―――」
その杉村の目に見覚えのある伊織は、つい先程のことを思い出す。
そこに靴音が響く。
伊織が顔を上げると、やはり、罪歌を構えた桂言葉がそこにいた。
「二人とも逃げるんや。ここはワイが何とかするわ。さっきやられた傷が思ったより深いんや。ワイはどのみち逃げることが出来ん」
それを見て、少し戸惑った伊織だが、すぐにはいと返事をした。
「双識さん、逃げましょう!」
双識は頷き、杉村を蹴り飛ばすと服部に向き直り、
「すまない、平次くん」
と、心底申し訳なさそうな表情をしながら言った後に伊織と共に逃げていった。
それを確認した服部は脇腹の傷から血を流しながらガンツソードを掴み、杉村弘樹と桂言葉に、罪歌とその子供に向き直る。
最初に斬りかかってきた杉村の包丁を躱し、体勢を崩したところで峰打ち。
杉村は倒れる。
いつもなら片手間でこなせる動作だが、脇腹の痛みのせいで服部は既に満身創痍だ。
「はあああああ!!」
踏み込んでガンツソードを振り下ろす。
桂言葉はその一撃をあっさりと弾いて返す刀であっけなく服部を斬り刻んだ。
「ぐ、はぁ」
血を吐きながら服部は倒れる。
致命傷だ。もう助からない。
(おとん、おかん、大滝はん、それに―――和葉)
何故か、走馬灯の最後に映ったのは、あまり女らしくない性格の幼馴染みの顔だった。
(すまん。あとは任せたで、工藤―――)
自らの流れ出続ける血に浸かった服部平次は、東の高校生探偵に全てを託して、やがて目を閉じた。
【服部平次@名探偵コナン 死亡】
【零崎舞織@人間シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:ショートソードを装備、ポケットにコンタクト
[道具]:支給品一式、ショートソード@現実、コンタクト@GANTZ、海藤瞬のノート@斉木楠雄のΨ難
[思考・状況]
基本思考:人識君や潤さんを探す
1:殺し合いには乗らないつもり
2:人識君平気ですかね?
3:安全な場所まで逃げる
4:双識さん、何か変です
5:ごめんなさい服部さん
【零崎双識@人間シリーズ】
[状態]:右腕に大きな刺し傷、疲労(大)、全身裂傷
[装備]:エリミネイター00
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1つ、エリミネイター00
[思考・状況]
基本思考:家族と合流する
1:白純里緒(名前は知らない)を殺す
2:桂言葉は次に会ったら殺す
3:杉村弘樹は次に会ったら殺す
4:伊織と共に安全な場所に逃げる
5:服部君、すまない
【白純里緒@空の境界】
[状態]:発狂、起源覚醒、一部骨折、全身打撲、再生中
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ランダム支給品2つ
[思考・状況]
基本思考:両儀式を探す
1.零崎双識の殺害
2.何でもいいので人を食べる
【桂言葉@SchoolDays】
[状態]:罪歌に乗っ取られている、身体は健康
[装備]:罪歌@デュラララ!!
[道具]:罪歌@デュラララ!!
[思考・状況]
基本思考:*罪歌に乗っ取られている
1:人間を愛する
2:(1は翻訳すると斬りつけまくるという意味)
3:もしかしたら意識が少し戻る可能性もある
4:妖刀に乗っ取られても誠への執念は消えていない
5:誠くんを探さなきゃ…
6:双識(名前は知らない)を警戒
7:杉村を使って人間を‥‥
【杉村弘樹@バトルロワイアル】
[状態]:気絶中、罪歌に乗っ取られている
[装備]:包丁
[道具]:支給品一式、ランダム支給品三つ
[思考・状況]
基本思考:罪歌に従う
1:気絶中
後書き
ページ上へ戻る