妄想全開男子
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教室〜「夏の魔物」
「あー彼女ほしーな」
「本当それな。誰か適当に俺と付き合ってくんねーかな」
バカだなー。彼女ってのは作るものじゃなくて、一緒にいたいと思える人の事を言うんだ。それ以外は真実の愛とはいえん。具現化した虚像だ。
そんな考え持ってっと一緒彼女なんてできないぞ。
半袖のYシャツが目立ち始めるこの時期は、決まって頭がおかしくなる奴が現れる。
廊下で「オベロベロバ」と意味のわからない事を発狂しダッシュしていくものもいれば、中庭で躊躇なくコーラを頭にぶっかける奴だっている。皆この夏の暑さという「魔物」にやられている。
「どんな奴が好み?」
「俺はだな‥‥。締まりがいい奴なら誰でもいいかな」
「アハハハハ!それなかなかの好条件じゃね?」
俺は教室の黒板の横にかけてある温度計を確認しに行った。
35度!?まじかよ!!金属部分に卵当ててれば簡単に卵焼きが作れるじゃないか!?
‥‥‥‥。いやそんなことないか。
「実際やらせてくれれば誰でもいいかな。おっぱいが大きければなおさらいいな」
「おっぱいかー。なら永井さんとかよくね?あの爆乳きっとGカップはかたいぞ」
「爆乳の永井さんいいね!ちょっとおっぱい揉ませてくれるか聞いてくるわ」
「おま‥‥ちょ、やめとけって」
さっきから下卑た話ししてんなー。
俺は自分の席に戻り、右前で会話をしている男子2人を睨みつけた。そっと。優しい眼差しで。他の人に睨みつけてるのがわからないくらいに。
そもそも彼女が欲しいのか、事を済ませたいのか、おっぱいが揉みたいのかどれなんだ?
「永井さん。そのおっぱい揉ませてくんね?」
おっぱいが揉みたいんだな。わかるぞ。あの目は結構ガチの目だ。暑さでやられてる奴に便乗してセクハラするつもりらしいな。
「は?何言ってんのキモッ!そんなの彼女のもんどきなさい」
「俺彼女いねーんだわ。だから揉ませてくんね?」
「え‥‥。彼女いないの‥‥!?」
あれ?永井さんそのお反応はもしやあれですか?「私こいつの事好きだけど彼女がいるもんだと思って手が出せなかったの」って奴ですか?
永井さん気持ち顔赤くなってねえか?これは夏の暑さのせいだよね?そうだよね?
「え‥‥あ、いやちょっと、まって。今のなし!おっぱいなし!」
「あ、うん。わかった‥‥」
あの男子すげえ!名前わからんけどすげえ!暑さに便乗して明白な事実しれたぞ!?こんなに簡単に彼女って作れるものなのか?おっぱい揉めるものなのか?
「おいどうだったよ?永井さんどんな反応だった?アハハ」
「俺もしかしたら今晩永井さん抱けるかもしんねえ」
「アハハハハ!ガチかよ!どっからそんな自信生まれんだよ!」
「いやガチで‥。彼女今日中に作れっかも」
「えガチで?マジ?リアルガチ?」
「うん」
「‥‥‥」
お前らの友情そんなものかよ!?何ちょっと引いちゃってんだよ!彼女できるとわかった瞬間に距離があくパターンの友情じゃん。
それにしても羨ましいな。一瞬の欲であんなにもあっさり彼女が作れるものなのか。俺も欲しくなってきた。真実の愛とかいらんから童貞捨ててしまいたい。
いいなー!あいつGカップの彼女かよ。毎日もみほぐし放題じゃん!あいつ今晩童確じゃん!童貞損失確実じゃん!
俺も揉みてー!Gカップまで欲は出さないからせめておっぱいが揉みてー!Bカップで妥協しますから俺に揉ませてください!任せてください!今日中に感度抜群にさせますから!エロゲで鍛えた俺のテクニックで吹かせまくってやるから!
ポトッ
脳内で妄想を爆発させていると、隣の女の子が消しゴムを落とした。
彼女はそれに気づかず次の時間の宿題を終わらせようとしていた。
ん?消しゴム落としましたよー‥‥って言葉に発しないと伝わらないか。告白と同じだな。告白?
「お前いつ告る気?今日中に抱けんだろ?」
「じゃあ今してくるわ」
「かっる!Light!ベリーLight!」
あいつ行動力パネェな!マジパネェ!マジリスペクト!いいなー俺もあれくらいの行動力があれば彼女できてたのに。
行動力があればね?行動力があればできてたから。
俺は地面に落ちた消しゴムを見つめた。
これをとったら俺も彼女と付き合えるきっかけを作れるんだろうか。
もし消しゴムを取る際に、偶然手と手が重なったりしたら、ワンチャンあるんじゃないか?
いや、あるんじゃないか?じゃなくてあるんだ!これは俺の人生の分岐点なんだ!
俺はさっきのあいつの勇敢さに心打たれた。
要は行動力ときっかけだ!
彼女と手が重なり合うことはなくても、消しゴムとってあげたという行為が(目測Bカップの)彼女の脳内に焼きつくんではないか。
俺は地面に落ちた消しゴムを拾おうと、手を消しゴムに向けた瞬間、その消しゴムを奪い取るような形で俺より早く消しゴムに誰かが手をかけた。
誰だ!?俺と同じような考えを持った奴は!?
ん?でも白くてすべすべしてそうな肌だな?
その手を伸ばした方向に目をやると、消しゴムの持ち主であった。
なんと!?彼女も俺と付き合いたいがために手と手を重ねてきっかけ作りをしようというのか!?
なるほど‥‥。彼女‥‥。なるほど。
なら話は早い!お望み通り手を重ねてやるぅぅ!
そんなことを思っていたのもつかの間、彼女と手が触れ合う前に彼女は消しゴムをサッと握りしめ、自分の「所有物だ!」とばかりに胸に押し付け、俺をにらんだ。
「大丈夫です」
俺は一瞬何が起こったのかわからなかったが、数秒後に頭の中を整理し理解した。
そうか!彼女はシャイなのか!
フッ!俺と同じで奥手なんだな。
ならば付き合ってやろう!
その草食系女子の想いが俺に爆発するまで!超草食系男子VS草食系女子の耐久戦勝負だ!
そして俺は思った。
彼女は確実に俺に惚れている!!!
俺も廊下で発狂する男子と同様、自分ではわからないうちに、夏の暑さという魔物にやられていたのかもしれない。
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