Dead!?お笑い部。
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その2話 1ー1=0
空に浮かぶマンボウ。彼はこのデザインを気に入っていた。
草木眠る深夜、マンボウは目的地周辺で停止した。
彼はマンボウからはしごを降ろす。彼が降ろしたはしごを下ると、学校の4階の窓が目の前にあった。
「さーって、招待券を配りますか」
彼が指をパチンと鳴らす音が、静かな闇の中にじんわり染みていく。
ガ、ガガ、ガ、ガ……
その音に反応したかのように、施錠されていた筈の窓が開いていく。
「では皆さん、楽しみにしていて下さい」
彼は人差し指と中指で挟んでいた手紙のようなものを飛ばした。手紙は綺麗な縦回転をして、窓の隙間に仕組まれたように入っていく。
「なんだこれー、俺宛か?」
「は!?」
校舎からの呑気な声に、彼は素っ頓狂な声を上げた。
「つーか投げていいのはブーケと匙だけって親に……」
「さようなら!また会おう!」
校舎に人が残っていることに気づいた彼はパニックになりながら引き揚げられるはしごに捕まっていた。
彼の予想だにしない事故にも関せず、マンボウはゆっくりと進む。
「……まだ大丈夫だ、僕の計画は、まだ終わってない……」
彼は目をつむり、呪文のように呟いた。
「……要は、今日の15時に、怪盗が来て絵を盗むんだな?」
「『スープと宇宙船と肉』、ねぇ。宇宙飛行士にでも売るのかしら?」
米田 砂種の広げた手紙を見ながら、昨日勧誘したお笑い部員の塚見 一男と暮家 智野 が思い思いに感想を述べた。
「……なぁ、2人に相談なんだが」
砂種は後ろを振り向き、真剣な眼差しで2人を見た。
「これ、学校にとってかなり重要な情報だよな?」
「まぁ、そうね」
「確かにね」
砂種は2人の反応を見てから口を開く。
「いい交渉道具にならないか、これ?」
「……お笑い部存続の為のか?」
一男の質問に砂種はゆっくりと頷く。
「これさえあれば、この学校のインフラを抑えることすら容易だ。いわんや部の存続おや」
「そんな簡単に行くの?」
智野の疑問に砂種は力強く頷く。
「実物を見たけど、アレは絶対高そうだって。あれの生死に関わるなら、校長だって動かざるをえない」
「校長が動くぅ、気になりますねぇ?」
「うわ!?」
背後からの不意の声に、砂種達は飛びのいた。手紙は急いでポケットに突っ込む。
「お、お前は致知羅 智羅地」
「誰だ?」
「クラスメイトよ」
「マジで!?知らんかった」
「いかにもぉ、新聞部に所属しています、致知羅 智羅地と申します。以後、お見知り置きをぉ」
智羅地はメガネの位置を直すと一礼をした。小柄な彼の顔が、余計低い位置に来る。
「くっ、いつから俺達の話を聞いていた!?」
「弥生土器の作り方からです」
「朝飯食ってる時からだとぉ!?」
「落ち着いて米田!」
「ハッタリかもしれん!」
「っ、そうか」
砂種は深呼吸をした。
「弥生土器の作り方ぁ、その1、天地に祈りを捧げ……」
「ハッタリだったぜ!」
砂種は勝ち誇ったように叫んだ。
「はぁ、バレてしまいましたか、いかにもぉ、カマをかけただけです。しかしぃ、あなた達が今、重要な情報を持っていることはぁあ、明らかなんだよぉ!」
智羅地は目をギラリと光らせた。
「逃げるぞ!」
砂種は叫ぶや否やその場を駆け出した。
「ハハハハハッハハハハ!」
智羅地の狂った叫び声を、破壊音が掻き消す。
「くそっ!」
砂種は後ろで何が起きているのか恐怖しながらも、前のみを見て走り続けた。
スッ
砂種の目の前に、突如少女が現れた。
「呼応して、私と」
感情の感じない、ガラスのような声。
「ああもう、呼応でも龍でもしてやるよ!」
少女は右手をゆっくり前に出した。砂種も、返すように左手を前に出す。
「これで何が……」
「バーカ嘘だよ」
「は!?」
「よくやったレイコぉ!」
背後から智羅地の叫び声。
「しまった!時間を稼がれっ……」
「塵と化せぇ!」
ゴワアァァァアァアァァア!
「うわああああああああああああ!」
こうして俺達は、灰になった。
予告時間の2分前、彼は呑気なマンボウと共に空に浮かんでいた。
「さぁて、そろそろショータイムの舞た……え?」
マンボウの窓から外を見た彼は、間抜けな声を上げた。
「おい爺や、学校が消えてるぞ!どういうことだ!僕を説得する位に説明してみろ!」
「申し訳御座いません、私にもなんとも」
爺やは弱々しく頭を下げるばかりだ。
「クソッ……!」
彼は汚く毒づいた。はしごを降ろして直接見ても、そこがただの更地になっている事実に変わりはなかった。
彼は怪盗の経験が浅い。しかし、今目の前で起きていることが異常であること位は怪盗の本能で感じ取っていた。
「帰るぞ、爺や」
彼は上に向けてそう命じながら、引き揚がるはしごを登った。
「絶対に、『スープと宇宙船と肉』は手に入れてみせる……!」
マンボウは相変わらず呑気に、空に浮かんでいた。
後書き
「俺の為にお笑い部がある、お笑い部の為に必殺の洗脳光線がある。たとえ夜が華やいでも、昼が暗けりゃ意味がねぇ。待ってろ怪盗ノキューブ、お笑い部は絶対に存続させてやる!次回、Dead!?お笑い部。『ワインの醸造と一匙のスープ』。なんとかなれ、俺の未来!」
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