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遊撃隊

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2部分:第二章


第二章

 そうして背筋に寒いものを味わいだ。こうも言ったのだった。
「いや、断言はですな」
「左様、王妃様についてあれこれ言えば」
「それも充分に理由になります」
「そうなりますから」
 こう話してだった。彼等は。
 その言葉を一旦止めて解散した。しかしだった。
 今度はだ。神聖ローマ帝国、フランスの宿敵であるその国の大使がだ。賄賂のことが明らかになりだ。本国から解任の命令が来た。
 こうしてその大使はフランスから消えた。その大使もだった。
「思えばあの大使はです」
「左様、大のフランス嫌いでした」
「始終イギリスの大使と会い我が国に何かしようとしていた」
「そうした御仁でしたな」
「しかし」
 ここでだ。一つ疑念が出て来た。
「あの大使殿に女性問題はありませんでした」
「特に女好きではありませんでしたが」
「それでどうしてあの大使は失脚したのでしょうか」
「謎ですな」
「いや」
 しかしここで、だった。一人があることに気付いた。
 そしてそのことをだ。友人達に囁いたのである。
「神聖ローマの大使館の女官の中にもイタリアの者がいましたぞ」
「ああ、ジェノヴァの」
「あの町出身のですか」
「メディチ家のあの町の」
「はい、いました」
 このことがだ。今話に出たのである。
「そしてその大使館の女官と王妃様の女官がしきりに会っていたとか」
「ではそれによって情報が出ていた」
「あの大使の賄賂の話が」
「出ていたのですか」
「そうかも知れません」
 最初に予想を述べたその貴族がまた言った。
「ですから。どうやらです」
「王妃様の目はあらゆるところに届いている」
「そうなのですね」
「そう思っていいかと」
 このことがだ。また彼等の首筋に刃を突き立てた。フランスの宮廷に剣呑でしかも暗澹たるものが始終漂うになっていたのである。
 そしてその中心にいる王妃はだ。自室にいた。
 白く面長の顔である。目がやや丸い。豪奢な宝石やカラーで飾られた金や銀の服を着てだ。席に座りそうして目の前に立つ女達に告げていた。
「これであの太子はいなくなりましたね」
「はい、見事です」
「そうなりました」
「今度も上手くいきました」
「いいことです。それではです」
 ここでだ。さらにだった。王妃は女官達に言った。
「今度はモントフル子爵夫人です」
「王の寵妃であるあの方をですか」
「今度は」
「毒を」
 王妃は酷薄な笑みで言った。
「毒を使いなさい」
「では子爵の屋敷の使用人を使って」
「そうしましょう」
「使用人達は篭絡していますね」
 王妃は女官達にこのことを確めた。
「それは既にですね」
「はい、そうです」
「それは私達が褥で果たしました」
「もうです」
 女官達は答えていく。そしてだ。その話を聞いてだ。
 王妃はだ。満足している顔でまた女官達に話した。
 
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