飢えし少年
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過去
突然の雨。
響きだした雷鳴に、ふとオルクはある記憶を思い起こした。
幼なじみであった、リンネのことだ。
幼い頃から両親のいなかったオルクを、差別化せず、温かく接してくれた自分と同じ歳の女の子だった。
「私、将来は誰かの笑顔を作る仕事がしたいんだ。まだ、決まってないんだけど。」
はにかみながら笑うリンネにオルクは唯一信頼を寄せ始めていた。
そんな最中の事である。
メルレアでは珍しく雨の降らない日が続き、水は枯渇し、作物が育たないどころか餓死者まで出るという大惨事になった。
メルレアの長達は話し合った。
このままではメルレアは崩壊してしまう。
いかにしてこの状態を脱するべきか、その答えを皆、持ち合わせていなかった。
そんな中、一人の長がこう言い放った。
「その昔、メルレアでは龍の怒りにより、今のメルレアと同じ状態に陥ったことがあるそうです。その危機は、若い女を生贄に差し出すことで免れたようです。今がその時、生贄を差し出すべきではありますまいか。」
恐ろしい言葉にも関わらず、周囲は了解し、該当する女をさがしたところ、忌み嫌われているオルクと仲の良いリンネが真っ先に指名された。
数日後。
リンネは櫓の上から池に落とされ、生贄と称して誰にも知られず殺された。
生贄になるとしったリンネはこう言っていた。
「私の命一つで皆に笑顔が戻るなら、私は生贄になるよ」
リンネは泣きながら笑っていた。
メルレアには雨が戻った。
引き換えにオルクは深い悲しみと憎しみ、自分の存在を呪った。
自分のせいでリンネは死んだ。
オレはもう誰も信じられない。
自分だけを信じて生きる。
必ず復讐してやる。
生きて必ず。
それがリンネへの弔いだ。
目が覚めた。
いつの間にか寝てしまったようだ。
忘れかけていた決意をまた深く刻み込み、雨が上がり、少し虹がかかった空を見上げた。
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