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離れ小島

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2部分:第二章


第二章

「俺達は負けたんだ」
「それもあるんですね」
「やっぱり」
「負けたからですか」
「負けた奴は何をされるかわからない」
 将校は苦い顔でこの現実を話した。これは歴史において幾度もあったことだ。それで多くの惨たらしいことが行われてもきているのだ。
「そういうことだ」
「じゃあ今から俺達は」
「もっととんでもないことになるんですね」
「そういうことですか」
「死ぬ位はましだと思っておけ」
 将校の言葉は苦かった。
「いいな、それは」
「わかりました」
「それならです」
 彼等は将校の言葉を受けてだ。苦い顔で述べた。そうしてだった。
 そのうえでだ。彼等は覚悟を決めた。しかしだった。
 暫くはこれといって何もされなかった。虐待や侮蔑は相変わらずだがそれでもだ。それでも断罪という名の拷問や虐殺はなかった。
 それにだ。捕虜達はいささか拍子抜けした。そうしてこう言い合うのだった。
「アメリカ軍は俺達の髑髏や耳を取っていたそうだがな」
「国民党の処刑なんて酷いんだろ?」
「いや、オランダの奴等は最悪らしいぞ」
 彼等は戦争中に聞いた噂、残念なことも全て真実であることを言い合った。
「けれどここはな」
「確かに色々やられてるけれどな」
「それでもだよな」
「ああ、そこまではないよな」
 このことに少し安心しようとしていた。しかしだった。
 将校はだ。深刻な顔でその彼等に言うのだった。
「安心するな」
「やっぱり何かあるんですか」
「そうなんですね」
「そうだ、その証拠にだ」
 ここで彼は言った。
「御前等、最近まともな飯を食ってないだろ」
「食事の配給がかなり減ってますよね」
「ええ、餓え死にさせるつもりですかね」
「それですかね」
「ただそれだけだったらいいんだがな」
 ここで将校もこうも言った。
「それあけだったらな」
「といいますと」
「ここでもですか」
「何かあるんですね」
「仕掛けてくるんですか」
「杞憂だったらいいんだがな」
 一応はこう言う将校だった。
「それだけだったらな」
「まあ食い物でしたらありますしね」
「そうそう」
 兵士達は食事のことが話に出るとこんなことも言った。
「ここは川の中ですからね」
「周りに魚が一杯いますし」
「それに」
 何かわからない文字での貼り紙が目立つコンクリートの収容所のその外にはだ。赤く小さなものがいた。水辺のところを埋め尽くさんばかりである。その赤いものを見て話すのだった。
「あれがいますしね」
「蟹がね」
「これでもかといますし」
「あれ、食えますよ」
 楽観している顔の者もいた。
「あれを食いましょうよ」
「それでどうですか?」
「蟹で」
「蟹か」
 将校もその蟹を見てだ。ここでは悲観する言葉を出さなかった。こう言うのだった。
 
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