力が正義
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2部分:第二章
第二章
「裁判官、異議があるぜ」
「俺もだ」
クロケットとシーンがそれぞれ言うのだった。
「俺の雇い人はその時に払えと言ったんだ」
「こっちの雇い人はな、ちゃんと聞いたんだよ」
「後でそれだけの金を払えってな」
「今払うだけでいいってな」
赤鼻と緑目の主張をそれぞれ代弁する。
「ちゃんと聞いたんだ」
「本人達からな」
「本当ですか、それは」
裁判官は二人の、まさに恫喝するような口調に対しても引かない。まるでそれが日常茶飯事であるかのように対している。
「どちらもなのですね」
「ああ、間違いない」
「そうだよ」
また言う二人だった。
「証人だっているんだ」
「おい、待てよ」
ここでだった。シーンがクロケットの言葉につっかかった。そのいかつい顔を彼に向けてだ。
「こっちにはちゃんと証文だってあるんだぜ」
「そんなのはこっちにだってあるんだよ」
クロケットもその鋭い目で言い返す。
「何なら見せるぞ」
「おう、見せてみろ」
裁判の場でだ。左右に対峙してのやり取りだった。
「その証文をな」
「ああ、これだよ」
こう言ってだ。手書きでの証文を見せるクロケットだった。
「これが何よりの証拠だよ」
「ほお、そういうのならな」
しかしだった。シーンも引かない。それでなのだった。
彼も懐から何かを出して来た。それは。
「これを見やがれ」
「何だ?」
「これが俺の雇い主の証文だよ」
こう言って見せるのだった。その懐の中にあった証文をだ。
「どうだ、これでわかったな」
「おいおい、こっちには証人だっているんだぜ」
だがだった。クロケットも負けてはいない。そしてだった。
口笛を吹くとだった。随分とみすぼらしい男が出て来た。裁判を見ている者達はその男を見て口々に囁くのだった。
「あいつ確か」
「ああ、最近流れ着いた奴だよな」
「名前は確かヘンリーだったな」
名前もよくわからない男のようだった。
「馬の世話してるんだったな」
「随分金に汚い奴だよな」
そんな人間が出て来てだった。証言するのだった。
その証言をたてにだ。クロケットは言うのであった。
「どうだ、これでわかったな」
「そっちの主張が正しいってか」
「ああ、そうだ」
胸を張って主張するクロケットだった。
「これが何よりの証拠だろうが」
「馬鹿言え。それは証拠になるか」
シーンは反撃に出た。
「証人は俺だっているぜ」
「証人だと?」
「ああ、こっちにいるぜ」
シーンもまた口笛を鳴らした。するとだった。
今度はだ。酔いどれた、如何にもふらふらな男が出て来た。その彼は。
「何だ?ジミーかよ」
「あいついつも酒に酔ってるけれどな」
「あいつが証人か、あっちの」
「そんなのできるのかね」
「どうなんだろうな」
見ている者達はまたいぶかしむ。しかしその彼は確かに証言した。
そしてその証言をバックにしてだ。シーンは主張するのだった。
「どうだよ、これでわかったな」
「よく言うな、手前は」
クロケットはその勝ち誇ったようになるシーンを睨んで言った。
「そんな奴の証言があてになるものか」
「そう言うんなら手前もだろ」
「何っ、俺の証人にけちつけるのか」
「証文だってそうだろうが。手前が勝手に作ったんじゃないのか」
「それはそっちもだろうがよ」
二人は言い争いをさらに激しくさせた。そしてだった。
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