| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

異世界系暗殺者

作者:沙羅双樹
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

好奇心の時間(2016/03/22 一部修正)




【視点:樹】



拉致監禁という一騒動はあったものの、最終的には無事(?)観光を終えた俺達は、宿泊している旅館へと戻り、現在は一息ついている。

戻ってきた直後は、俺が神崎を姫抱っこした状態で京の空を飛び回っていたことについて、クラスメイトから質問攻めにあって大変だったが、今はそれも沈静している。

旅館にある檜風呂を堪能した俺は、脱衣所に備え付けられている自販型冷蔵庫からコーヒー牛乳を購入。それを飲みながら、館内を気ままに歩いていた。すると―――


「うおお、凄ぇ!どうやって避けてるのか、全く分からん!!」
「恥ずかしいな、なんだか」
「お淑やかな微笑みを浮かべながら、手つきはプロだ!!」


館内のゲームコーナーで、シューティングゲームをしている神崎と、それを見ながら騒いでいる友人を発見した。近くには渚と茅野、奥田さんもいる。

あっ!念の為説明しておくけど、神崎以外に前まで敬称付きだった茅野が呼び捨てになってるのは、これは本人の了承を得たからだ。

E組4班全員で旅館に向かってる時、男子には殆ど呼び捨てにされてるから神崎を呼び捨てにするなら、自分も呼び捨てにしてく欲しいって言われたんだ。その方が茅野的には気楽らしい。

っと、少し話が逸れたな。兎に角、カルマを除く4班のメンバーを見つけた俺は、悪戯心から気配を消して神崎の後ろに近付き、モニターを覗き込みながら口を開いた。


「これ、ツイ●ビーか?神崎の持ちキャラはウイ●ビーか。俺もこのゲーム得意なんだわ。ちなみに持ちキャラはツ●ンビー」
「えっ!?」
「うわっ、イッキ君!?いつの間に!!?」
「ってか、イッキ!神崎さんに近付き過ぎだ!!」
「何そんなに興奮してんだよ、友人。発情期か?」
「発―――!?んな訳あるか!!」


俺が声を掛けると、神崎さんを始め渚達が驚きの声を上げ、ついでに友人をからかうと、友人は顔をリンゴの様に赤くさせながら反応してくれた。ホント、こいつらと居たら退屈とは無縁になるわ。


「って、神崎。ウイ●ビーが爆散しちまってるぞ」
「え?あっ!」
「悪い。俺が後ろからいきなり声掛けたりしたからだな。詫びと言っては何だけど、これから俺とチームプレイしねぇ?さっきも言ったけど、俺ツイ●ビー得意なんだよ。
無論、金は俺が出す。神崎とならノーダメージで全面クリアとかも余裕でできる気がすんだよな」
「……うん!それじゃあ、一緒にやろうか。イッキ君」
「そうこなくっちゃ」


それからは俺と神崎ペアによるツ●ンビー無双が始まった。観客である渚達は驚きで大口を開け、いつの間にか他の班の奴らもギャラリーとして集まっていた。


「それにしても、意外ですね」
「ん?何が?奥田さん」


絶賛ラスボス戦中に奥田さんが声を掛けてきた。ちなみに俺は奥田さんの質問に返答しているが、視線はモニターに釘付けだ。


「南君と神崎さんがゲームをこんなに得意としていることです」
「そうか?俺、こう見えても生粋のゲーマーなんだぜ。ネトゲとか、PC4機起動させて、両手両足使って4キャラ操作する位のゲーム廃人だから」
「そうそう。イッキの家、ゲーム部屋がある上ハード機1機に対してテレビ1台完備されてるしな。あれでゲーマーじゃないとか言われても、説得力ねぇよな」


俺が自分でゲーマーであることを認めると、ギャラリーの1人でお宅訪問メンバーであった陽斗が俺の発言を肯定してきた。


「それにゲーマーだからって蔑まれる謂れはねぇと思うし。ほら、クイズゲームとか雑学も多いけど、色んな分野の知識が無いと答えられねぇだろ?
それに最近は脳トレとかもあるし、ゲームのことを馬鹿にしてる奴の方が、頭の固い馬鹿っだったりするんだよな。俺から言わせて貰えば、もっと柔軟な発想をしろって感じ?」


俺がそう言い終えると同時に、ゲーム画面ではラスボスが爆散した。全面クリアまでに掛かった時間は1時間足らず。まぁまぁだな。

ツイ●ビーをクリアしたことで満足した俺は、俺と神崎のゲームプレイに感化されたギャラリーに席を譲り、風呂上りから行っていた館内散策を再開することにした。そして、散策再開から数分後―――


「イッキ君」
「神崎?」
「館内を散策してるの?私も一緒していい?」
「別にいいけど、面白いことなんて無いと思うぞ?」
「それでもいいから」
「……なら、一緒に散策するか」
「うん」


こうして俺は神崎と一緒に旅館内を散策することとなった。と言っても、本当に面白いものが無い訳なんだが。しかも、俺達の間に会話が無いから、気まずい空気になってる気がする。俺がそんなことを考えていると、神崎が口を開いた。


「イッキ君、ありがとう」
「へ?な、何が?」
「私、周りの目を気にして、服も趣味も肩書も流されて身に付けて、自分に自信を持てなかった」
「………」
「けど、今日あの廃屋とゲームコーナーでのイッキ君の言葉を聞いて気付いたの。大切なのは、自分の価値を自分で決めること。本来の自分が前を向いて進んで行くことだって。だから、そのことに気付かせてくれてありがとう」
「……俺は自分の言いたいことや考えを勝手に口にしていただけだ」
「それでも私はお礼を言いたいの」
「……なら受け取っとくわ」
「うん」


神崎とのこの遣り取りの後、散策を続けていると男湯の暖簾の前でコソコソしている一行を発見した。


「何やってんだ、あいつら?」
「さぁ?何だろう?」
「……まぁ、どうせアホな事だろうし放って置くか。俺そろそろ大部屋に戻るけど、神崎はどうすんの?」
「それじゃあ、私も戻ろうかな」
「そうか。あっ、その前にこっちの大部屋前まで付き合って貰ってもいいか?」
「――?うん」


男湯前でコソコソしている一行を放って置いて男子の大部屋へと神崎と一緒に向かった俺は、部屋の前で神崎に待って貰い、大部屋からある物を持って、神崎の所に戻った。


「これ、良かったら他の女子と食べてくれ。今回の暗殺旅行失敗の残念会用に買っておいた和菓子だ」
「……いいの?」
「元々、成功の打ち上げか失敗の残念会用に男女両方分買っておいたんだ。遠慮されたら逆に困る」
「なら、ありがたく貰うね」
「おう」


こうして神崎と別れた俺は、大部屋で持って来ていた携帯用ゲームPFPを起動させ、男子全員が戻って来るまでモン狩り4Gに精を出した。


「イッキ。さっきからゲームばっかしてるけど、お前はどうなんだよ?」
「は?」


レイアを狩り終えた直後、いきなり陽斗が話を振って来た。何の話だ?


「だから、クラスの気になる女子ランキングだよ。やっぱ、姫抱っこしてた神崎さんか?」
「気になる女子、ねぇ。まぁ、俺はゲーマーだし一番相性がいいのは神崎かもな。女子の中では一番自然に接してくれてる気がするし」
「い、イッキが相手だからって、俺負けねぇからな」
「いきなり何だ、友人?何に対する宣誓だ?」
「うわっ、こいつ本気で分かってない!!?」


だから、一体何だ?暗殺勝負か?取り敢えず、勝負事である以上その内容が何であれ負ける気はねぇぞ。



【視点:有希子】



イッキ君から貰った和菓子、あっという間に無くなっちゃった。特に茅野さんの食べっぷりが凄かったなぁ。皆で和菓子を食べた後は、旅行では定番のガールズトークが始まりました。内容は気になる男子です。


「え?好きな男子?」
「そうよ。こういう時はそういう話で盛り上がるものでしょう?」
「はいはーい。私は烏間先生とイッキ君」


片岡さんが内容の確認をすると中村さんが頷いて、倉橋さんが照れることなく堂々と答えた。


「はいはい。烏間先生に関してはクラスの殆どの女子がそうでしょ。クラスの男子なら誰かって話。取り敢えず、うちのクラスでマシな男子っていえば、磯貝と前原、イッキくらいか。で、まずイッキに1票ね」
「えー、そうかな?」
「いや、どう考えてもそうでしょ。まぁ、前原は誑しだから残念として、クラス委員の磯貝とリアル億万長者のイッキは優良物件じゃない?」
「顔だけならカルマ君もいいと思うよ」
「素行さえ良ければね」
「「「「「「「「「「そうだね……」」」」」」」」」」


……赤羽君、酷い言われ様です。ああ見えて、攫われた私や茅野さんを助けようと探してくれていたから、いい人だと思うんだけど。


「う~ん。でも、意外と怖くないですよ」
「普段は大人しいし」
「気まぐれな猫か何か?」


……確かに、言われてみれば速水さんの表現は的を射ている気がする。赤羽君は猫っぽいかもしれない。イッキ君は動物に例えるとどうだろう?鳥類な気はするんだけど……。私がそんなことを考えていると、隣に座っている茅野さんが話を振って来た。


「神崎さんはやっぱりイッキ君?」
「茅野っち、それは聞くまでも無いでしょ。姫抱っこされて京都を2人で飛び回ってたんだから」
「いいよね。私も一度でいいから姫抱っこされて空を飛んでみたい」
「星空の下とかだったら、幻想的でより一層ロマンチックだよね」


……星空の下、イッキ君にお姫様抱っこされて空を飛ぶ。………考えただけで顔が熱くなってきました。


「……今、神崎さんが何考えてるか、私手に取る様に分かるよ」
「いや、茅野っち。この場の人間で分からない奴は居ないと思うよ」
「有希子ちゃんも意外とロマンチストなんだね」


えっ!?私、そんなに分かり易いくらいに顔に出てましたか!!?どうしよう……。このままじゃ、皆のノリから考えて今日中に告白イベントとかさせられる可能性が……。どうにかして話題を変えないと。

私がそんなことを考えていると、大部屋の襖が急に開いた。現れたのはビッチ先生です。


「ガキ共、一応就寝時間だから伝えに来たわよ」
「一応って……」
「あんたら位の歳なら、注意した所で夜通しお喋りするんでしょ?」
「そりゃ、そうだけど……」
「っていうか、ビッチ先生ビール飲むの?ズル~い」
「はぁ?私は大人なんだから当然でしょ」


良かった。ビッチ先生のお蔭で話が逸れた。そして、この後私達はビッチ先生の人生談を聞かせて貰って、最終的には盗み聞きしていた殺センセーを暗殺する、いつも通りの流れで1日の幕を閉じました。


 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧